表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラークスの旅  作者: サーモン丼
第一章
11/12

作戦会議

「どうだった?ラークス」


俺がノランのいる屋根に登った瞬間、ノランが前を見ながらそう言った。

周囲を警戒しているのが良く分かる。


「うん。ノランも予想してたと思うけど、貧困地区に入って行ったよ」


「やっぱりそうだったか」


男がこんな時間に出掛けるのは不審だ。

ノランもそう疑っていたのだろう。


「じゃああの男は黒ってことでいいんだよな?」


「そうだね。でもまだ1日目だから、明日からもしっかり監視しておこう」


普通に考えれば、この場所に住んでいる人間が貧困地区に行くことは有り得ない話だが、今日は本当の本当に偶然だったという可能性もあるし。


「そうだな。ちなみに何処の建物に入って行ったかは分かったのか?」


「いやそれは分からなかったよ。危険すぎるかなって、貧困地区に入るのは一応辞めておいたんだよ。

そっちは何かあった?」


「こっちは何もなかったな。 静かなままだ」


今日1日、この家へ出入りした人間は例の男、妻らしき女、娘2人の計4人。

家族構成はルイ・カルビンの情報でほぼ確定でいいな。


「分かったよ。じゃあ帰ろっか」


今日はこれでもう十分だろう。

男が組織の人間だと、かなり濃厚になったらかな。

それに今日は、1日中神経をすり減らしていたから、いつも以上に疲れと眠気が強い気がする。

さっさと帰って寝たい。


「ああ。今日は良く眠れそうだな」 


どうやらノランもいつも以上に疲れているらしい。

そして俺達は直ぐに屋根から降り、他愛もない会話をしながら自分の家へ帰るのだった。


2日目 (火曜日)


この日は1日目と夜だけが異なる結果になった。

男は1日目と同じ様に朝仕事をしに出掛け、残りの3人も昼頃に昼食と買い物を済ませるために出掛けた。

そして18時ごろには全員が帰宅し、男がまた夜中に外出すると思っていたが、1日目とは違い男は何もしなかった。

またこの4人以外に家への出入りは無かった。


3日目 (水曜日)


この日は2日目と全く同じで、男に怪しい動きはなかった。


4日目 (木曜日)


この日は1日目と同じ結果になった。

男は22時頃、貧困地区に足を運んだ。

この日も貧困地区には入らず、途中で追跡は辞めたが、これで黒だと確信できた。


5日目 (金曜日)


この日も男は貧困地区に入り、1、4日目と同じ結果になった。


6、7日目(土曜、日曜)


休日のため、男は職場には行かなかったが、特にこれといった怪しい動きはなかった。

家への出入りも4人だけだった。



そして1週間の監視を終えた次の日の朝、俺達は監視の結果を報告するために、エデンの家を訪ねていた。


「それで1週間監視した結果を伝えるけど、黒だよ。確実にね」


俺は1週間、男とその家族の行動を観察して、家族構成及び、男の特徴がルイ・カルビンの情報と一致していたこと、男が貧困地区へ足を運んだことから、ノランとそう結論を出した。

ちなみに男の特徴とかの情報が全て一致していたことから、男がボスの側近だという情報も、正しいと見ていいだろう。


「ふぅーん、っていうことは、その男はやっぱり組織の奴らだったってこと?」


「うん、そういうことになるね」


この家に初めて来た時と同じ位置、反対側に座っているエデンの問いかけ俺は頷く。


「じゃあ私たちはこれからどうすればいいの?そいつを殴り倒せばいいわけ?」


随分と物騒なことを言うな。

男が黒だった場合のその後については、1週間前に話したんだけど。

もう忘れてしまったのか?

もしそうだとしたら流石に記憶力が心配だ。

まあそもそも聞いていなかったという線もあるけど。


「違うよエデン。先週言ったでしょ?黒だったら脅して情報を教えてもらうってさ」


「あぁーー。確かにそんなこと言ってたような・・あ、勿論覚えてたからね!」


やっぱり忘れてたか。


「はぁー、まあでも俺達が持っている脅す材料が、男に有効かどうかは前にも言ったけどほぼ運だから、過度な期待はしないでおいてね」


「そうだな、もし駄目だったらショックが大きいもんな」


でも家族に組織の人間だとバラす方の問題については、監視である程度解消したんだけどな。

1つ目の問題だった、組織の人間だと家族にすでに話してしまっているという点。これは男が家の中の灯りが全て消えて、少し経ってから夜出掛けていたこと、そして玄関のドアを開ける際、朝の時とは異なり、そっと開け、そっと閉めたことから、恐らく大丈夫だろうとなったからなのだ。

あんな遅くに出掛けたのは、妻と娘に何をしているかバレたくないから。ドアをそっと開け閉めしたのは寝ている妻と娘が目覚めないようにするためだったのだろう。

まあ男が家族を愛しているかは最後まで分からなかったけど。


「ふぅーん。まあ次にやることは何となく分かったけど、それで今から家に突撃するの?教えろって」


「そんな危ない橋は渡らないよ。男と接触したことは、他の人間にはできるだけバレたくないからね」


もしも噂が広まりでもしたら最悪だ。

組織の耳に入るかもしれないからな。


「えぇ、バレないように?じゃあどうするの?そんなことなかなか難しい気がするけど」


「そうだね、でもあったんだよ。相手が自ら、そういう人目がない環境に入ってくれる時がさ」


監視をしていたことで見つけることができた、最高の接触場所が。

まあ元々、接触するために役立ちそうな場所は探してたんだけど。


「マジで?その話し方的に監視してる時だろ?そんな時あったかぁ?」


「うん。まあノランが気づかないのも無理はないよ。

だってそれは、男が夜貧困地区へ行く時だからね」


男は貧困地区へ行くとき、誰にも見られたくなかったのか、わざわざ人気の少ない道、裏路地などの狭い道を選んで通っていたが、夜も相まってか、そういった道では、男以外の人間を誰一人も見なかったのだ。

絶好の接触場所だと俺は瞬時に思ったね。


「貧困地区に行く時か・・なるほど、確かに俺じゃ気づけないな」


「俺もまさか人気の少ない道をわざわざ通るとは思わなかったよ。あんな遅い時間なのにね」


「ああ誰にも見られたくなかったんだろうな、相当」


ノランは笑いながら言う。


「ちなみに、前にノランが俺に聞いた、組織と騎士団が裏で繋がっているみたいなことは、一応今回確かめるつもりだから、協力してね」


「あぁーそう言えば、そんなこと言ったなぁ。でもどうやってやるんだ?」


「それは後で説明するよ。取り敢えず今はいつ接触するかだけど・・明々後日の木曜日でいいかな?」


男が貧困地区へ行った曜日は、月、木、金。

状況が変わるのは嫌だから、できるだけ早く接触したいけど、今日はゆっくりしたい。

1週間ずっと監視していたから、流石に疲れがまだある。


「ああ俺はそれでいいぜ」


「エデンはいいかな?」


「うん、私も別にそれでいいけど」


よし、2人の許可は取れた。

正直エデンが今日やりたいとか言って、駄々をこねると思っていたから、大人しくてありがたい。


「ちなみに俺達もそうだけど、明々後日は依頼禁止だからね」


「え!?何で!?」


エデンは椅子から立ち上がり、手をテーブルにバンっと置いた。

これには反対らしい。

もの凄く。

ま、金がかかっているからだろう。


「もしもの時のために体力を温存しておいてほしいからね」


だが明々後日、相手とは戦うつもりは一切ないとはいえ、接触するのは組織の幹部だ。

危険すぎる相手だ。

何が起こるか分からい。

だから体力は温存しておいてほしい。

ちなみにわざわざ不安要素を連れて行く理由もこれだ。


「えぇぇぇぇぇ。

でもちょっとだけならいいでしょ?」


「ダメだよ。一切禁止」


「ほんのちょっと」


「ダメ」


「ほんのすこ~~しだけ」


「ダメ」


俺は首を横に振る。

何度言われても結果は同じだよ。


「・・・」


するとエデンは余程ショックだったのか、下を向き、黙ってしまう。

まあ残念だったな。

ドンマイ。

金はいつでも稼げるさ。

俺は心の中でそうエデンに憐れみの言葉を送る。

しかし


「じゃあっ!その日の夜ご飯奢って!!」


「・・は?」


次にエデンの口からでてきた言葉に、俺は思わず口をポカーンと開いてしまった。

流石にケチすぎないか。

どんだけ金ないんだよ。


「何は?って。依頼を受けちゃダメってことは、お金稼げないじゃん。

じゃあ代わりにご飯奢ってよ。餓死しちゃうから」


「いや言ってることは分かるけどね。でもお金を稼げないのは俺達も一緒だからさ・・」


「だからさ?何?私が餓死していいってこと?」


1食抜いたぐらいで餓死するか。

と言える状況じゃないな。

圧力が凄い。

はあー仕方ない。


「わ、分かったよ。奢る、奢るから。約束はちゃんと守ってよ」


1食くらい奢るくらいならまあ特に問題はないだろ。


「え?ほんとに!?ありがとぉ~」


何が「え?ほんとに!?」だ。

白々しい。


「でも店はこっちで決めるからね。そこは譲れないよ」


人の金だから高級店に行こう。

こいつならそう考えていてもおかしくない。

そういうせこい所には、頭が回りそうだから。今までの発言から。


「ちぇっ!いい店行こうと思ってたのに」


「はあぁ~。じゃあ話はこれで終わりにしよう。

明々後日は夕飯前、だから19時くらいにこの家に集合でいいかな?」


「ああ」


「はーい」


「よし。エデン、本当に明々後日は大人しくしていてよ」


念のため釘を差しておく。


「はいはーい」


まったく、適当な返事だな。

ホントに分かってんのか?

滅茶苦茶心配だ。

俺はそんなことを思いながら、さらに詳細な作戦について話し合うのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ