表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/69

008 犬のことを悪く言う外道を痛めつけろ

 たとえ前世の記憶があっても、【純粋無垢で謙虚】と執筆補助AIが認定するような性格であれば、マーサ孤児院の教育を受けいれた。


「住めば都」

「人生いたるところに青山せいざんあり」

「郷に入っては郷に従え」

「ローマではローマ人のなすようにになせ」 

 執筆補助AIが【前世から純粋無垢で謙虚な性格】と設定しているカオリは、【目の前の他人の本気で面白がっているということ】はできるだけ理解するようにつとめていた。

 そして、カオリの転生した肉体には、もしも将来に格闘ゲームになった時のために、魔法の飛び道具なしの通常技だけでも強キャラもなれる素質が秘められていた。

 マーサの孤児院の武闘派教育に、カオリ・ゲッカーは周囲が驚くほど短期間に適応できた。


 拒絶反応を示したのは、前世で最先端の教育を受けたから知識チートができるはずと思っていた進歩主義者たちである。


「ヨシ、今日は無防備都市宣言するぞ」

「御恩と奉公なんて考えが古い。人権はロハという天賦人権説が世界の最先端の人権理論のはず」

「世界人権宣言の制作過程で『社会から孤立した者に人権を認めるものでない』と確認されているとか、そんなことは知らない」

「話が細か過ぎる奴はミュートする」


 そういうことを口走る連中とカオリはそりがあわなかった。

 いくら話を合わせてやろうと思っても、向こうの言うことは十分おきぐらいに、百八十度異なるのだ。

 コミュニケーションは不能。

 

   *  *


 北のア・バシリーの地の孤児院における生活に、カオリも随分と慣れた頃だった。

 一人の転生者の女の子の新入りが騒ぎ立てた。

 演説。


「暴力反対。犬をほめるばかりで、犬ず嫌いな人への暴力を許すこの孤児院の教育はおかしい」


 黙って聞いているとまずい内容。

 自分が同意したと思われたら困る。

 面倒だが、カオリは注意した。


「犬の悪口は駄目よ。犬はとても大切なのよ?」

「うるさい!」


 その女の子は、自分で「暴力反対」と言ったばかりなのに、いきなり右足てカオリのことを蹴ってきた。

 カオリは別に驚かない。

 自分の言ったこととまるで逆のことを次の瞬間にやる種類のひとだと、カオリは見切っていた。

 見え見えの右の前蹴りをカオリは左の前手の外受けで落とし。あわせて左膝vザを横にあげて、相手の死角からの中断廻し蹴りで、相手のレバーを後ろから叩いた。

 膝を横にあげる回し蹴りはタックル対策がないと言うるひともいるが、使い方次第で十分に有効。

 左節を地面におろす勢いをつなげて、右足を軽くあげるだけの予備動作の少ないショートの前蹴りを腹部にあてる。

 見えな打撃が次から次にあてられる状況に新入りの女の子はパニック状態におちいった。

 パニック状態になるのは勝手だが、その間にカオリは蹴った右足を左前方向におろし、相手の右サイドをとった。

 ここでカオリは後から反省することになのだが右アッパー。

 相手が前に動いたのでクリーンヒットせず。

 カオリはあわてて、逃げようとする相手の首に左手をひっかけた。

 右の送る膝で下腹部を叩き、反射的にしゃがむ相手の顎に右の飛び膝蹴りをフォローした。

 右の飛び膝で煽って相手のガードを上にあげて着地と同時に繰り出す左レバーブローが本命のコンビネーションだったが、鈍感力の高い新入りは反応が遅かった。

 カオリの右の飛び火座が子そのまま相手のノーガードの顎にねじこまれた。

 ノックアウト。


 犬ギライの邪悪を制裁したという善行に対して9612(クロイヌ)企画の設定した世界は喜び、何もない空間から、子どもが好きそうな、ジュースや菓子パンが大量に出現した。

 奇跡。

 カオリは呆然と立ち尽くした。

「この世界の神さまは『犬のことを悪く言う外道を痛めつけろ』と奨励なさっておられる・・・」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ