068 近所にずいぶんそっくりな顔のひとがいたのかもしれない
ヨーキャンの側の動きは鈍かった。
彼が「僕はついているから」と明るく言うのは、下の者を安心つせるためではなく、本気で信じていたのだ。
教えてもらった教科書どおりの手を打って終わり。
それで通用してきたのだ。
本人からすれば、全てが繰り返しのよう感じて退屈で行き詰まっていたのかもしれない。
そのためか、解放区への冒険を企画してしまった。
失敗した場合はどうするか?
そんなことを考えるのは陰キャだ。
陽キャはいつでも明るく楽しく失敗してはいけない。
思い込み?
ヨーキャンも自分は陽キャでなければならないというカタチに縛られているのだ。
危険な時にヨーキャンのことを補佐する役割のサクネルが自分自身の安全を優先してヨーキャンのことを切り捨てる方針を固めていたというのだから、どうしようもない。
複数の補佐役を用意していればよかったのか?
ヨーキャンの若さでは難しかっただろう。
「ヨーヨーヨー、僕はイケテルイケイル人気者」
生まれたときについている。
まわりに人が集まる。
幸運を演出してくれる。
そういうこともあるだろう。
階級社会を支持するという意見もある程度はわかる。
しかし、そうしなければならないという強迫観念があるのは気の毒としか言いようがない。
まわりの期待な応えるというのが、まわりの声に従っているだけ。
結果的に何か悪いことが起きたからといって、自分の責任にされてしまうという話はヨーキャンには納得のいかないことだった。
「解放区に行ったのは君自身の選択だろう? 何故、ヨーキャンのせいだと言うのだ? 僕が誘った? 男女平等。危険な場所に行くのだから、自分のことを優先するのは当たり前田のクラッカー」
ヨーキャンにとって正しさを証明するのは結果であり、負けてボコられる者は常に正しくない。
そんな考え方をするのであれば、自分が負ける危険のある解放区にヨーキャンき足をふみこむべきではなかった。
また、格下ばかりを連れていけば、負けても【なかったこと】にしてしまえば話は簡単に終わったはずだ
しかし、ヨーキャンは安全策を取らず、ディアナ・ツースリーを誘ってしまったのである。
どんな時も失敗を恐れない陽キャの自分というものを演出したかった。
実際には失敗するから、ヨーキャンにとってわけのわからないことになっている。
* *
妄想なのか?
魔法ありの世界だから何らかの魔法なのか?
ヨーキャンの頭の中にディアナのイメージが現れる。
━━よくも解放区であたしのことを置き去りにしてくれたな。お前、ムカつきまくり。ぬっ殺したるでぇ、ゴルァ」
ヨーキャンは言う。
「 焼肉屋で元気よくウンチして嫌にことは忘れよう。それが新しい立憲主義だ。嫌なことはみんな忘れてバックレ上等さ」
ディアナのイメージは何か考え込む。
━━個人的に『鉄は男を研磨する、バックレ上等』のフレーズって、男女差別かなって思う。
反射的にヨーキャンは言う。
「みんな、差別に反対する時は〇〇シュッシュッって言うね」
ディアナのイメージは少しあきれたような表情。
━━変なクスリでも決めてんのか、お前? ちなみにクスリと言えばね、誰かさんは若い頃によくクスリのバイニンと思われて『売ってくれ』と頼まれたそうだが、近所にずいぶんそっくりな顔の奴が住んでいるらしいと驚いたそうな。




