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063 その聖犬使は後から感想戦をやりたがる

 レイとヒーナックが解放区の組織に話をつけ、金を払ってルーのことを探してくれたとのこと。

 ルーのことを捕まえた組織には女の換金手段が乏しいということもあり、値段交渉で買いたたかれて、ルーの身柄は別の組織に移った。

 そして、金主のヒーナックがよくいる【05の居場所】に運ばれた。

 捜索用に半金はすでに受け取っているらしい。

 平民の家の出のルーからすれば目をむくような額であるが、ゲッカー公爵家の跡取りであるヒーナックにとっては小遣い銭だったらしい。

 あまりにも取りすぎるのも金銭感覚が狂うからということで、ルーを探しに解放区にまで来て捕まったディアナもサービスで即時解放したとのこと。

 ルーを探すため王立学園の上級生たちが動いたという話は驚きである。

 いまの僻んだルーからすれば、ちょつとしたツアーのつもりだったのでは、とうたがってしまう。

 何はともあれ、ディアナ・ツースリーは無事に解放された。

 ディアナのことを置き去りにして逃げたヨーキャンらが河原で踊ったダンスが相当にキモチ悪かったらしい。


 ━━ああいう×××と縁を持つと頭が悪くなる。


 そのように思わせる効果があった。

 換金用にディアナはおいておかれて結果的に無傷で解放された。

 自分を探しにきたひとが不幸にならなくてよかったとはルーも思う(ヨーキャンとディアナの抗争を予想していない)。

 そして【05の居場所】に顔を出したのは、マトリ・タカハ。

 マトリ先輩。

 解放区で 聖犬使として一足飛びに爵位を手に入れた女。

 平民出身の女生徒からすれば、「そんなこともあるんだ・・・」という希望であった。

 マトリはつべこべ言わず、ルーのことを王立学園の女子寮に届けるための馬車を手配してくれた。

 学校側への説明のため、マトリはルーにつきそってくれるという。


   *  *


 本来は大して関わり合いたくないだろう。

 馬車の中で、マトリは不快溜め息を漏らした。


「チョイト面倒なことになりそうな気がする」


 ルーは恐縮した。


「すみません」


 いいよ、とマトリは言う。


「あたしが自分で首をつっこんだんだし、責任は自分持ちに決まっている」

「マトリ先輩にもご迷惑をおかけしました」


 ルーの気弱な言葉に、マトリは笑った。


「面倒なことになりそうなとき、それが後から自分も意見が求められそうなときには、できるだけ自分の眼で見ておきたい。」

 損な性分かね・・・?

 何かヤバイ予感がするときには、できるだけ自分も近くで見ておかないと、後からでは、何もわからなくなることも多い。

 コワイから嫌なんだよね、そういうの、こちとら臆病者だからさ。どうも、うまく言えないけど、何となく、わかってくれやし」


 意味はよくルーにわからない。


「臆病?」

「臆病なことは別に悪くないって思うよ。それで生命が助かったという経験をすればね。

 必要を感じた時にパンと前に出れればそれで十分。臆病っていうのは生きるためのセンスでしょ?」

「はあ・・・」

「相手のことを臆病とか言って相手をけなしたつもりになっているのは、これまで甘ったるい人生を送ってきましたという自己紹介」


 おそろしく暗い目をマトリは見せた。

 ルーかすれば、想像もできない、


「そういうものですか?」


 マトリは続けた。


「臆病でいいいよ。

 色々なものを見てひとりで考える。

 自分がどういう状況に置かれているか、わからなければ動けない。もちろん、自分がどの程度の者か、わかっていないと動きようがない」


 どういう状況に置かれているのか知るために、ルーは、身体を張るしかないと思ったが、今回は裏目に出た。

 マトリは言う。


「幸運を信じたらダメだって思う。百の準備をして一つあたれば上等。

 失敗した時もその失敗が別の手につながるように自分の手持ちのカードの出し方の工夫をしなければいけない。ヒマなときは自分の手持ちのカードを確認して、いつでも切れ目なく出せるようにしておく」

「・・・そうですか?」

「どんなことでも勝ち残るためには万策を練るのは相手への礼儀? もちろん、そういう礼を尽くす必要のないような相手も結構いる。

 でも、ぎりぎりまでつきあってくれる相手もどこかにいるって信じたい。そういう相手に出会うことを願って策を練っておく。

 無駄に終わるかもしれないとか思いつつ、さ、何か伝わる誰かがいると信じて、思いっきり無理して、しつこく自分の策を練り続けるということが生きるってことじゃない?

 まあ、そうでもなければ、ただ、生きているだけでは、道端な落ちている土や砂や石ころと大して変わらないような気がする」


 ルーは少し驚いた。


「そんなことをグチャグチャ考えて生きているんですか?」

 

 変わっているのよ、あたしは、と【高速戦闘】の異名を持つ聖犬使、マトリは溜め息をついた。


「結果はすべて運次第よ。

 でも、後から『こうすればよかった』『ああすればよかった』とか言うのはキライなんだ。

 前もって『そうすればどうなるか』ということを考えておく。

 一回でキレイに成功したように見えても、その前に頭の中では沢山に失敗している。

 ボロボロになりながら何度もしつこく立ちあがっている。

 見た目の結果よりもそこに至るまでの過程の中に、もつと大切なものがあるはずだって思う。

 試験で満点をとることよりも、教科書とか無視して、問題文の条件別に自分にとって効率的な解法を検討して整理して保存することの方が大切。

 感想戦だよ。

 それで、満点を取るようになったからといって、『地頭がいい』『センスがある』とか言うのは、何か、こちとらと考え方が思いっきりズレている」



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