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060 そういう意地の張り方をするというのは嫌いじゃない

 ルー・ザ・ナド―が【05の居場所】に届けられた。

 連れてきたのは例の弓使いの男。


「回収してきたぜ」


 幸いにも、その場にも女手はいた。

 ウヅキはルーなぐさめにまわる。

 女として相当にひどい目にあわされたのだろう。


 モカさんは弓使いの男を誘った。


「よく見つけてくれた。ありがとう。おごるよ」


   *  *


 解放区の【05の居場所】は本来に居酒屋である。

 ステージでは、足音とギターだけのコリ・アシオトネの弾き語り。

 聞いていると「そういうのもアリか」と思ってしまう。

 横から違うと吠えるには自分の演奏で示すしかない。

 馬鹿げている。

 そういう馬鹿げた生き方しかモカさんはできなかった。


(まあ、いいや。他の利口な生き方は他の奴らが選ぶだろ。俺は俺の生き方を選んでいる。それで、いいよ)


 負け惜しみ半分。

 何が勝ちか負けかわからない世の中はではあるけれども、「負けかな」とモカさんは思っている。

 ただ、負ける資格さえもない空っぽな連中を多く見てきた。

 自分と呼べるものが何もなければ負けもしないが勝ちもしない。

 だから、「負けて上等」というセリフを口にする。


「おごるよ。好きなの飲んでくれ」


 実際にルーを回収してのけた弓使いの男。

 カネだけもらって何もしないで逃げるという選択もあったはずだ。


(意地だな・・・)


 そういう意地を張ることをイキっていると否定する【あちら側】も多い。

 しかし、モカさんは肯定する。

 もちろん、意地を張ることを否定する【あちら側】に対してはモカさんも意地を張ってやらない。

 クズの言うように、普通が一番?

 普通にできないようなことは、「俺ならば・・・」というところを見せず「できません」とモカさんは答える。

 モカさんが考える普通レベルもしないで終わらせる連中は多い。

 その結果として、モカさんは良心的と扱われる。

 だから、モカさんも弓使いの男のことを評価した。

 キモチにはキモチで応える。

 くだらない理屈なんていらない。

 余計な意地を張るヤツのことをモカさんは好きだった。


 弓使いの男は言う。


「おんなの子が手を出される前に見つけたかったのだが」


 よせやい、とモカさんは苦笑する。


「見つけてくれただけでも十分サ。もはや見つからないと思っていた」


 さすがにね、と弓使いの男は苦笑した。


「うちの組織だって面子がある。請け負って『何もできませんでした』と頭を下げるようなことはしたくない」

「そういうのが流行しているゼ」

「機会があれば、チョコチョコ掃除するサ」

「きれい好きかよ?」

「気分が悪くなるものはできるだけ少ない方がいい」

 

 理不尽かもしれないが、どうせ話をしても通じない。

 そんな気がする。

 割り切りというか、軽い絶望と言うか。

 話を変えてモカさんはたずねた。


「ところで、解放区で王立学園の生徒たちがマトにかけられているみたいだが何かあったのかい?」


 弓使いの男は言う。


「王立学園の生徒は、本来に解放区に行くことを校則で禁止されている。問題が起きてもなかったということにする」


 わからないぜ、とモカさんは言った。


「今のうちのギターは王立学園の学生だが、学校側から許可をとっている」

「王立学園も自身を持って許可を出しただろうサ」

「多分」


 声を立てて弓使いの男は笑った。


「それは【05の居場所】の面子だからな。半端なヤツじゃないだろう?」


 まあな、とモカさんは肩をすくめてみせた。


「うちのカンバンを背負うからには、それなりのバケモノだよ」


 弓使いの男は溜め息をつく。


「まったく区外の者やられたのではないというのなら、うちも少しは顔が立つよ。【05の居場所】の面子ともめたって話ならね」


 よせやい、とモカさんは言った。


「こっちは解放区で消えた女の子を探していた。カネを払ってそっちに探してもらった。それだけの話だ」


 そうしてもらった方がこっちもありがたいけど、と弓使いの男は首を傾げた。


「いいのかい? あのギター弾きが意外に強いという話、評判になるんじゃねーの? 客が呼べる」


 強くなくてもいいんだ、とモカさんはグラスを飲み干した。


「あいつはね、解放区にギターヒーローになりにきたんだ。自分のギターのテク以外のことで評判になりたくない」


 馬鹿かよ、と弓使いの男は笑った。


「また聞かせてもらうよ。

 実際に聞いてみて良く言うか悪く言うかどうかわからないけど、そういう意地の張り方をするというのは嫌いじゃない」

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