055 権威主義の社会に多い考え方をする
王立学園からヒーナックとルイは呼び出しを受けることになった。
事情聴取。
面倒をひろってしまった。
ヒーナック本人としては、悪いことをしたつもりはない、
防衛線を貼る
「ボクは許可を受けて解放区を歩いていたら、同じ王立学園の女生徒を見かけたんですよ。
話を聞いたら、解放区で行方不明になったルーさんを探しているということで、許可がないのに危ない解放区に来てはいけないって何度も言いましたよ。
さすがに、
解放区で女の子の一人歩きはよくないということで、一日だけならばボクがレイ・はツネテイク男爵令嬢を見てあげようといえ話になりました。
ええ、わかっていますよ、ホントはすぐに解放区の外に送らなければならなかったっていうことは。
その件につはましてはボクも反省しています。
ですが、レイ男爵令嬢の意思が固く、ちょっと解放区をまわってもらった方がいいと思いました、ボクの目の届く範囲で。それだったら、安心かなと思いまして」
先生は言う。
「解放区に行く女の子の護衛ねえ・・・」
ヒーナックは説明する。
「ルーさんのことを解放区でレイさんが一人で探すのは、あまりにも無理筋と納得してもらいたかったのです」
多少のツテがないと、素人がやるだけ時間の無駄という判断。
━━解放区に来たのだから、安全なところだけをまわって何かうまいものでも食べて、ほしいものをおみやげに買って帰るぐらいが建設的
ではないか?
レイの能力についてヒーナックはその程度であろうと評価していた。
まかりまちがっても一人で魔界都市でマンサーチャーになれるような種類の者ではない。
先生は言う。
「でも、レイ男爵令嬢は、そんな危険なところに一人で来るとは思わないけれど・・・」
バカが来やがったんだヨ、とまでは言わない。
ヒーナックは溜め息をついた。
「ボクもびっくりしましたよ。ボクだって護衛をつけるような、王立学園の生徒にとって、解放区が面倒な時期に、レイさんがろくに護衛をつけず解放区で一人歩きしていましたから」
レイは恐縮して頭をさげた。
「すみません。あたしも反省しています」
先生は言った。
「二度とやらないように。学校の許可がなければ校則違反です。王立学園の生徒にとって、解放区が面倒な時期って何かあったの?」
全てを正直に話す必要はない、
さあ、とヒーナックは肩をすくめた。
「本当に色々なことが起きる場所ですから、何があるのか、ちょっと、わかりません」
先生は眉をしかめた。
「そんなに危ない?」
自分が解放区を出入りする許可まで制限されてはたまらない。
ヒーナックは言葉を足した。
「時期によっては危ない、です。慣れている者にとっては、それほど大したことはないですよ」
大したことない、と先生は言ってから話を変えた。
「レイさんが解放区に行ったとき、あなたたちも襲われたとか?」
ぬけぬけとヒーナックは【よいこ】の顔で言った。
「ボクは【話し合いとわかりあい】で平和的に解決しました」
「え?」
現場に居合わせたレイは目を白黒させる。
相手の延髄を蹴飛ばすようなことは、レイの常識では、平和的ではなかった。
しかし、今のヒーナックの立場からすれば、解放区があまりにも危険すぎる場所というイメージを王立学園が持つのは歓迎できない。
「ちょっと話せばいいひとたちでしたよ。ディアナさんも無事に帰してくれたし、ルーさんの行方も探してくれていますし」
相手と協力関係ができているので、すでに終わったことについて騒いだところで何のメリットもない、とヒーナックは考える。
先生は言う。
「そのひとたちがいたから、ヨーキャンたちは逃げたという話だけど?」
「ボクは知りませんね」
「はあ」
「野蛮な話はボクは苦手です」
ヒーナックは言葉を選ぶ。
ライト家とツースリー家の争いに、ゲッカー家としては巻き込まれたくない。
おそらく、ヨーキャンたち一行がディアナを置いて逃げたという話が広まるだろう。
偶然のヒーナックの介入があって、いくつもの幸運が重なって、ディァナき無事だった。
ヨーキャンが逃げたという話が広まるのに 積極的に手を貸すような真似をするのは、ヒーナックにとってうまくない。
余計な恨みを買うだけだ。
ヨーキャンの計画性が低いと言うよりも、男たちに拉致られたディァナが無事に学校に戻ってくるようなことは想定外である。
━━なぜ?
偶然の上に、しつこいほど偶然が重なり、ディアナ・ツースリー侯爵令嬢がヨーキャンに恨みを持っ王立学園に戻ってきた。
校内においてはヨーキャンの下につくよりもディアナのグループにまわる者もいる。
解放区でヨーキャンと逃げた者の中にも裏切りの大空を決めるような者もいる。
ディアナが【被害者ポジション】をキープしながら【かわいさうランキング】をあげて騒ぎを大きくすれば、ライト侯爵の家庭内の情勢次第では、ヨーキャンが廃嫡される事態も考えられなくもない。
少し考えればわかるが、ディアナは相当に怒っている。
彼女が幸運にも無事にすんだことを思えば、何も事件らしい事件き起きなかったということにもできたはずだ。
ヨーキャンの逃走を騒ぎ立てることは、彼の人生をムチャクチャにしかねない。
復讐しようというつもりであろうが、度を越えているのではないかとも思われる。
原則として学校も禁止している解放区に足を運んだことはディアナ自体の意思もあったはず。
━━自己責任も何も他の者が自分のことを保護するべき。
ヒエラルキーとか口にいる権威主義義の社会に多い考え方。




