037 解放区で消えた少女の行方を捜せ
寮生のルー・サ・ナド―が戻らず。
王立学校では話題になっていた。
ルーが学校で禁止の解放区に足を運んでいることは知られている。
愛らしい容姿の目立つ生徒だ。
「何か事件に巻き込まれたのでは?」
「学校で禁止されているようなところに行くから」
みんなはひそひそ噂する。
ルーの友人であるレイからすれば心配だった。
ハツテイクt男爵家の娘であるレイは一応はエリア王国の貴族である。
そして、ルーは商人の娘。
学校で社会階級を超えた関係をまずけるか?
カタチ。
安定したカタチを維持することこそ民の心を安んじることは言うまでもない。
しかし、いざという時には従来のカタチを超えることができなければ全体の崩壊の危機につながる。
中間が一番にくだらないと言うのは、状況を考えないからであろう。
何するにせよしないにせよ理由の説明がない。
さして深い考えもなく、レイはルーと親しくなった。
見た目の良い小柄な少女のルーは時代のファッションや流行にもくわしく、そういうことに鈍い田舎からの男爵令嬢のレイにとってはありがたい存在だった。
一方でルーからしても、身分にこだわらずほ下の者とつきあうレイは扱いやすかっひとくみた。
個人で操作困難の状況が人間関係をつくりだすというのは、いつの時代においてもよくあること。
田舎の下級貴族の家の出であるレイは、都会の商人の娘のルーと二人一組といった感じに親しくなつた。
それゆえ、ルーが突然にいなくなればレイも心配になる。
* *
学校から特別の許可を得て解放区に通っているというヒーナック・ゲッカー公子。
通常ならば身分違いやもしれない。
にもかかわらず、レイはたずねてみる。
「ちょっといいですか? 解放区でレイがいなくなったっていう話ですけど、ヒーナックさまは何か聞いておられますか?」
「ああ、何心配ですね。話はボクも聞いていますが」
「学校は調査を頼まないみたいですね。解放区は調査しても無駄、とか」
解放区は異界とのつながりがあり、王立学校側が原則として生徒の出入りを禁止している。
やれやれ、とヒーナックは首をすくめた。
「生きて屍を拾う者なし」
「え? 」
「ごめん。危ないときには危ないからね。ボクも心配しているよ、それは」
解放区は危ない場所だという認識を学校側が強めれば、解放区を出入りする特別の許可をもらっているヒーナックの立場にも影響がある。
ヒーナックとしては、ちょっと深刻である。
「あのひと普段は解放区のどのあたりで遊んでいるのですか?」
「わかりません。あたしは解放区に行っていませんから」
「レイさんは、解放区には行ったことがないのですか?」
「はい、一度も」
と、レイ。
ヒーナックは考え込む。
「用事がなければ無理して行くようなことはないですが」
レイは言った。
「上級生の方々で行ってみようかというお話もあるみたいですが」
ほう、とヒーナックは驚く。
「慣れていないと二重遭難がこわいですよ。事故がにくても、学校は【解放区は危ないからやめておけ】と言っています」
あまり賛成しているというように見えない。
「解放区に慣れた人なら?」
やれやれ、とヒーナックは溜め息をつく。
「そうですね。ルーさんのことを知っていて、解放区の中を自由に動けるというのなら」
「心当たりがありますか?」
レイがたずねる。
ヒーナックは少し考えた。
「ああ、一人います。でも、ちょっと気むずかしい」
「気むずかしい? 」
ちょっとレイにはわからなかった。
難しい顔をしてヒーナックは溜め息をついた。
「どうやらボクが適任者でしょうね」
「適任者?」
「おそらくボクしかいないでしょう。ご心配なく、レイさん。ボクも解放区でつくった関係をフル活用してルーさんがどこに消えたかさぐってみます」
レイは驚いた。
「いいんですか?」
しょうがないですよ、とヒーナックは言った。
「このトラブルが大きくなると、ボクの解放区での音楽活動もやりにくくなってしまいます。それが嫌ならボクも何もしないというわけにはいきません」
「それは、まあそうですけど・・・」
と、レイ。
ヒーナックは絵にかいた田ような美少年で年下の可愛いキャラである。
その外観からすれば、とても荒事で頼りにできそうもなく見える。




