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021 犬好きと犬ギライとでは扱い方が違う

 ゲッカー公爵はマーサから連絡を受けた。

 このファンタジー世界においは魔法を使って電話に似た通信技術があった。

 音声の受信にはさして困難きなかった。

 しかし、送信は難しく専門の魔術師を要した。

 魔法も転生者も存在しているこのファンタジ―世界は、存在していない世界と異なった技術発展をしている。

 この世界の技術発展はデコボコのように思われる方がいるかも?

 では、少し信じられない話をしよう。

 インターネットの発展した世界では、パンのイースト菌が酒粕から一般家庭の主婦でもお手軽につくることができると知られている。

 しかし、義務教育もなされず移動の自由も制限されてい頃たは、そういった情報をパン職人たちは秘伝としてが独占していたという。

 よくぞ、当時のパン職人たちはイースト菌の準備の知識を何百年も守り通すことができたものである。

 ここで読者諸君に考えてもらいたいことは、だ。

 義務教育もなされず移動の自由も制限されていれば、実験と観察による追試が手軽に行えず、ある種の知識はなかなか広まりにくくなるということである。

 多くの者が義務教育の充実も移動の自由の木保障も【あって当然のもの】として受け止める。

 自分でそれらのありがたみを経験するどころかそれらが実現されるまでの歴史すら学ぼうとしない。

 それに、だ。

 たとえ、義務教育があっても移動の自由があったとしても、実験や観察による追試を重視する近代学的合理精神に至らない者はわんさ相当にる。

 専門家やAIがこう言いましたと言っておけば何でも信じる権威主義者たちにとっては、義務教育があっても移動の自由があっても猫に小判である。

 9612(クロイヌ)企画の設定には魔法も転生者のアリということなので、この世界の技術発展ずデコボコに見えても大抵に理屈を後づけできるはず。

 話に戻ろう。

 北の地のア・バシリ―から手紙をもらっゲッカー公爵は公爵という大貴族なものだから、それなりの魔術師を抱えており、ア・バシリ―の地の修道女マーサと電話に似た通信技術で連絡をとることができたのである。


   *  *


「何、カオリのヤツが聖犬使にもなれる可能性がある逸材だと? マーサ、それはまことか」


 ┅┅あの方は、格闘も魔術も優秀で、ゲッカー公爵家にお戻しになられた方が良いかと思います、


「むう・・・」


 ┅┅カオリお嬢様は前世で祖母が猫を飼っていたそうで、その猫めがご近所のお犬様たちと親しくしてもらっていたとか、そのお犬様の中で、エルサスさまという方がもこの世界に転生なさって祖おられ、カオリお嬢様にお会いに来ていらっしゃいます、


「いちちいち細かい理屈はいらない。この世界では【犬=正義】よ。それは決して動かせない」


 ┅┅確かに、「犬よりも猫」とカオリお嬢様が口にしたのは、お犬様への不敬ともとれます。しかし、実際にお犬様がお許しでカオリお嬢様と仲良くなさっているというのなら・・・


「本物のお犬様の判断が最優先になることは言うまでもあるまい。「犬よりも猫が好き」などと馬鹿なことを口にしても、カオリが言っても、あの子は別に邪悪な犬ギライではなかったのか・・・


 ┅┅うちの孤児院では、下劣なギライの子どもは淘汰されて寿命は短い。しかし、カオリお嬢様は元気に勝ち残ってすくすく育っておられます。とすれば、決してカオリお嬢様はぶち殺すべき犬ギライではありません、


「とにかく強いヤツが勝つ。牛肉だってオレンジだって自由化だ。カオリがそこまで優秀であるというのならば、あいつと親子の縁を切って家から追い出したのは早計だったな」


 ┅┅よひよひ 思います。

「カオリがお犬様のどなたかとフレンドリー同盟を結んで、パートナーの聖犬使ということになれば、この世界においてウハウハだ。そうなる前に、あいつのことをゲッカーの娘に戻しておいた方がよいな? 家から聖犬使がでれば、私の株もグンとあがることになる。いいなあ、それ」


 ┅┅匂いだけで相手の善意悪意を見抜くことのできる不思議なモフモフの理想動物。それがお犬様です。カオリお嬢様がお犬様と仲良くできるということは、お犬様くに対する善意が認め背れたということでしょう。


「ゲッカー公爵家が犬の輝きの威光に服していることろを世に示すには、カオリを家に戻さねばなるまい」


 ┅┅御意。


「カオリの奴を、私の娘として家に戻すことにしよう」


   *  *


 カオリぱ犬ギライの疑いをかけられてゲッカー公爵家を簡単に放り出された。

 その時と同じぐらい簡単に、犬好きではないかという説が持ち上がるとカオリは簡単ッカー公爵家に戻されることなった。

 9612(クロイヌ)企画の設定においては、犬好きなのか犬ギライなのかということは決定的に大切なことだった。

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