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016 お犬様と仲良くしているのならば優遇される

 魔法でわざわざ肉体改造したマーサは、人類が大型肉食獣に進化した場合をイメージさせる容姿だ。

 マーサは、普通のドアでは入らないの巨体であり、草食飾動物の分厚い毛皮と皮膚を噛み破る鋭い剥き出しの門歯を備えている。

 伸び縮みする鉤爪のある左右の腕の筋力には目を見張るものがあり、人の身体を素手で引きちぎることもできる。

 そもそも人なのかモンスターなのかどうか?

 見る者を迷わせる。

 北のア・パシリーの地のマーサの孤児院のナワバリでは、そういう生物が教会の修道女の服装を着て堂々と昼間からうろついているのだ。

 夜中になると、

 ┅┅こんばんわ、【正義の修道女】です。

 と言いながら、犬ギライの疑いのある者の家にまで押しかけてくる。

 9612(クロイヌ)企画の設定は犬の味方。

 歪んだ犬ギライの心をへし折ればへし折るほど褒賞が弾まれる。

 とすれば、マーサが肉体改造までして異形の身体を手に入れたことは普段の仕事に適合している。

 容姿の良さがプラスになる時だけ変身魔法をてきとーに使えばいい。

 そのように彼女は割りきっていた。


 マーサを逆恨みするものもいた。


「修道女の服を着た怪物が夜中に突然に家に押しかけてきて、家族の中で犬ギライを刑務所や孤児院に連行した。逆らったら、みんな大きな戦棒で殴られて、家も叩き壊された。合法な教会活動だということで、役人も冒険者ギルドに訴えても絶対に動いてくれないえんじ といった具合に色々て悪く言われる。

 しかし、マーサの信仰は揺るがなかった。

 若い頃の醜形コンプレックスやルッキズムの呪縛から解放されたと考えるマーサは世の中が少しづつ良い方向に進んでいると信じた。

 いまだにこの世界は【犬=正義】と納得しない犬ギライをボコボコにしばきあげて、天から与えられる食料や衣服を周囲の貧しい人たちや孤児に惜しげなく配った。

 修道女の服装を着た怪物が夜中に家に押し入ってくるようなことは嫌だが、犬ギライが家にいなければ無外で安心。

 それどころか、正式の教会の修道女らしく、困っている者たちをマーサは親切に助ける。

 おかげで、一定の支持者も生まれた。


「修道女さまが食べ物や槙を無料で援助してくださるンのおかげで、町の多くの者が助かっている。根性のねじくれ曲がった犬ギライどもをこらしめるために、修道女さまは見た目をおそろしい化け物の姿のように変えているが、本当に慈悲深い方だ」


  *  *

 

 人が闇魔法を使う魔族と直接に争ったのは昔の時代まことだ。

 今では南の各地のドッグランで、人間側の魔犬と魔族側の魔犬が仲良くワンプロを楽しんで、それが【最終戦争(ハルマゲドン)】と位置づけられる。

 人か魔族であるかという話よりも犬好きか犬ギライかという話の方が大切だ。

 マーサ自身も闇魔法を使っているので闇魔法を使う者に嫌悪感はなかった。

 カオリが魔族り女に教えてもらった闇魔法で。孤児院に殴り込んできた者たちを叩きのめしたという話も問題なし。

 考えねばならないとマーサは思ったのは、その魔族の相棒の猫が前世ではカオリの祖父の家の猫で、ご飯所の犬たちと友好関係を結んでいて、ご近所の犬たちも現世に転生してきていて、カオリと友好関係を結んだと言うことである。 犬

「ひょっとして、あのコは聖犬使になれる器かも・・・?」


 もともとカオリは「犬よりも猫が好き」と言った暴言をコーク王子の前で口にしたことから、ゲッカー公爵家から「もきや、うちの子じゃありません」と叩きだされてマーサの孤児院に送られた。

 しかし、カオリが犬とフレンドリー同盟を結べる心の持ち主というのならば話は全く変わってくる。


 ┅┅本来ならば、カオリはゲッカー公爵家から追放されるべきではななかったのではないか?


 この世界は【犬=正義】である。

 聖犬使。

 セイケンシ、セイケンツカワレ。

 お犬様と仲良くしているのならば優遇される。


「あのコをお屋敷に戻すように意見するお手紙を公爵に差し上げることにしましょう」


 修道女マーサはし犬ギライとその関係者を熱烈に制裁したけれども、それ以外の者を相手にするときは、彼女の支持者が褒めるように、わりと親切なところもあった。

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