013 後悔しない組織運営には対話も大切である
エリア王国の建国後に宗教皇帝は、北のア・バシリ―の都市に封じ込められたが、しぶとく生き延びるために動き回った。
伝統的権威 と【犬=正義】の 絶対原則を理論的に調和させて政治体制を権威づけたり、貴族の領地の越境犯罪者の取り締まりを犬ギライ退治の名目でうけおったりした。
貴族特権libertyを認めた王国で領地の境界を超える犯罪者を王国も領主もつかまえにくかった。
王国も冒険者ギルドも越境犯罪者を相手に動くには双方の領主の同意が求められる。.
しかし、そのような同意がなくても、越境犯罪者に犬ギライの疑いが認められれば、各地の修道院は独自にに動くことができた。
┅┅犬好きが犬ギライを叩くと、天から様々な褒賞が降ってくる。
その世界の法則は疑う余地はなかった。
相手が忌まわしい犬ギライとわかれば、問題になっている犯罪をしたかどうかなど、別に大したことではない。
断固粉砕。
腕が鳴る。
そんなこんなで、ア・バシリ―の宗教帝国と教会は夢幻郷の人間支配領域の全体で一定の影響力を保持した。
便利な魔法を使うためにはMPが必要とされる。
いったんMPを使ってしまえば決して自動回復しない。
9612-4625=4987
広い世界に約5000匹しかいない犬を見つけてフレンドリーに交流するか犬ギライを痛めつけるかしかMPを回復する方法は存在しない。
帝国の運営する孤児院が身寄りのない子どもを集めて、この世界をナメきった犬ギライのを外道を摘発して制裁することを帝国のMPの重要な供給源に位置けていた。
* *
修道女マーサの運営する孤児院において、マーサは子どもたちに対話の必要性を語った。
「実力のバランスは決して対話の十分条件ではありません。
心の問題について考えましょう。
思うに、何が起きるのかわからない世の中において、成功するか失敗するかという結果はしょせん運次第。
テータを増やし納得できる理論を打ち立て後悔しない行動を目指すこと。
被造者にできるのはそれぐらい。
相手の主張の利点とそれが発揮される状況を互いに考えて、自分たちの置かれた状況をさぐり、同胞愛をもって一般意思の適切な選択をするのです。
社会のみんなが同胞愛を発揮して共同して自分たちのことを決める一般意思を形成するのならば正義とすることは、正義は個人倫理でなく社会倫理という古典的理解にかないます。
自分のことを自分で決めるのは神意にそむきません。
有名なルソーの「一般意思はあやまたない』というのは、理屈としては、そういうことです。、
実力のバランスは、状況によっては多数の対話のきっかけに、必要条件になることは経験的真実です。
しかし、勢力均衡によって、できあがるものは、(ケルゼンの言うように)実力があればいつ裏切ってもいい暫定協定にすぎません。
そこに、社会倫理としての正義はないのです。
議会には対立する政党は不要であり、対話する政党が必要であるとヘルマン ・ヘラーは説きましたが、では、対話のためには何が必要なのでしょうか?
目的によって同一と区別は入れ替わることをヘーゲルは指摘していますが、相手の想いをら感じなければ対話不能。
正常性バイアスだけで社会は維持できるか?
このような疑問に対して『人々の生活が法秩序にもと安定すれば』『他国よりも圧倒的に経済的優位を高めた上で最底辺の構成員の生活レベルを優先すれば』とウェーバーやロールズは条件をつけて肯定するでしょう。
そのような条件づけについてウォルドロンは夢想と一蹴しています。
わかりやすい力はあちらこちらで争いのタネほ起こしているから結果的にわかりやすくなっている。
余程の確信がなければ安易にわかりやすい力に頼るべきではありませんね。
対話を否定してわかりやすい力に頼るイデオロギーはすぐ広がる利点はありますが、内にトラブルを抱える危険があることは注意しましょう。
集団行動動物学で語れば、利他的遺伝子を持つ個体の少ない群れは群淘汰されます。
組織論で論じれば、厳格型組織は急速に拡大するが、一歩間違えれば、急速に縮小し、再生しない。
政治学で述べれば、計画主義社会においては約束の観念は軽視されて非効率になる。
他にも色々ありますが、いずれかの学問を一つ知るだけで十分。
利害得失。
わかりやすい力を振るう前に状況をよく確認して、ふるった結果がどうなるか利害得失をあらかじめよく点検しましょう。
先にも述べましたが、成功するか失敗するかは時の運です。
ただ、後悔しない生き方をするためには、事前に情報を集めるべく、社会において色々な人間と対話することが大切だと思います」
* *
話をよく聞いていなかった一人の男の子かぼやいた。
「まだるっこしい。話が長くてうざい」
まだ孤児院に入って日が浅い命知らずのチャンレンジャー。
魔法によってモンスター図鑑に載りそうな怪物めいた外見に肉体改造しているマーサは、決してわかりやすい力を否定していなかった。
後悔しない組織運営には対話も大切である。
しかし、その新入りの男の子は、マーサにとって、顔ではなかった。
ぶち殺してもかまわないと確信した。
気分が少しばかりよくなると思われ、心行くまで殴りつけた。




