012 興行が失敗してしまえばいかなる物語も打ち切りで終わる
「何かあるたびに【勝つ決まっている】戦闘場面だけではを引っ張ることは難しい。それでも戦闘場面で話を引っ張るには、日頃か手数をふやさなければいけません。合体・変身・分身・再生・巨大化・小型化・通常技・必殺技・超必殺技・特殊技・飛び道具・空中技・コンボ・・・
たとえホウキを試合してもプロは観客席をわかせるものです。興行に失敗したら、本当に債権者さまたちが押し寄せてきて色々な方が自殺しなければいけない羽目に追い込まれるということもあります。
興行がうまくいっているように周囲に見せるためにフロントが夜の町でお金を使って派手に遊ぶというのもお仕事なのです。お金は寂しがりやさん。お金に余裕があるアピールをしていなければ、もうけ話もなかなかやってこないのです」
時間に余裕がある時に、魔族のフォウは孤児院にやってきてカオリに戦闘用の魔法を教えてくれた。
もとのゲ―ム世界で魔族の四天王だった彼女は、こちらの世界ではよんてんご天王と組織内部のポジションが違っていた。
経営側の視点。
単純に魔法バトルに勝つことよりも興行が大切であるとフォウは力説した。
「お客さんを引っ張れないで興行を失敗させるような真似をしやがるぐらいなら、いちいち魔法バトルなんてやらなくていいです。
魔法バトルで大切なものが何かと言えば、心ではないかとあたしは感じています。きちんとサービス精神をもってください。
今、自分は何を求められているか、考えること。
お客さんの観戦レベルにあわせて、自分のキャラをしっかりつくりこんで展開を予想させて、ここぞという時に裏切っていく。
いったい次に何が起きるのだろうか、とお客さんをドキドキハラハラさせてください。その手があったのか、と感心させてください、また次も見たいって思っていただけるように」
夜の闇にまぎれて、魔女のフォウから悪役令嬢カオリが魔法をならう。
そのあたりは4625企画のゲームを意識しているような展開だった。
しかし、この世界のフォウは、どういうトラウマがあるのか、魔法だけでなく興行にも熱心だった。
カオリは苦情をのべた。
「何か魔法よりも興行の話ばかりいみたい」
興行は大切です、とフォウは言った。
「戦闘で、チートとか、最強とか、無双とか、大声で喚いてみても、舞台は一人でまわるわけではないって、あたし、思っています。
あのね、他の役者に自分の演技にあわせるように要求してくる【舞台荒らし】って、興行をうつ側からしたら怖いですよ。
他の役者さんの思わぬ魅力を引き出してくれるとかいうことは認めます。可能性
でも、下手したら、他の役者さんたちが腹をたてて舞台が空中分解して興行全体が打ち切りエンドのくてしまうキでは?
自分はこうやって盛り上げたいんだって提案するのはよいことなのですが、興行全体のことを考えてください。
新しい芝居についてこれない役者がいたら舞台全体が不自然でおかしくなります。
代わりの役者を立てろって?
言い分はわかりますが、それは理想論。
時間も予算も人脈も限られています。
主演のヒロインががスーパー金持ちのお嬢様で、どんなアドリブも対応してくれる凄腕の脇役をすべて集めてきてギャラも負担してくれるとか、そんな甘いことはこちらも期待しません」
カオリの感想。
「あー、なんか、すごーく気が重くなった」
「病気とか、怪我とか、借金取りに追われたとか、誰にでも起こりうる事情での欠場は仕方ありません。最初から下手っぴも文句を言わない。本番が始まる前に興行側が代役の用意などで対処する問題です。
ですが、本番で他の役者がついてンこれないような勝手なアドリブをされて興行全体をし失敗に終わらされたら、興行主は防げません。
もちろん、アドリブは駄目とは言いません。
日頃から意見を換している物たちがナマの観客の反応を意識して、サービス精神を発揮する。
そういうアドリブは失敗ですべってもOK。
決められた台本通りのことしかできない機械仕掛けにはない生命が生命のことを思う温かみがあります。
興行のウリになります。
でもね、何と言いましょうか、興行すモる側の手の届かないところで、下らないアドリブで舞台を壊されてしまうというのは、興行する側にとってきついのです。
カオリちゃん、アドリブをするなとは言いませんが、楽しんでかってもらいたいという心は観客席に伝えてほしいのです。
日頃から観察力をみがいて芸の幅を広げて、咄嗟のアドリブがすべって空気がひえてもしぶとく客席を温めなおす気合いをもった芸人になってください」
カオリは、なんだか説教されているようなの気分になった。
「異世界転生して闇魔法おぼえて芸人というのも新しいけど、無駄にオリジナリティがあふれているよ」




