第一話 営業第一課(後編)
「古家さんが営業第一課に来てから、うちの課が明るくなったよね」
「いえいえ、恩田課長が来られてからですよ」
「うちのお得意さんも、今度は古家さんも連れておいでって言ってくださってるよ。古家さん、さまさまだね」
「古家さんは仕事も早いし、営業成績もいいし、周りも良い刺激になるよ!こっちも負けてらんないのね」
「それは皆さまが優しく丁寧に仕事を教えてくださるからですよ…ふふっ」
幸子も幸子の周りも生き生きとしていた。
「古家さん、恩田課長が呼んでるよ」誰かが幸子に声を掛けた。
「ただいま参ります」幸子はメモ帳を素早く手に取り、恩田課長のもとへ向かった。
「古家さん、貴女の営業成績や仕事ぶりが認められて、来週から企画課に異動してもらうことになったから」恩田課長は優しく微笑みながら言った。
つまり御栄転である。幸子は仕事が楽しくて仕方がなかった。好き勝手やっているのに、会社の営業成績は上がっていき、周りは幸せそうで、自分が役に立っていることが嬉しかった。
「私がハッピーなだけじゃなくて、みんなもハッピーだなんて、こんなことがあっていいのか?!」
元座敷わらしの幸子が去った約一週間後、恩田課長も、営業第一課の飛躍的な成長が認められて、営業第二課の課長に配置換えとなった。そして営業第一課には、あの芹沢課長が、戻ってくることになったのであった。
「俺が前にいたときから弛んでんじゃねぇか!へらへらしてる暇があったら新規の一件でも刈り取ってこい!」
幸子が元同僚からこっそり聞いたところによると、芹沢課長は、恩田課長が営業成績をぐんと伸ばした後だから、余計に鞭を振るうようになったとか。