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企み

 その日、すべての村々に今年の税について、王宮から役人が派遣されてきた。彼らはワージ執行官からある命令を受けていた。

 例えばジンク村もそうだった。役人がいきなり来て、横柄な態度で村長を呼び出した。そして有無を言わせぬ態度で村長に告げた。


「今年の出来は良いようだ。去年の2割増しとする」


 それを聞いて村長は目を剥いて驚いた。それは村にとって受け入れがたいものだった。それではこの村の多くの者が首を括らねばならない。その役人はこの村の作物の出来をろくに見てはいないというのに・・・。


「お待ちください。今年も出来がよくありません。日照りの影響です。昨年以上の凶作かもしれません。昨年でも村の者は貯えを吐き出し、やっとのことで税をお納めいたしましたのに、昨年の2割増しとはあまりのことでございます。どうかお考え直しを」


 だが役人は苦虫をかみつぶしたような顔になって首を振った。


「ならぬ。これはワージ執行官から厳命されておる。納めぬものは牢屋に入れる。これはすでに決定しておる」

「そ、そんな・・・」


 村長は絶句した。ワージ執行官といえば、王宮で絶大な権力を握るドラス大臣の側近であった。そのドラス大臣は先王が病気だった時から専横を極めていた。税が多くなっていったのはその時からだった。人々はドラス大臣たちが私腹を肥やしているのだろうという噂していた。


「わかったな。申しつけたぞ! お前から村の者どもに告げるのだ」


 役人は横柄にそう言って帰って行った。


 ◇


 王宮ではドラス大臣の執務室にワージ執行官が来ていた。ドラス大臣は村の様子などを尋ねた。


「どうであった?」

「はっ。各村の村長には命令いたしました。不満は出ましょうが従うはずです」


 ワージ執行官は答えた。それを聞いてドラス大臣は満足げにうなずいた。


「うむ。これで民が納める税も多くなり、その分が我らの倉が潤う」

「さすがでございますな。しかし王様には?」


 ワージ執行官は王様のことが気がかりだった。もし王様がこのことを耳にしたら罪に問われるのは明らかだった。


「心配はない。あの王様にはどこからも余計な話が届かぬように、儂の息がかかった者のみで固めておる」

「そうでございましたな」

「先王が亡くなった後、この国に評議会やハークレイ法師が世間知らずの王子を送り込んできよった。我ら一派が国を動かしているというのにな。だがこうして王様の耳を塞いでおけば何という事もない。フフフ」


 ドラス大臣は笑った。ワージ執行官もニヤリと笑った。


「永明な王子様が来られるということでしたが、心配いりませんでしたな」

「そうよ。耳触りの良いことだけを言っておけば王様は喜ぶ。多くの民が不満を持っていようともな」

「まことに。たとえ民が反乱を起こしても気づかぬかもしれないでしょうな」

「もしそうなれば今度こそ我らが傀儡の王を擁立できよう。評議会を説き伏せてな。しかも我らには大きな後ろ盾がある。フフフ」

「そうでございますな。ハハハ」


 ドラス大臣とワージ執行官は笑い合っていた。


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