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ハークレイ法師の言葉

 リーサは窓の外を眺めていた。そこは見事な庭が整えられており、多くの花が咲き誇っていた。だが彼女の心は王様のことで占められていた。すぐにでも王様のそばで働きたいが、まだ体が重くて本調子ではない。

 そこにノックして入ってきた者があった。


「マモリ?」


 だがそれは何とハークレイ法師だった。


「リーサさん。しばらくじゃったな」

「これは!」


 リーサは慌てて寝台から下りてひざまずこうとしたが、ハークレイ法師に止められた。


「そのままでよい。ここに来たので顔を出したまでじゃ」

「法師様には感謝の言葉しかございません。我が国を救い、王様を助けていただいたことを聞いております」

「いや、神のご加護があったからじゃ。それがなければどうなっていたかわからぬ。儂も聞いたぞ。リーサさんが願掛けをして懸命に神に祈っていたことを。もしかしたら儂らはリーサさんに救われたのかもしれぬな。はっはっは」

「そんな・・・」


 リーサは恐縮していた。ハークレイ法師はそばに置いてあった椅子に座った。


「いやいや、そういうものかもしれぬ。すべての事象はつながっておるからの。リーサさんにはまだわからぬかもしれぬが・・・」


 リーサはハークレイ法師がここに来たのは自分に何かを告げに来たのではないかと思った。だから当たり障りなく聞いてみた。


「時に法師様。こちらにはどのようなことでいらっしゃったのですか?」

「詳しくは言えぬが、この国にとって重要なことを話し合うためじゃ」


 ハークレイ法師はそう言った。それは内密なことだろうと思ってリーサはそれ以上、聞かなかった。ハークレイ法師はふと窓の方を見た。そこからは美しい庭が望める。


「ここはよい部屋じゃの。美しい草花が楽しめる」

「はい。先の王妃様のお部屋だそうです。私なんかではもったいなくて・・・」

「そうか・・・ここが先の王妃の部屋か・・・」


 ハークレイ法師は何か感慨に浸っているようだった。しばらく沈黙の時間が流れた。外の庭から小鳥のさえずりが聞こえていた。

 しばらくしてハークレイ法師がやっと口を開いた。


「リーサさん。儂が来たことであなたを苦しめることになるかもしれぬ」

「何のことでございましょうか?」

「それは言えぬ。ただこれからのことはあなたたち次第・・・儂にはどうすることも出来ぬ」


 そう言って立ち上がろうとした。するとふと何かを思い出した。


「おっと忘れておった。右手を出してみなさい」

「はい」


 リーサは言われるがままに右手を出した。それをハークレイ法師が両手で握り、呪文を唱えた。


(体が軽くなっている!)


 あれほど重く感じていた体が軽くなり、気力が充実してきた。


「方術で体の流れを正した。もうこれで大丈夫じゃ」

「ありがとうございます。これで今からでも働けます!」


 そうなればまた王様のお世話係としてそばにいることができると・・・リーサはうれしくなった。


「儂がしてあげられるのはこれくらいじゃ。ではな」


 ハークレイ法師は部屋を出て行った。


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