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ワージの企み

 ドラスとワージは国境を越えてトキソ国の王都に向かっていた。彼らはラジア公国から借り受けた多くの兵士で守られていた。その数は百というところであろうか。


「ドラス様。この数で王宮に攻め込むのですか?」


 ワージが尋ねた。


「ふふふ。そうだ。もっと多くの兵を借りることもできたが、これぐらいが目につきにくくてちょうどよい」


 ドラスは自信満々だった。これは何か策があるとワージは思った。


「一体、どのように?」

「ワージ。知りたいか?」

「はい。私にはわかりかねますので・・・」

「ふふふ。そのうちにわかる」


 ドラスはもったいぶって教えなかった。するとその先に数人の人影が見えた。彼らはドラスの前に出て片膝をついて頭を下げた。その中の一人が言った。


「これはドラス大臣様!」


 それはミクラスだった。彼も牢に入れられていたが、カイアミの手引きで仲間とともに脱獄していた。そして任務を与えられ、ここに来たのだ。


「おう! ミクラスか! 久しぶりだ。だがもう大臣ではないぞ」

「それでは王様とお呼びしましょうか? ドラス王様」

「はっはっは。調子のよい奴め! はっはっは」


 ドラスは機嫌よく笑った。ミクラスもひとしきり笑った後、真剣な顔をしてドラスに言った。


「ところであの件ですが、作戦はもう立ててあります。この者たちを使います」


 ミクラスは腕の立つ仲間とともに2人の女性も連れていた。


「お久しぶりでございます」

「私たちがお手伝いいたします」


 その2人はカーラとスギノだった。リーサを陥れようとしたことが発覚して、サラサ王女にラジア公国に連れていかれた元女官だった。ドラスはその2人の顔を見て思い出した。


「ふむ。見たことがあると思ったら王宮の女官か?」

「元女官というのが正しいでしょう。王城の下働きをさせられていたところを誘い出しました」


 ミクラスが答えた。


「全くひどい目に会いましたわ!」

「この恨み晴らさないと気が収まりませんわ!」


 カーラとスギノは怒りを隠そうとしなかった。サラサ王女がこの2人の曲がった根性を叩き直そうとしたが無駄だったようだ。


「これで役者はそろった! ではミクラス。頼むぞ!」

「お任せを!」


 ミクラスは不気味な笑みを浮かべながらうなずいた。


 ◇


 マスカは王都のはずれにある古い寺に司令所を置いていた。そこから周囲に配置した反逆軍を指揮していた。

 今や反逆軍で王都を完全に包囲した。すでに街道は以前からラジア公国の兵で封鎖されていたが、これで完全になった。

 彼の見るところ、王都にいる兵は少ない。いや王宮の守備隊が最低限、残されているだけだ。このまま勢いに任せて力攻めでも王宮を落とすことができるかもしれない。だがカイアミが許さない。


「包囲は完了した。このまま押しつぶすように攻めたらどうだ?」

「それはいけません」

「なぜだ?」

「この数では王宮を落とすには少々、少なすぎます。しかしハークレイ法師様がじきに来られましょう! 晴れて官軍となって攻めた方が民に受けが良い。それに王宮からも内応者が出ましょう」


 そう言われればそうかもしれないが、戦いは時と勢いも大事だ・・・マスカはそう思っていた。


「街道を守っていたラジア公国の兵たちが王都への使いを通してしまったという報告もある。評議会がハークレイ法師様を妨害してしまったら・・・。いや、レイダ公爵の動きも気になる。王都を脱出して地方で兵を募っているようだ。もし大兵力で立ち向かってきたとしたら・・・」


 マスカは不安をぶつけてみた。しかしカイアミは笑って言った。


「ははは。何を心配しておられるのですか? 我らにはラジア公国がついているのですぞ。いざとなれば大軍が派遣されてきます。アデン王やレイダ公爵がいくらあがいたところでどうかなることはありません」


 そう言われれば引き下がるしかない。


「では私は本国と連絡がありますから・・・」


 カイアミは部屋を出て行った。2人の会話をそばで聞いていた副官のタカロが眉をひそめていた。


「あの者は本当に信用できるのでしょうか?」

「何を言う? 前にも言ったが、れっきとしたラジア公国の使いの者だ。彼はハークレイ法師様の書状をもたらしたのだ。しかも街道の封鎖に必要な兵も用意した」

「確かにそうですが、何か胡散臭いように思います」

「まあ、そう言うな。上からの指示があるのだろう。我らはそれに従ってアデン王を倒し、新しい王朝を作る!」


 それを聞いてタカロはまた眉をひそめた。


「まさか・・・あなたは王になるつもりですか?」

「天命があればそうなる。カイアミが言っていたように・・・」

「ちょっと待ってください! やはり変だ! こんなことをハークレイ法師様がなさるはずはない。目を覚ましてください!」


 タカロは大きな声を出して訴えた。そう言われてマスカははっとした。


「確かにその気になっていた。私は民を救うためにこのようなことをしたのだ。王になることはない」

「そうです。あのカイアミにそそのかされているんです」

「しかしハークレイ法師様の書状がある。カイアミが信じられなくてもそれには従わねばならぬ」


 そう言われれば、これ以上、タカロは反論することはできなかった。


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