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空の王宮

 王宮内では皆が団結して戦意は旺盛になったが、如何せん、騎士や兵士の数がまだまだ少なかった。それはアデン王のみならず、皆が感じていた。


「このままではラジア公国の軍勢どころか、反逆軍ともまともに戦えない・・・」


 会議の席上、アデン王はじっと考えていた。するとレイダ公爵が発言した。


「このままではここに籠城しても大軍に囲まれたらひとたまりもありません。私が兵を集めて参ります」

「しかしどうやって? ハークレイ法師様に逆らうまいと参陣を見合わせる者が多いのに」

「王都周囲では無理かもしれませんが、地方ならそのうわさは出回ってないかもしれません。直接出向けば、必ず加わる者がいるでしょう」


 こうして待っていても兵は集まらない。レイダ公爵の提案を進めた方がよいのかもしれないとアデン王は思った。


「よし、わかった! 公爵に任す!」

「はっ! 早速参ります」

「だが外には反逆軍が待ち受けているかもしれぬ。兵を連れていけ。ここには百ばかり残せばよい」

「しかしそれでは王宮の守りが・・・」

「大丈夫だ。高い塀に囲まれたこの王宮に簡単に手を出すものなどいまい。それに百もいれば十分備えられる。そうやすやすと内部に敵も侵入できぬであろう」


 アデン王はレイダ公爵の身を心配して彼に多くの兵をつけたかったのだ。それに百も兵がいれば反逆軍程度の規模の兵力では十分に守り切れると計算していた。


 そうしてレイダ公爵は王宮に集まった兵の多くを連れて出発していった。それを見送るアデン王は、


「レイダ公爵! 頼むぞ! 多くの兵を集めてここに戻ってくれ!」


 と心の中で呼びかけていた。



 女官や庭師、料理人などの非戦闘員の多くは避難するために王宮から出て行った。そうなると残ったリーサたちはかなり忙しくなった。それにリーサはあちこちに散らばる仮設の兵舎への連絡係として飛び回っていた。その自慢の健脚を生かして。

 王宮内は人がぐっと少なくなり、がらんとして不気味なほどに静まりかえった。リーサはそこを走り回りながら思った。


「こんなに人がいなくなって王宮は大丈夫なのかしら・・・」


 リーサは嫌な予感を覚えていた。


 ◇


 ラジア公国のグラチ王城ではプラクト大公が怒鳴り声を上げていた。


「あのバカ息子め! しくじりよったか!」


 首都ゼロクロスからメドール王の使者が到着していた。そこで評議会の決定についての報告を受けたのだ。プラクト大公は評議会の承認のもと、トキソ国に侵攻し、領土の拡大をたくらんだ。だがハークレイ法師らによってそれは阻止されてしまった。


「どういたしますか? 計画を中止いたしますか?」


 側近のヨーク総長が尋ねた。大公のことだから、そんなことはあるまいと思いながら・・・。


「ふふふ。これぐらいで取りやめるわけはないであろう」


 プラクト大公は不気味に笑った。


「ハークレイめ! これで儂を阻止できたと思ったら大間違いだ。評議会の承認などなくてもやってやるわ! 我が国の力を見せてやる!」


 プラクト大公は立ち上がった。


「ドラスたちはどうなっておる?」

「我が国の兵とともにトキソ国に潜入しました。王都に向かっています」

「うむ。カイアミの方は?」

「トキソ国の反乱分子を扇動して反逆軍を組織しました。かなりの軍勢になったようです。王都をぐるりと囲んでおります」

「うむ。封鎖はこのまま続けよ!」


 プラクト大公は順調な進捗状況に満足していた。彼はそのまま窓のそばに行って遠くの方を眺めた。その方角にトキソ国がある。そしてその奥には多くの国々が・・・彼には野望を妨げるものなど何もないように思えた。


「あそこもここも・・・いやすべて我がものになる・・・」


 プラクト大公は少しその余韻に浸ると、おもむろに振り返った。


「全軍出動準備! 急げ!」


 彼が声を上げた。すると「はっ!」と返事をして周囲があわただしくなった。いよいよ黒幕であるプラクト大公が動き出そうとしていた。


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