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タイノス事務局長

 メカラス連邦の首都はゼロクロスである。そこに連邦評議会が置かれ、それはハークレイ法師はじめ有力な国の王や司祭などにより構成されている。この度、定期の会議が催されることになり、評議会のメンバーが続々とゼロクロスに集まってきていた。その中にはしばらく行方が分からなかったハークレイ法師の姿もあった。


 評議会の議長であるタイノスは事務局長でもあり、彼の元には様々な訴えが届いていた。彼は会議を進行するが、いつもメンバーの意見を取りまとめるのに苦労していた。

 最高顧問のハークレイ法師はタイノス事務局長を助けて会議をリードし、それでなんとか評議会は表面上、まとまってはいた。そのためタイノス義務局長はハークレイ法師を非常に頼りにし、会議の前には議題についてよく相談に行くことがあった。今回も会議を前にして彼はハークレイ法師の屋敷を訪ねた。


「ハークレイ法師様。よく戻られました。ご相談したいことがあり・・・」


 タイノス事務局長は困りごとを抱えていた。ハークレイ法師は何事かと尋ねた。


「どうされたのかな?」

「実は大変なことが起こりそうです・・・」


 タイノス事務局長は話し始めた。その様子からして深刻そうだった。


「まだ正式ではありませんが、会議でメドール王、いえその意向を受けたビスク王からある提案がなされます」

「メドール王といえば、先頃、父のプラクト大公から譲位された、大国のラジア公国の王じゃな」

「はい。そうでございます。そのラジア公国がある国を併合しようと狙っている節がございます」

「それはどこじゃ?」

「隣国のトキソ国でございます」

「なに! トキソ国じゃと!」


 タイノス事務局長の言葉にハークレイ法師は驚いた。トキソ国といえば、逆臣ドラスを排除して、アデン王が新しき国づくりをしているはずではなかったか・・・。


「しかし露骨にはそれはできまい」

「はい。そのためトキソ国の治安が乱れているのを理由にラジア公国から兵を出して収めようと」

「それを足掛かりにトキソ国を飲み込むつもりじゃな」


 ハークレイ法師はそう言ってうなずいた。ラジア公国はかつて周辺の国を無理に併合したことがある。この連邦に加わってからそれができなくなったものの、隙あらば周辺の国々を取り込もうとしている。現に隣り合うミンゴク伯爵領は併合されてしまった。

 ラジア公国のメドール王は評議会のメンバーになっており、その強大な力で他のメンバーを味方につけて評議会を思うがままにするかもしれない。


「何とか阻止しなければと思いまして。」

「うむ。しかしメドール王、いやその背後にいるプラクト大公は狡猾な者じゃ。どんな手を使ってくるかわからぬ。注意しなければならんな。」


 ハークレイ法師は懐から水晶玉を取り出して見つめ出した。


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