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反逆ののろし

 ここはラジア公国との国境近くの森。そこにトキソ国のヨーマ砦があった。いつもならそこは静かでのどかなところなのだが、今日は違った。その砦に多くの兵が攻めかかっているのだ。その兵たちの旗はトキソ国のものではない。ついにマスカが立ちあがったのだ。


「行け!」

「おう!」


 兵士たちは怒涛の勢いで砦の門に殺到し、それを打ち破った。中にいる守備隊はなす術もない。だが少数ながら抵抗しようとする者があった。この国や王様に対する反逆は許さぬと・・・。

 だがその者たちにマスカが大声を上げた。


「我らはハークレイ法師様からご命令を受けた軍だ。抵抗は止めよ!」


 そしてハークレイ法師からの書状を振りかざした。するとその者たちはあわててすぐにそこにひれ伏した。ハークレイ法師に歯向かおうとする者などいないのだ。こうしてその砦はあっけなく落ちた。


「この分ではすぐに国境地帯の砦は我が方のものになるだろう。だが・・・」


 何と言っても王都には兵が多くいる。アデン王が討伐軍を出せば、すぐに鎮圧されてしまうかもしれない。それをはねのけるためには、このハークレイ法師様の書状が重要だった。これを見せれば味方になる者が多かった。


「まずは味方を増やして時期を見て王都に攻め込む。そうしてアデン王をこの国から除く」


 マスカは砦から王都の方を鋭い目で見ながらそう呟いた。



 マスカたちの反逆軍の勢いはすさまじかった。国境地帯の砦を落とし、支配地域を広げた。そしてハークレイ法師信任の軍ということであちこちから兵も集まり、その兵数は日に日に膨れ上がっていた。いまやトキソ国の軍と比べ、兵力では匹敵していた。


 彼らが落としたフクロウ砦で作戦会議が行われた。それで今後の作戦をきめていくのである。席上、マスカがタカロに尋ねた。


「戦況はどうだ?」

「順調です。この地域の砦はすべて陥落するでしょう」

「ならばこの次だ」

「王都への道沿いの拠点を攻略します・・・」


 タカロが今後の作戦方針を説明した。この分ではたいした妨害もなく王都に進めるかもしれない。


「うむ。よくわかった。王宮にはまだこのことを知られていないな?」

「はい。定期的に来る連絡員はすべて拘束しております。我が方を探ろうとする不審な者はすべて捕らえてあります。この地域の警備を厳重にしているため、よほどの健脚の者でもない限り、ここを探るのは無理でしょう」

「よろしい。では次・・・」


 反逆軍の動きはますます活発になっていた。このままいけば王都、いや王宮をすぐにでも制圧できよう・・・マスカは確信していた。



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