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褒美の品

 次の日、リーサが教室に入って席に座ると、セイジとソージがそばに来た。その様子はただ事ではない。


「ちょっと、リーサに何の用なの!」


 そばにいたマリが2人に言った。彼女は昨日、リーサが2人と競争して圧倒的に勝ったことを聞いていた。2人が文句を言いに来たかと思ったのだ。


「いや、用というわけじゃないけど・・・」

「俺たちはちょっとリーサに聞きたいことがあって・・・」


 セイジとソージは何か言いにくそうだった。はっきりしない。リーサが聞いてみた。


「聞きたいことって何?」

「リーサの父って・・・」

「去年、朝駆けで一番乗りを取ったんだな?」

「そうだけど」


 それを聞いてセイジとソージは顔を見合わせてうなずいた。マリは「そんなことか」と肩をすくめた。


「だからどうなの?」

「俺たち、ガンジさんにあこがれているんだ」

「かっこよかったぜ。あの走り。圧倒的に早かったからな!」


 セイジとソージはうっとりした顔をして話していた。リーサは少し誇らしげな気持ちになった。


「それを言いに来たの?」

「まあ、俺たちじゃ、ガンジさんの娘には勝てないってわかった」

「この学校の『韋駄天』の称号をリーサに譲るよ」

「いらないわ!」


 リーサはにべもなく言った。そんな称号、ありがたくもないと思った。


「そうか? せっかくなのにな?」

「それより話を聞かせてくれよ。一番乗りを取って王様からお言葉とご褒美をいただいたんだよな」

「ええ、そうだけど。私も門の外で見ていたからよく見えなかった」


 リーサはこう答えたが、代わりにマリが話を続けた。


「でも『今年の朝駆け、見回り組騎士、ガンジが一番乗りいたしました!』って名乗りを聞いたわ。みんなしびれていたわ」


 確かにその声をリーサは聞いた。父の走りも素晴らしかったが、その声にも感動した。マリはさらに話し続ける。


「王様から黄金3枚をいただいたのよ。リーサの家に飾ってあるわ」

「へえ。そんなものをいただけるんだ」

「でも俺だったら別の物が欲しいな」

「何だよ?」

「剣さ。王様からいただいたらうれしいだろ?」

「俺なら幟かな。」

「私ならきれいなドレス。それに王宮のパーティーに招待していただけるっていうのはどう?」


 マリとセイジとソージは話している。それを聞きながらリーサは考えていた。


(私なら女官にしていただくことよ。そうやって王様に仕えられたら・・・)


 するとふとある考えが浮かんでいた。


(そうだ。今年も父上が勝つだろう。そうならご褒美に私を女官にと王様に頼んでいただこう)


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