妨害
道は途中、森の中でも高い草木に覆われたところを通る。そこは人目のつかない暗い場所だった。まずベルガが通り過ぎた。
「ベルガが行きましたぜ」
「先頭だな。このまま様子を見るか」
「あっ。後からついてきていますぜ! あれはガンジではないですか!」
草むらにはミクラスら3人が隠れていた。彼らはワージ執行官の命令を受けていた。もしもの時はガンジを襲えと。
「どうします?」
「ベルガが勝ちそうですが・・・」
「いや、もしもという場合がある。今度しくじったら我々の命はない。やるぞ!」
まずミクラスが道に飛び出した。そしてさっと剣を抜くと、
「止まれ!」
とリーサを威嚇した。
(えっ! なに!)
驚いたリーサは立ち止まった。後ろに逃げようと思ったが、そこには2人の男がいた。やはり剣を抜いて構えている。
「悪いがここで死んでもらうぜ!」
ミクラスが剣を振りあげて近づいてきた。
リーサは叫びそうになるのを何とか押さえた。
(ここで声を上げて女であることがばれてはいけない。でもどうしたら・・・)
リーサはどうにもできなかった。3人の男は剣を手にじりじりと前後から彼女に近づいてきた。もう逃げ場はない。絶体絶命の状況だ。彼女は辺りを見渡したが、他に誰もいない。
(助けて! 誰か助けて!)
彼女は心の中で叫んでいた。
「死ね!」
ミクラスが剣を振り下ろそうとした瞬間、周囲の木が大きくざわめいた。そして彼は急に何かに吹っ飛ばされた。
「何だ?・・・!」
転がったミクラスが前を見ると、鎖を振り回しているセイリュウがいた。
「何者だ!」
ミクラスが叫んだ。するとそこに聞き覚えのある声が聞こえた。
「またお前たちか!」
横にはキリンも立っていた。驚いたミクラスが大声を上げた。
「貴様! どうしてここに!」
「俺たちはこの人をずっと守っていたのさ」
「前は油断したが、今回はそうはいかんぞ!」
ミクラスは立ち上がり、他の2人の男はその横についた。キリンがリーサに言った。
「危ないから下がっていなせえ」
リーサはセイリュウに守られて後ろに下がった。ミクラスたちは剣を構えて少しずつ近づいてきた。キリンは指を鳴らしながら言った。
「今度は逃しはしねえぜ!」
「なにを! 貴様からまず殺ってやる!」
ミクラスたちはキリンに剣を振り上げて一斉に向かっていった。だがキリンはそれをものともせず、振り下ろされてくる剣をひょいひょいと避けた。そして逆襲して突きや蹴りを叩きこんでいく。
「うわぁ!」「ぐえ!」「ひえ~!」
ミクラスたちは悲鳴を上げて膝をついた。そこをセイリュウが鎖を伸ばして3人を縛り上げた。キリンは一丁上がりとばかりに手でほこりを払いながらリーサに声をかけた。
「もう心配いらねえぜ! しっかりがんばるんだ!」
リーサは頭を下げるとまた走って行った。その姿をキリンとセイリュウは(よし!)とうなずきながら見送っていた。




