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襲撃

 老人は部屋に戻って座るなり、おもむろにつぶやいた。


「あのガンジという男。何か心に秘めておる」

「やはり予見されていた通りでございますか?」


 ビャッコが尋ねた。


「うむ。この国の現状を憂い、行動に移そうとしている。困難が待ち受けているというのに・・・」

「ゲンブとセイリュウがすでに調べをつけております。もう奴らも言い逃れられないでしょう。直接乗り込まれては?」


 キリンにはそれが手っ取り早い方法に思えた。だが老人は首を横に振った。


「我らが押し掛けたところで追い返されよう。王の耳に届く前に・・・。だからこの方たちの力が必要なのじゃ」


 老人はそう言って窓の外を見た。満月がこの上なく美しい。だがその光に老人は妖気を感じていた。


「どうかされたのですか?」


 月をじっと眺める老人にビャッコが尋ねた。


「あの月・・・。今宵は何かが起こる気配がある」


 老人はおもむろに懐から水晶玉を取り出して中をじっと見つめた。そして彼ははっとした。


「キリン! ガンジさんを追え! 彼の身が危ない!」


 老人は声を上げた。水晶玉にガンジの危機を見たのだ。


「はっ!」


 キリンはすぐに窓からぱっと外に飛び出して行った。満月で外は照らされていたが、その姿はすぐに消えていった。


「間に合えばよいが・・・」


 老人はそう呟いた。


 ◇


 ガンジは家の近所を走っていた。満月で道も明るく走りやすかった。だが彼を追いかける3つの人影があった。彼らは手に剣を持っていた。それでガンジを亡き者にしようというのだ。

 ガンジが折り返して戻ってきた。その襲撃者たちは木の陰に隠れ、息を殺して気配を消した。そしてガンジが近づくのを待っていた。


 ガンジはその木のそばを通りかかった。すると、


「ビューン!」


 と風を切る音が聞こえた。ガンジにはそれが剣の振り下ろされる音だと瞬時に気付き、とっさに一回転して身をかわした。すると彼の前に3つの人影が浮かんだ。彼らは強い殺気を放っていた。


「何者だ!」


 ガンジが声を上げた。だが襲撃者たちはそれに答えず、次々に剣を振り下ろしてきた。その鋭い剣さばき、彼らはなかなかの手練れのようだった。素手のままでは騎士のガンジでも到底、敵いそうにない。


(どうして私を?)


 ガンジには命を狙われる理由がわからなかった。だがこのままでは殺されるだろう。何とかこの場を逃れなければ・・・そう思いつつ、彼は何度も剣をかわしていた。だがついに右太ももに剣を受けてしまった。


「うううっ・・・」


 焼けるような痛みが感じられ、その場に倒れた。右足がもはやいうことを聞かず、立ち上がれない。


「死ね!」


 彼らの一人がガンジに剣を振り下ろしてきた。ガンジはどうすることもできず、ただ顔を伏せて両腕をその前にやった。闇にキラリと光る刃が彼に迫る・・・。


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