目覚め
これは「アクアリウムは踊らない」の二次創作です。
エンディングNo.5のその後を描いております。もしかしたら少々設定が異なるかもしれませんがご愛嬌ということで…
「ニコー、起きなさーい」
聞きなれた声で目を覚ます。ここは病院のベットではない、それを再認識する。
「はぁーい」
数週間前まで俺は病院で入院していたのだ。幼いころから体が弱いこともあってか重い病気を患ってしまった。病院では子供と遊んだり、毎日検査を受けたり…夜中部屋を抜け出したりもしたな…。
でもそんな生活ももう終わった。これからは病院にいた時間の分、遊びつくすんだ!
「ニコ、水族館のチケットを一枚もらったんだけど私もお父さんも仕事でね…だからよかったら行ってみれば?」
そういって朝ごはんを食べてるときに母さんが渡してくる。
「ん?ってこれってあのビアンカ水族館のプレミアムチケットじゃねーか!こんなん誰からもらったんだ!?」
「知らないわよ、お父さんが貰ってきたんだから」
「ふーん、そうか…。じゃあ、行ってみようかな」
「そうしなさい」
ということで一人で水族館に行くことになった。
水族館。
受付へ向かう。受付には美人なポニーテールの人がいた。
「あの、これで入りたいんすけど…」
「はい、拝見いたします……!こ、これは…プレミアムチケット!」
「それで入るとなんかあるんですか?」
「はい。このチケットをお持ちの方はこのわたくし館長の妻であるクリスが同行し、展示されている生き物たちの説明をさせていただいております」
「そうなんですか…」
「はい!では早速参りましょう!」
「は、はあ…」 (受け付けは大丈夫なのかな…?)
女性と、ということでとても気まずいが説明を受けながら回っていく。
これはクマノミで…、あ、それはクラゲ、水クラゲですね…とその生き物がどんな生態をしているのか、事細かに説明してくれる。別に海の生き物に興味はないがこうわかりやすく説明されると俄然、興味がわいてくる。
その時ふと一つの水槽の前で足が止まる。
「それはタツノオトシゴですね。どうかしましたか?」
!思わず見入ってしまった。前々からかっこいいと思っていたけれど。水族館独特のコントラストも相まって美しいと思ってしまう。
「いえ、かっこいいなって」
「そうでしょうね。水の中で立って泳ぐその姿から竜が落とした子ということでタツノオトシゴというんです。まあ、流に似ているんですよ。」
「へえ…」
竜の子という割には小さいな。そう思いながら先へ進む。
少し歩くと、ひときわ目立った水槽がある。なんてったって大きいのだ。ほかの水槽とは比べ物にならないほど。だが―――
「いない…」
そう、いない。ここにいるはずの生き物がいないのだ。
「はい、ここには大きいサメがいたはずだったんですが、今はおそらく別のところにいますね。」
「どこに?」
「企業秘密、です」
はぐらかされてしまった…
「ああ、そうだ、この先にカフェがあるので行ってみてはどうですか?海を見ながら飲食ができて結構人気なんですよ」
「はい、じゃあ行ってみます。」
落ち着きたいし…これが本音だった。プレミアムチケットの特典としてクーポンをもらい、クリスさんと別れ、カフェへ向かう。
階段を上ると目と鼻の先まで波が来そうな海が広がった。
「海、近!」
なかなか海は見たことがなかったので身を乗り出して覗く。
その時背中に衝撃を感じ、気付いた時には空中に投げ出されていた。
声を出す間もなく海に…そこで俺の意識は途絶えた。