お腹いっぱい
「ありがとうございます」
「君に礼を言われるようなことは、何もしていない。それどころか、私は……」
悩ましげなお顔をされた旦那様も世界で二番目に素敵です!!!
「いいえ。そもそも私は、ゼン殿下からの愛は望んでおりません」
だって、ずっと儚げ美少女を一途に思い続けるなんて、めちゃくちゃ解釈通りだし。そこでぽっとでの私に、恋をされても……ってところはある。
「私からの愛を望まない……そうか、もしかして君は、私のことを嫌って……」
「いえ、私は殿下のことを愛しておりますが」
世界で二番目にという注釈はもちろんつくけれど。
「あ、愛!?!?!?」
「はい」
旦那様は、顔を真っ赤にして口をパクパクとさせた。照れるとそんな表情をされるのね。
はあー、そんなお顔も素敵。
「ですが、本当に私への愛は不要ですので。とはいえ、お気遣いくださりありがとうございます。これからは、戦友として共に歩んでまいりましょう」
「……あ、あぁ」
その後、旦那様の非常に整ったお顔を眺めながら、朝食を摂った。
はぁ、なんて贅沢な時間!!
知ってたけれど、イケメンウォッチって、本当に幸せな気持ちになれるわー。
「では、私は失礼する……!」
「はい」
なぜか旦那様は食事のあと、ばたばたと出ていってしまったけれど。
さて、私も自室に戻って、執務をしようかしら。
◇◇◇
「朝食会は――楽しかったようですね」
アビーが出迎えてくれ、開口一番にそう言った。
「あら、わかる?」
「はい。とっても」
私ったら、それほどまでに上機嫌な顔をしていたらしい。
「そうなの! 聞いてくれる?」
「ええ、もちろん」
私はその後、ゼン殿下のお顔の美しさについて語ったのだけれど――15分を過ぎた辺りで、アビーが口元を押さえた。
「……って、あら? どうしたの?」
「いえ。顔についての賛辞だけでこんなに長時間語られると……なんというか、お腹いっぱいで」
「あら、そうなの。なら、この辺りでやめておくわ」
残念ね。仕方ないわ。ゼン殿下のお顔の素晴らしさは、私の胸の中で、語っておこう。
それにしても、お腹いっぱいって……。
「アビーは、自分の顔を見慣れているからかしらね」
「私の顔?」
「ええ。だって、アビーってとっても美人だもの」
美人なんて言われ慣れているような言葉ではなくて、もっと言葉を尽くしたいけれど。お腹いっぱいとのことなので、省略する。
「…………は?」
途端に、りんごのように真っ赤になったアビーに驚く。
「え? どうしたのアビー?」
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