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恋です。

恋です。12話

作者: 新垣新太

3月に緑鶴高校を無事卒業した飯塚と藤川。2人は卒業旅行と称して明日から4日間の沖縄旅行を楽しむ予定だ。飯塚はそこで、藤川に結婚を前提とした同棲の話をしようと決めていた。


・・・


3月18日。飯塚と藤川は那覇空港に到着した。今日から4日間、2人の卒業旅行が始まる。沖縄の空気は少し湿っていたが、柔らかく心地よい空気が流れていた。今日の藤川は、冷たい藤川だった。


藤川「東京より人が少なくて良いわね。ゆっくり過ごせそう」

飯塚「メンソーレー沖縄!」


飯塚は取りたてほやほやの車の免許証を自慢気に藤川に見せる。それを見て藤川は冷たい視線で飯塚を見た。2人は空港の側にあるレンタカーを借りに行き、カーナビに目的地を入力し海の方面を目指して出発する。


藤川「飯塚、音楽無いの?」

飯塚「野暮だなー。外から聞こえる沖縄のBGMが聞こえないのかね?」

藤川「耳ちぎられたいの?」

飯塚「冗談冗談、由衣の好きな音楽持ってきてるよ」


♪~♪~♪~♪~


沖縄の景色に優しい音色が車から流れる。2人は車の窓を開けて、外の空気の匂い、柔らかい風を感じていた。今日2人が行く予定のシュノーケリングの看板が前方に見えてきた。


・・・


飯塚は、現地で貸し出しているシュノーケリング一式をガイドをしてくれる男前の男性に教えてもらいながら装着した。藤川は、潔癖症の為、自前で用意したシュノーケリングとウェットスーツに身を包み飯塚と合流する。


藤川「飯塚、それサイズ合ってる?なんか足がダボついてる」

飯塚「短足感否めない(笑)。由衣はバッチリだね!ピッチリしててボディラインが綺麗だよ」

藤川「、、うるさい」


準備が整った2人は、シュノーケリングの簡単な説明をガイドの方から聞いた。今回は、飯塚達以外に3組のグループが一緒にシュノーケリングをする。この日は、天気が曇天だったのだが、タイミング良く今の時間帯だけ晴れ間が差していた。ガイドの方を先頭に海へと入ってゆく。


飯塚「あ、ちょっと冷たいか」

藤川「大丈夫、すぐ慣れる」


2人は大きなゴーグルで海の中を覗きながらゆっくりと泳いでゆく。沖縄の海は透明度が高く、海底まではっきりと見える。珊瑚や小さなウニ、小魚が海面から見てとれる。東京とは違う世界に堪能していると、大きな岩場に到着した。その岩場には、少しだけ人が通れる穴が開いており、ここを通るとガイドの方が説明する。


藤川「ここだ。楽しみね」

飯塚「うん」


ガイドの方の説明通り、頭を岩場にぶつけないように気を付けて進んでゆく。外からの光が少ない分、岩場の入口は閉塞感があった。だが、その入口を通り抜けると、その先には大きな空洞が飯塚達の目の前に広がっていた。


飯塚「凄い、本当に青い」

藤川「綺麗なブルー。美しいわ」


岩場の内側は暗い洞窟だった。そこには、外の光を吸収した沖縄の海が美しいサファイア色に染まる。ここで飯塚はゴーグルの後ろに縛っておいたある物を手に取った。


飯塚「由衣、顔上げてゴーグル外せる?」

藤川「?、、えっ?何、どうしたの?」


飯塚が手に取った物。それは群青色の小さな箱。それを開けると中には指輪が入っていた。


飯塚「由衣とこれからも一緒に生きていきたい。だから、俺と結婚を前提に同棲をしてくれないか?」

藤川「うそ、、この指輪は?」

飯塚「由衣と結婚する為の予約指輪」

藤川「これ、プロポーズだよ。わかってる?」

飯塚「うん。、、指輪、付けてくれる?」

藤川「、、はい」


そう言って藤川は飯塚に左手を出した。飯塚は箱から取り出した指輪を薬指にゆっくりとはめる。藤川は、付けてもらった指輪がサイズピッタリである事にも驚き小さく微笑んだ。


飯塚「良い笑顔だ」

藤川「溺れたいの?」


そして、2人は綺麗な海の上で唇を交わす。


・・・


その翌日。飯塚は昨日のシュノーケリングの疲れでグッスリと寝ていたのだが。朝からバタバタと動き回る音で飯塚は目を覚ました。今朝の藤川はギャル藤川だとすぐ理解した。


藤川「ヤバい、マスカラどこやったっけ!?、、もう!せっかくの沖縄旅行なのにメイク出来ないじゃんね」


藤川はホテルのベッドの上に大きなキャリーバックを乗せて、ひたすらマスカラを探していた。すると藤川は、ふと自分の左手に光る指輪に気が付いた。


藤川「え、何コレ?、、えっ!!?何コレ指輪じゃん!!うそっ!!正次郎!正次郎!」

飯塚「あい。、、起きてるよ」

藤川「私の薬指に指輪付いてんだけど、何で?」

飯塚「由衣が昨日寝てる間に、俺が指輪をはめたんだ」

藤川「マジで!?え!?マジで!?」

飯塚「うん。これからも由衣といる時間を大切にしたいから。結婚を前提に同棲をしてくれないか?」

藤川「ふぇーーー!!!正次郎大好き!!!」

飯塚「ぐへぇっ!」


藤川の隣で横になっていた飯塚に、藤川はジャンプして抱きついた。マスカラ探しに疲れたのか、藤川はまた眠りについた。飯塚は、今日の3回目のプロポーズの為、藤川の薬指から指輪を外しておく。

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