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5話 『ミミ・ハルト・コガレイ』の願望 その5


コガレイ王国の王城『銀の居城』の謁見の間。

謁見の間にはコガレイ王国を統治する国王様と王妃にその2人が座る大きな2つのイスに、2人を見上げるように第6王女の名前は『ミミ・ハルト・コガレイ』は立っていた。

壁の側面には貴族や王女ミミと同じ王位継承権を持っている兄弟が立っている。


「お父様、お母様本日はこのような場をもうけて頂いてありがとうございます」

「ミミ…あなた大丈夫なの?」

「大丈夫ですお母様。本日はその不調が治るかも知れないことと、私が決めたことをお伝えしようと思いまして、この場をお借りしました」


ミミは自身の顔が真っ赤になっていくのが分かる。

ミットから『恋をしている』と自覚させられてから数日の間に『ローライズ』と言う男の子のことを調べさせた。

コイノ領地のハズ村で育った農家の息子で、村での評判はあまり良くなかった、けれど動物と仲良く村で唯一馬を飼っていること、馬の名前はレイホースと言う馬で幼少期に群れからはぐれている所を拾った。


色々と調べさせたが一点、気になることがあったそれは『他の村にいる村長の娘と結婚予定』と現状のミミからすると聞き逃せない情報だった。

その情報を聞いたときは、この世界に救いはないのかと世界に絶望した。

村の青年に恋をしているという、内容を相談できる相手は王女ミミには限られている。


「ミミ様は王女なので権力振りかざしてかっぱらうのはどうでしょうか?」

「そ、そんなことをしたら…嫌われませんか?」

「はぁ…最初はそうかも知れませんが、ミミ様はその誰もが美しいと思えるような美貌に大きなお胸でいらっしゃいます」

「お、お、お、お胸ぇ!?」


突然の侍女ミットの発現にイスから立ってしまう。

ミミ自身自分の胸のことなんて、考えたことは無かった。

大きいし肩は凝るしすれ違う男には見られるしと、良い思い出がないモノだ、もし無くせるのならば削り取ってやりたいと思うこともあった。

侍女ミットから言われて自分の胸に目を落とす、そこには自分の足下が見えないほどにたわわに育っている巨大な果物が2つ。


「お、男の人って。そんなにも胸が好きなのでしょうか?」

「そりゃあ、無いよりもあった方が良いでしょう。ミミ様のお胸は形もキレイですから、男の方は大変でしょうね」


この時初めてミミは自身の胸に対して『あって良かった』と思ったのである。

胸を叩くと『たわん』と反発してくる、今度からは共に戦う友として。


この前あった出来事がフラッシュバックする王女ミミは、脳内の邪念を振り払いこの戦場(好きな人ができた報告)を進んで行く。


「そうか、不調の原因までも分かっているなら次同様なことがあっても大丈夫だな」

「あなた、もう少し心配してはどうですか?」


20歳を超えている娘に過保護なのはどうなのかと言う国王様(父親)に、娘が体調を崩しているのに心配をしないなんてかわいそうでしょと怒る王妃(母親)。

その姿を見て、王女ミミは少し緊張が解けた。


「お父様っ!」

「な、なんだい。ミミ」

「私好きな人が出来ました、その人と結婚したいです!」


謁見の間に驚きの声が響き渡る。

祝福を言う兄弟に、その相手が気になる兄弟に、ため息をつく兄弟など反応は十人十色(じゅうにんといろ)だった。

問題の王妃は「その人のことを教えてください」と王女ミミの近くまで降りてきている、国王様はイスからは立たずに王女ミミを見ている。


「ミミ、その結婚したい相手とは誰だね。どこかの国の王子か?」

「いえ、違います。」


国王様はひとまず安心した。

昔約束した『王位継承権を返上する代わりに、結婚相手を好きに選ぶ』と言われたときはどうしようかと悩んだものだ。

王位継承権12位ではあったものの、能力だけを見れば継承権がある子供達の中でもトップレベル、継承権を破棄するだけで周りの兄弟達は安心と言っても過言では無かった。


今、謁見の間にいる者すべては王女ミミのそういった事情を知る者しかいない、この場で相手によって「無理だ」「許さない」と言ってしまえば王としての格が落ちてしまう可能性もあった。

突然、敵国の王子と結婚すると言われることが無くなったのだ。


「私が。こ、こ、こ、こ、恋をしている相手はですね…」


王女ミミの初々しい反応に兄弟達と国王様に王妃は笑ってしまう。

この娘も、恋い焦がれる乙女なのだと。


「コイノ領地のハズ村に住んでいるローライズという青年です」

「ローライズ…」


国王様はそのローライズという青年の名前を聞いたことが無かった。

王女ミミの妹の結婚式に国王の代理として出席を頼みその移動中に、魔物と遭遇したという報告は受けていた。

たしか、その魔物の襲撃に遭ったのはコイノ領地のハズ村周辺だったと言うことも覚えていた。


「もしかして、魔物から助けて貰ったのがそのローライズという青年なのか」

「はい、そうなのです」


そこから始まったのは王女ミミによる、恋する乙女メガネを通して着色に着色されたローライズとの物語。

壁に立っている兄弟達の中には、あまりの甘ったるさに退席するものや顔を真っ赤にする者もいた。


「ミミとは約束があるので、するなと言わん」

「では…良いのでしょうか?」

「好きにしなさい」


王女ミミは笑顔になり、謁見の間から出て行く。

残された兄弟達と国王と王妃はため息をつくしか無かった。


「あなた…良かったのですか?」

「ミミは頭が良い、約束もあるが、可愛らしい我が娘を早く結婚させてやりたいのは変わらぬ」


国王は自分の娘が『婚期逃れ金髪王女』と呼ばれていることにあまりいい顔色をしなかった。

噂を流している者を捉えようとしたが、国王が気づいたときにはもう国を超えて噂をされていた。

国とはいえやはり人の親、自分の娘の幸せを願っている。



>>>>



ローライズは馬小屋でレイホースの世話をしている。

クロとシロも近くで2匹一緒に丸くなっている、そのいつもと変わらない今に笑顔になる。

しかし、ローライズの心は晴れていなかった。


ロッカスに伝えた『好きな人が出来た』と、けれどその好きな人が見つからなかった。

村長に聞いても近くの村には金髪の娘はいないと、それでも納得が出来なかったローライズはレイホースに乗って近くの村に探しに行った。

往復1日以上かかるような村にも向かったが結果は、芳しくなかった。


「はぁ…」

「ひひん」


ローライズのため息は次第にどんどん増えていく。

森の中で会った時のことを思い出すと、顔が熱くなっている。

これを恋と言わず、なんと言うだろうか。


「ごめんな、レイホース…お前に無理させて走らせたのに…」


ローライズ自身の気持ちを伝えようとしたが、伝える相手が見つからないのだ。

唯一手がかりで聞いた噂が1つそれはコガレイ王国にいる『王女様』の話し。

けれどこんなへんぴな村の危険な森の中に、いるわけがないとローライズは考えた。

『お姫様』と呼ばれていたが、もしかすると貴族の令嬢かもとは少し思い始めていた。


ローライズはレイホースの世話を終わらせ、猫2匹と一緒に遊んでいた。

すると突然、馬小屋の扉が大きな音を立てて開かれた、その扉からは額に汗をかいているゴルンドが入ってくる。


「ゴルンドさん!?どうしたんですか、急に?」

「ローライズッ!緊急事態だ。来てくれ」


その言葉と同時に腕を引っ張られ、ローライズはゴルンドに連れていかれる。

移動中村のみんなが騒がしく、なにかあったことはローライズにも分かった。

向かう先はいつも訓練をしている村の広場、そこにはどこかでいたことがあるような馬車が立っていた。


ゴルンドの走るペースに合わせてしまったせいか、ローライズは大きく肩から息をしていた。

その姿を見て、馬車に繋がれている馬が心配そうに近寄ってくる。


「あ…はぁ…はぁ、大丈夫だから」


そう言うと心配そうに馬達は元の場所に戻っていく。

ローライズも深呼吸をする、ロッカスを見ると驚いた表情をしている。


「お久しぶりです、ローライズさん」


馬車の中から出てくるのは、キレイな服装をした女性。

ローライズは思い出す、たしかミミさんと一緒にいた女性だと、名前は確か…。


「私の名前は、ミットと申します。コガレイ王国第6王女様専属の侍女をさせて頂いています。以後お見知りおきを」

「どうも…」


自己紹介を済ませた侍女ミットは馬車から降りて、近くに控える。

ローライズの頭はぐちゃぐちゃになっていた、確かにお姫様と呼ばれていたが、隣国の王国の王女だとは思っていなかった。


そりゃあ、近くの村を探しても見つかることは無かった、仕方ない事だ。

身分も違う、叶わない恋、ローライズの人生初めての恋は終わってしまったと。

最後に自身の気持ちを伝えようと、そしてこの気持ちに整理を付けようと思った。


「ど、どうも…お久しぶりです。ローライズさん」


声のする方を向くと、馬車の中から1人の女性が降りてくる。

そこには金髪の女性がいた、心臓が跳ねる、顔が熱くなっていく、もう会えないと思っていた。

「お久しぶりです」と言うおうとした思考よりも身体が動いた。


ローライズは王女ミミの手を握り、叶わない気持ち、思いを告げた。


「好きです」


周りは突拍子も無いローライズに行動に驚きを隠せなかった。

侍女ミットはあっけにとられたような表情、ロッカスは何をやっているんだと呆れている表情、ローライズは思いを告げもう未練はないと叶わない恋でも気持ちを告げることが出来て満足している表情、王女ミミだけが下を向いて震えていた。


「ずるいです…」

「な、なにがですか?僕はもう、自分の気持ちを…」


ローライズは自身のしている行動に冷や汗を流す。

王国の王女さま相手に、敬礼をせずにしかも手を取って『好き』とまで伝えてしまっている実際問題、気分が悪いなどと言ってその場で殺されてもおかしくも無い愚行(ぐこう)

けれど、ローライズは気持ちを伝えられて死ぬなら本望だと、すぐさま諦める。


「私が…伝えようとしていたのに…」

「それは、んぐぅ!?」


王女ミミは、ローライズの頭を掴んで無理矢理口づけをした。

計画通りと安心した表情をするのは、侍女ミット。


このハズ村に来るまでに、王女ミミから何時間も相談を受けていたのだ、『もし、断られたらどうしよう』や『好きな人が他にいると』言われたらと。

そこで作戦をいくつか立てた、権力を使って無理矢理だったり、その美貌を使ってのお色気作戦だったりと、色々と考えていたがまさか両思いだと思わなかった。


そして先に相手側から告白をされるとも思ってなかった、まぁ2人がいいなら別にいいやとそれは作戦通りだといってもおかしくないだろうと、考えるのを辞めた侍女ミットだった。


「ぷはぁ、どうですか?私のファーストキスのお味は?」


突然のことで、焦点が定まっていないローライズを見て王女ミミは再度口づけをする。

頭を掴んでいた手はどんどんローライズの身体を引き寄せ、絡みつく。


「キスって、いいものですね…癖になりそうです。ローライズさん先ほどのお気持ちなのですが…」

「は、はい」


ようやく意識が戻ったローライズの口の周りには、王女ミミと交わした熱いディープキスの涎でてらてらになっていた。


「私も、ローライズ様のことが好きです!結婚してください!」


2人は自分達の気持ちを確かめ合うように再びキスをする。

白馬に乗った農家の息子は魔物から助けた女の子。いや、王女様と結婚したのだった。


『婚期逃れ金髪王女』と言われていた1人の女の子は、ようやく自分だけの王子様と出会うことが出来たのであった。



                                    おしまい

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