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3話 『ミミ・ハルト・コガレイ』の願望 その3


「んみゃ?」


ローライズはいつの間に眠っていた、起きると目の間にレイホースの顔がありとりあえず撫でる。

寝る間にいた小鳥たちは、いつの間にかいなくなっていたみたいだった。


「ごめんよ、レイホース寝ていたみたいだ」


寝起きでなまっている背を伸ばす。

前に身体を倒したとき、レイホースの足下が目に入る。

なぜか、足下が一部赤く染まっていた。

「な、なんで」と近寄って足を見ていると、レイホースは自らローライズが見やすいようにと足を上げる。


「何この血…けどレイホースから出ているわけじゃ無いのか…心配したよぉ…」


レイホースが『ごめんさない』と言わんばかりに鳴きながら顔を近づけてくる。

その顔を撫でてローライズはレイホースの背中に乗る。


「もう帰ろうか、遅すぎると母さんに怒られちゃう」


帰ったらもしかすると、叩かれてしまうのではないかと考えると少し帰るのが嫌になった。

レイホースの背中に乗って、もう行こうと指示を出そうとしたときだった、草原の奥の方が騒がしと感じた。

叫んでいる声か?と思い耳を澄ますと、何かが戦っているような音だった。


この地域で戦うモノと言えばそれは『魔物』しかいない。

ローライズが住んでいる村では動物は罠にて狩猟(しゅりょう)する、討伐をしようとしても警戒心が強すぎてろくな結果にはならないからだ。

罠を作ってそれにかかるのを待っていた方が、罠を設置するときに手間がかかるがそれ以外はない。


「ぶるぅぅ」

「ど、どうしよう…と、とりあえず村に帰ってみんなに伝えた方が良いよね」


ローライズの意思をくみ取ったレイホースは、ここに来るときに通った森の中に向かって…走らなかった。

戦闘が行われている、場所と集団に向かって走り出す。

背中に乗っているローライズは突然のことで声をだして驚く。


「な、なんで!?レイホースッ?」


レイホースは物凄い早さで戦闘をしている集団に突撃する。

やはり『ゴブリン』と戦闘をしていたらしい、鎧を着ている人達がゴブリンの多さに押されてようだった。

そんな状況に突如現れた白馬に乗った男が乱入してきたので、騎士達全員は目を丸くしてローライズのことを見ている。


「ちょっとっ!?レイホース…うわっ」


レイホースは前足2つ上げる、背中に乗っているローライズはしがみつくことで精一杯だ。

ローライズに突然の浮遊感(ふゆうかん)が襲い『ドスッ』と『グチャ』と音がなる。

恐る恐るレイホースの前足を見てみると、踏み潰されている状態のゴブリンの死体が転がっている。

レイホースは華麗なステップで他のゴブリンに近寄って再度前足で踏みつけ、後ろ足で蹴り飛ばすとゴブリンの上半身が消し飛んだりする。


レイホースの身体はゴブリンの返り血で赤い斑点が大量に出来ていた。

そのままレイホースは、ゴブリン全てを蹴り飛ばし蹂躙(じゅうりん)した。


「うっぷ…」


レイホースが動いている間ずっと、背中に乗っていたローライズは何度も浮遊感に襲われ、とてつもない気持ち悪さに襲われていた。

耐えきれずにレイホースから急いで、降りてそのまま嘔吐する。


「た、助かりました!あなた様が来られなかったらともっと被害が出ていました。助けていただいて申し訳ないのですが、これにて失礼します」


ローライズは騎士に最低限の感謝を述べられて、そのまま騎士達は森の中に入っていた。

レイホースが勝手にしただけなのにと思うローライズ。

そのまま背中にのって帰ろうとする、帰ったら身体の血を拭き取って上げないといけないなとしか考えていなかった。


「それじゃあ、帰ろうかレイホース。道順はまかせるよ」

「ヒヒン」


分かったと返事をするレイホースは『パカラパカラ』と鳴りながら森の中に入っていく。

母さんには森の中に入らないでと、口酸っぱく言われているが、レイホースはこの森の中を通りたがるので(だま)って通っている。

森の中を走っていると、いつもの道順からかなり離れていることが分かる。


「レイホース?いつもと違うけどなんでぇ!?」


ローライズが話しかけている最中に、レイホースは『グン』と方向変えて向かっている方向とは別の方向に走り出す。

倒れている木や生い茂っている草むら全て飛び越えレイホースは優雅に早く進んで行く。

背中に乗っているローライズはしがみつくのに精一杯で内心は『気持ち悪い』で気を失いそうだった。


「ヒヒーンッ」


急な浮遊感と何か踏み潰したかのような『グチャァ』と言う音を聞いて、ローライズは自分の頬を強く叩いて、気を失いそうなのを止めさせる。

止まったレイホースを落ち着かせる為に、降りようと前を見るとローライズの動きが止まる。


目の前には、金髪の髪の毛に美しい顔立ちに傷だらけの服装をしている女性。

村では見たことがないあまりの美女にローライズは言葉を失うが、魔物に襲われているのは状況で分かっていたので、無理矢理声を出す。


「大丈夫ですか?」

「え、えぇ…ありがとうございます…いえ!私よりもミットの方を!」


女性が向いた方向には、1人の女性がゴブリンと戦闘している最中だった。

いつゴブリンから大きな攻撃を受けても、おかしくない状態で危機迫っている。


「レイホースッ」


いつもローライズならびびって逃げている場面だが、目の前にいる女性に少しでも良いところを見せようとしたのか逃げずにレイホースに指示を出す。

レイホースは『待っていました』と言わんばかりにゴブリンを前足で踏み潰す。


「大丈夫ですか?大きな怪我などは…」


レイホースから降りて襲われていた女性を見ると、細かい傷自体は多く見えるが大きな傷はなかった、一安心する。

2人は近づきお互いが無事だということ確認しあう、2人は緊張の糸が途切れたのかその場に座り込む。

短いスカートで地面に座り込んでいるせいか、健康的な太ももが目に入ってしまいローライズは慌てて目線をそらす。


「ありがとうございます、た、助かりました…もうすこしで…2人とも危ないところでした」

「本当に大丈夫ですか?ミット。にしても助かりました…私の名前はミミと言います…こちらはミット。あなた様のお名前を聞かせてください」


女性の表情は若干赤みがかかっている、ローライズの心音を大きくはねらせる。

1つ咳をして深呼吸をする、初めて会った美人に変な印象を持たれたくはない。


「ぼ、僕の名前は…ローライズといいます…近くの」

「お姫様~どこですか?」


森の中に声が響く、ミットの表情は柔らかくなる。

ミミの手を握って声のする方へと今すぐにでも向かいたい様子だった。


「ミミ様、今すぐ護衛と合流しましょう。早くお城に戻るべきです」

「で、ですが私は…」


ミミと目が合うローライズ、心音はさらに加速して自分の顔が真っ赤になっていく。

けれど、ローライズは魔物が現れたことを早く村に伝えに行かないと行けない。

ローライズは下唇を噛む。


「ミミさん、お迎えが来ているみたいなので僕はここで失礼します」


レイホースの背中に乗って移動しようとするが、動かないその場に止まったままだ。

ローライズは「もういいんだ」と背中を触ると、レイホースはしぶしぶ動き始める。

最後にミミが何かを言っていたように聞こえたが、ローライズの耳にはレイホースの走る音でなにも聞こえなかった。



>>>>



「はぁ…」


王女ミミは大きなため息をついていた。

つい先日、妹の結婚式に向かう際に魔物と遭遇してしまい、その場はローライズという男性の助けによって無事に切り抜けることが出来た。

何人かの護衛を犠牲(ぎせい)にしてしまい、コガレイ王国の王城『銀の居城』に戻ることが出来た。


王城に帰ると王様と王妃に心配されてしまい、無事に戻れたことに涙を流しながら喜ばれた。

もちろん妹の結婚式に出席は、出来なかった。


王女ミミは大事をとって、自身の部屋で休養(きゅうよう)している。

決して部屋から出ずに傷を癒やしなさいと、王妃から釘を刺されてしまい部屋から出ることが出来なくなっていた。

王妃は王女ミミの身体を見て「嫁入り前の身体なのに傷ものにと…」と泣かれてしまい、とても申し訳なくなった。


「はぁ…」

「あの、ミミ様そうなんどもため息をするのはやめてください。こちらまで滅入ってしまいます」


ガシャンと王女ミミの目の前にある机に、荒々(あらあら)しくティーセットを置く。

侍女ミットが部屋に入ってからことあるごとに、ため息をつき続けている。

魔物に襲われてからずっと王女ミミはため息ばかりで、ことあることにため息や窓から外を見ている、と心ここにあらずといった感じだ。


傷も癒えて1度だけ王女としての業務を再開した際も、王女ミミだとしないようなミスを連発し国王様からは、魔物に襲われてしまった心の傷が治っていないのではと王女ミミの意思に反して半ば無理矢理、部屋に閉じ込められている。


「ごめんなさい…」

「もう、いい加減元気になってください」


侍女ミットも国王様が話していたように、魔物に襲われてしまい心に傷を負ってしまったのかと思っていたが、様子を見ているとそういった感じでは無さそうだった。

ため息をついている時では無いが、窓から外の風景を見る際は王女ミミの顔は若干赤みがかかっていて何かを考えている乙女のような風貌(ふうぼう)だった。


とても長い間、王女ミミの近くで働いている侍女ミットも見た目の良さには、もう慣れたはずだったのが、窓の外を見ている王女ミミの姿を見てしまった時は同性なのに顔を赤くしてしまった。


用意したティーカップにお茶を入れる侍女ミット。

王女ミミは休憩をする際は必ず、侍女ミットが入れた紅茶を嗜み、2人でたわいもない会話をする、これが1番好きな時間だった。


「こうも部屋にいると暇になりますね」

「確かにそうですね、ミミ様が仕事中に集中力を切らされるので国王様が身を案じて」

「分かっています…けどなぜかいつもなら出来るはずのことも、出来なくなってしまっていて…」


侍女ミットによって入れられた、紅茶入りのティーカップで口まで持って行く。

「ふぅ…おいしい」と口から零れる、侍女ミットはその言葉を聞いて笑顔になる。


「しかし、ミミ様このままだといけません」

「なぜですか?ミット」

「このままだとミミ様の仕事が溜まっていく一方です、他の方が出来る仕事は処理をお願いしていますが、ミミ様にしか出来ない仕事は絶賛お茶を飲んでいる間も溜まっているのです」


侍女ミットは大事なことなので2回言い放った。

早く前の状態に戻らないと机と一緒に過ごす時間が延びるぞと、その伝えたい意味を王女ミミは分かっているので何も言えずに紅茶をすする。


「でもなんで急にそんな状態になってしまったのでしょうか?」

「私も分かりません…けれど魔物に襲われてしまい…ローライズという方に…」


そこまで話した王女ミミの顔は真っ赤だった。

真っ赤な顔に綺麗な金髪が栄えていてその姿に、侍女ミットはつい見とれてしまう。


『婚期逃れ金髪王女』こと王女ミミはとある作品に心酔している。

それは白馬の王子様が女の子を助けて結婚をする、コガレイ王国に昔からある恋の物語。

この話のように恋をしたいと願っているのにもかかわらず、21歳の人生の中で1度も恋愛をしてこなかったのである。


そしてその『恋愛をした事が無い』が今の状況を作り出している原因で、それが今現在進行形で出ているのだ。

『恋愛をした事が無いので、いざ恋に落ちても本人がそのことを分かっていない』と本人に自覚がないのでたちが悪かった。


『婚期逃れ金髪王女』こと王女ミミは、婚期を逃していること以外はとても優秀で見た目も良い。

彼女に任されている仕事も多く、彼女が休むだけで王城のどこかに支障が出る。


優秀過ぎるせいで、自分の事をあまり相談しないと変な癖がついてしまっていた。

例えば『激しい動悸(どうき)で体調を崩す』などのことは相談するが『仕事に集中できない』や『ため息ばかりでる』や『顔が熱い』や『動悸が激しい』と言ったモノは自分で勝手に原因を考えて改善(かいぜん)してしまう。


「ローライズさまですか…」


侍女ミットは声に出して復唱すると、さらに王女ミミの顔が深紅にそまる。

ん?これはもしや…侍女ミットはあのときのことを詳しく思い出す。


あのときはミミ様の実の妹の結婚式に向かう最中に起きた事件。

魔物に襲われてしまい、少しでも生存率を上げそうと近くの村に逃げ込むことに決めた。

けれどその向かう途中に。魔物に見つかってしまい危険になってしまう。

そのところを『ローライズ』さまが白馬に乗って助けくれた。

そのあとに護衛の人と共に王城に戻ってきた。


長い間使えている侍女ミットは、王女ミミ自体の恋愛経験が無いことは知っている。

そもそも王族が恋愛経験をした方が珍しいことも知っている、けれどこのミミ様の異常(いじょう)行動(こうどう)に頬を赤く染めている現状そして『ローライズ』さまの名前を出すだけで起きる過剰(かじょう)反応(はんのう)


「ミミ様。もしかして…」

「なんでしょうか?ミット」

「ローライズさまに恋をなさっているのでは?」


王女ミミの口から、大量の紅茶が吹き出される。

侍女ミットは布で王女ミミの口から吐き出された紅茶を拭きとり、表情を見ると真っ赤に熟しているトマトのように顔を染めて「ななな」と声を出している王女ミミの姿があった。


侍女ミットは空いているティーカップに紅茶を注ぐ、王女ミミはすぐさま口に運ぶ。

その手は尋常無いほど震えており、口に運ぶ前にはその手の震えによって大量こぼしてしまうほどに。


「こ、こ、これが恋…?風邪(かぜ)ではなく?」

「ミミ様は、恋愛などはしてこられなかったので、気づかなかったと考えると腑に落ちます」

「そ、そうなのですか…」


震えすぎて無くなってしまったティーカップに、再度紅茶を入れる。

今度は震え自体が少なかったので、零れる量は少なく半分程度残った、それを飲む王女ミミ。

一杯分と半分を震えるによってこぼしてしまっているので、王女ミミは紅茶でかなり濡れていた。


流石にこのままだと、本当に風邪を引いてしまうので着替えをさせる。

王女ミミは自身で1枚1枚脱いでく、全て脱いで濡れているところを侍女ミットは拭いていく。

王女ミミの身体は美しい、身体に備わっている2つの立派な山脈に引き締まっている身体と女性らしさもある曲線美に、先日受けてしまった小さな傷はもうほとんど治っていた。

手慣れた手つきで下着に衣類を渡していく、他の王族ならば着替えを侍女にさせる者もいるが王女ミミは自分でしたがる。


「お茶は、やめましょう…また服が濡れてしまいます」

「そうですね、直します」

「リット…私、少し寝ます」


そのままベッドの中に入り込む王女ミミ、寝られるなら寝間着にお着替えをと言おうとしたが侍女ミットはそこまで無粋(ぶすい)では無かった。

王女ミミの入ったベッドからは自身が恋をしているとようやく理解した、1人の乙女の悶絶(もんぜつ)のような声が聞こえるからだ。

気を利かせた侍女ミットは部屋を出て扉近くで待機する。


分割していますが本日中に全て投稿します


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