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1話 『ミミ・ハルト・コガレイ』の願望 その1


コガレイ王国の王城『(ぎん)居城(きょじょう)』の王女の寝室。

そこには大きなベッドに寝転がる1人の少女と、メイド服を着た侍女(じじょ)が少女の近くに立っていた。

寝転がっている少女の腕の中には1冊の本が大切そうに、抱きかかえられていた。


「私の…王子様…」


本を抱きかかえている少女は、コガレイ王国の第6王女『ミミ・ハルト・コガレイ』。

この世界の中でも有数の軍事力(ぐんじりょく)を持つ軍事(ぐんじ)国家(こっか)の『元王位(もとおうい)継承権(けいしょうけん)第12位』で、今は本に夢中(むちゅう)の王女様。


ミミは自身をこの国の王として、兄や姉に比べても見劣りすると自分自身で分かっている。

なので、ミミは早々に自身の王位継承権を返上(へんじょう)し、兄弟での王位継承戦争から降りた。

現国王の父親に現王妃の母親2人からも、「それでいいのか」と何でも聞かれた。

しかし、ミミ自身の意思は決まっていた。


「兄様や姉様と争う気はございません、私にこの国を導くような度量(どりょう)もございません。私がやらない方が、この国のためと分かっています」


ミミは自身が自身に王位を継承する際に、降りかかってくると予想できるその危険を振り払いたかった。


「本当にいいのかい?返上したモノは、返すことはできないよ?」


実の父親である、コガレイ王国の国王に発言する。

ミミには、幼いころからの夢があった。

これさえ叶えれば王女という肩書きや、その立ち位置すらも捨てる覚悟があった。


「その代わりに、父様と母様に1つお願いがあります」

「なんだい。ミミ言って見なさい」

「私の結婚(けっこん)相手(あいて)は、私が決めたいと思っています」


王族の家族は他の国との関係を作るために嫁に出したり、他の有数な貴族や国の嫁に迎えたりと、関係を持つためやその関わりを太く切れないようにと使われることが多い。

結婚は政治(せいじ)戦略(せんりゃく)として使われることが多い。

実際に、ミミの兄弟の何人かはもう嫁に出ていたり、嫁に迎えていたりしている。


同様にミミも嫁に出される可能性が非常に高かった。

王位継承権自体はあるものの、順位は12位と低い。

なれるか分からない、しかもなれないほうが大きい権利などいらない、それなら自身の夢を叶えるために使おうと決めたのだ。

運良く王女ミミの兄弟には優秀な人材が沢山いたので、とくに心配も無かった。


「なので王位継承権を破棄(はき)する代わりに結婚相手を決めさせてくさい」


王女ミミの人生で初めてのわがまま、最初の1回。

そんなわがままを言える立場で無いのは分かっていた、なので交換条件を出した。


そんな王女ミミわがままを国王は許した。

その時点で『王位継承権12位ミミ・ハルト・コガレイ』の王になる道は途切れた。


場面は切り替わって冒頭に戻る、王女ミミはベッドにだらしなく寝ていた。


「ミミ様…なんどもそうやって、本と一緒に寝るのはお止めください」

「いいじゃない、ミット…私は聞いたわ。枕元に本を置くとその夢を見ることが出来ると」


王女ミミと仲良く話す、1人の侍女が諦めたように深いため息をする。

この部屋にいる唯一の侍女、その名前は『ミット』年齢は26歳で王女ミミが小さいときから、専属の侍女を務めていて、数少ないミミの夢を知る1人でもある。

侍女ミットは、王女ミミが持っている本を無理矢理(むりやり)奪い取る。


「貴重な本をそうやって使われてしまうと、よだれや変に型が着いてしまうでしょう?」

「分かっています…けれど、いつになったら現れるのかしら。私の王子様」


ミミの夢は王子様との結婚すること、王子は王子でもただの王子では無い。

王城の図書館に保管されている、題名は『白馬の王子様』という1冊の本。

この本の内容は1人の女の子を白馬に乗った1人の王子様が助け、2人が恋に落ち結ばれるという恋の物語。

この物語自体は、コガレイ王国でもっと有名な物語で王女ミミが心酔している物語でもある。


この世界で王子様というのは珍しく無い。

コガレイ王国以外にも沢山の国はある、関わりがない国もまだ沢山存在する。

白馬も探せばいないわけでもない、極端な話しをすると他の国の王子様が白馬に乗って、王女ミミを助けてしまうと物語と同じ状況になるのだ。

しかし、王女ミミはそれでは決して満足しなかった。


「はぁ…早く現れないかしら…」

「ミミ様が国王に継承権を返上してから、もう何年も経っていますものね」


そんな台詞を入れてしまい王女ミミは『うっ』とうなり、心に鋭い針が刺さる。

王女ミミが国王に「結婚相手は自分が決める」と言い放ってから、もう5年も年月が経ってしまったのだ。

年齢も21歳になり、この世界での結婚(けっこん)適齢期(てきれいき)である18歳を超えてしまっている。


「王妃様も心配してお見合いをセッティングして下さっていますし」

「私が自分で選ぶと言っているのに…」


とぶーたれてベッドの上で抗議をする、王女ミミを見る侍女ミット。

我が娘が本に心酔して王子様を見つけるまで結婚しないと、言ってしまえばどんな親でも心配もするのではと思ってしまうが、ミットの口からはとても言えなかった。


「ミミ様、お着替えをなさってください…そろそろ移動しないと間に合わなくなってしまいます」

「分かっています」


ミミの妹である第7王女の結婚式が開かれる、その結婚式に参加するために移動を開始する日なのだ、第7王女の結婚相手は別国の王子様。

侍女ミットは思う、妹に結婚を先超されてしまうとは…おいたわしやと。



<<<<



コイノ領地にあるハズ村。

1人の青年が1匹の馬を手入れしていた。

村外れに住む家に住んでいる、どこにでもいる特徴の無いただの青年が1人。

青年が手入れをしている馬は真っ白で、とてもキレイな馬だったのだ。


青年の名前は『ローライズ』村で農業を営んでいる農家の長男で独身。

他の人と比べて力も強くない。

他の人と比べて体力も無い。

他の人と比べて身長も高く無い。

他の人と比べて顔も良くない。

唯一他の人よりも秀でているのは1つのみ、『動物に好かれやすい』ただそれだけ。


ローライズは人生で1度も動物に襲われたことが無かった、初めて会う動物や家畜(かちく)で飼われている動物全てに懐かれた。

久しぶりに会う動物からは、今生の分かれをしたあとの再会並みのリアクションまでさせてしまう、人誑しならぬ動物誑しの青年。


今日も日課の農業を終わらせ、家で飼っている動物たちの世話をする。

家で飼っているのは農業で助けて貰っている牛が3匹と、家に勝手に居座っている猫が2匹と、ローライズが飼っている馬が1匹合計6匹をローライズは世話をしている。


牛は畑を耕したり、牛乳を搾ったりといろんな役目がある、猫はローライズが知らぬ間に居着いていていた。

馬は昔群れからはぐれている所を助けてから懐かれてしまい、そこから世話をしている。

飼っている動物の中では、子馬の時から世話をしているので1番の古株。


「レイホース、くすぐったいって…」


日課のブラッシング途中に、馬の『レイホース』にペロリと顔を舐められる。

真っ白な身体にキレイな毛並みでローライズが、毎日甲斐甲斐(かいがい)しく世話をしているおかげか、その風貌は王様や貴族が乗るような名馬の雰囲気を出している。

ローライズはレイホースの顔撫でると、さらに顔を押しつけてくる。


「よしよし…かわいいぞぉ…」


馬を愛でていると、馬小屋に2匹の猫が入ってくる。

真っ黒な猫が『クロ』に真っ白な猫が『シロ』この2匹は一緒に行動することが多いので兄弟か姉妹だとローライズは勝手に思っている。

首の下を撫でると『ごろごろ』と鳴いてくれるが、撫でていないもう1匹の方から嫉妬(しっと)に駆られたかのように、オレも撫でろと言わんばかりに手に抱きついてくる。


「ローライズ!あんた、もうすぐ村で訓練だろ!」

「や、やば!忘れてた」


突然馬小屋に入ってきた母親に叱咤されて、ローライズは急いで馬小屋を出る。

コイノ領地のハズ村は定期的に、村の若い青年と力が余っている男達を村の中心に集めて訓練をしている。


コイノ領地ハズ村周辺には多く出現しないが、それなりに魔物が出現する。

周辺で出現する魔物のほとんどは、緑色の皮膚の小さな魔物で『ゴブリン』と呼ばれている。

そのゴブリンは村の家畜や村の農作物を狙ってか奪ってくる。

それを退治するのは村の男の仕事で、その時にためにみんなで対魔物ようにと訓練をしている。

そんな大切な訓練をローライズは忘れてしまっていた。


「ローライズッ!遅いぞ」


遅れてしまったせいか、ローライズは怒られてしまう。

怒鳴ったのはハズ村、村長の息子名前は『ゴルンド』訓練で指示を出している青年。

着ている服の上からでも分かるほどに、筋肉質な身体で村1番の実力を持っている男だ。


「すいません…ゴルンドさん…はぁはぁ…」


ローライズとゴルンド2人の見た目は大きな差がある。

身長の差や筋肉質な身体や体力も比べモノになら無いほどに差があるが、実はこの2人同じ年に生まれた幼馴染(おさななじ)みで、幼少期に遊んでいた仲だった。


ローライズの身体は弱く、この村ではあまり戦力とは思われていない。

それに比べてゴルンドは、天性の身体の強さに女性に好かれるほりの深い顔立ち、さらに村長の息子という立場もあり周りは2人を比べた。


そんな2人は幼少期から何事も比べられた、ご飯の食べる量に女の子の評判など数えるときりが無いほどに。

そんな状況にいたゴルンドはどんどん評判が良くなっていった、女性と結婚できる歳になった途端(とたん)、村にいた仲が良かった女性3人と結婚した。


「お前は、身体が弱いから参加したところで村の戦力にはならんのだがな…」

「そんなこと言わないでください…」


ローライズ自身は分かっていた、自分の力がこの村の戦力にはならないことを知っている。

ゴブリンとかと戦うよりも動物や農業をしている方が合っていると言うことも。


「まぁいい、木刀をもって素振り練習をしていろ」

「は、はい…」


ローライズは言われた通り、1人で素振りを始める。

残っている木刀は身体に合わないモノばかり尚且つ重いものばかり、振るたびにローライズの身体が大きくふらつく。

数回振っただけでバランスを崩して尻を地面についてしまう、そのすがたをみたゴルンドは大きな深いため息をする、そのため息はローライズの耳にも聞こえてしまうほど大きかった。


ローライズは周りを見ると、自分よりも歳が若い男の子も練習をしている。

その姿を見てさらに肩を落としてしまう。


「ローライズお前もう帰って良いぞ」

「け、けど…」

「もういい」


ゴルンドの最後の一言にローライズは言い返すことが出来ず、自分の家に帰ることにする。

帰って行く姿をみて笑うヤツが現れる、その姿をみてロッカスはさらにため息をつく。


「ゴルンドさん、質問良いですか?」

「あぁ良いぞ」


ゴルンドはローライズの背中を見るのをやめて、質問をしてきた青年の元へと向かう。


帰れと言われてしまい、ローライズはしょぼくれながら帰り道を歩いていた。

自分自身が戦うのが得意じゃ無い、身体も強くないのも知っている。

ローライズは自分自身が嫌いになってしまいそうだった。


「はぁ…早くに帰ったら怒られちゃうな…」


早くに帰ると母親から怒られる。

「また、あんた訓練途中で帰ってきたね!?」となにも言わずに叩いてくる。

ローライズも言い返そうとするが、帰ってきていることは真実(しんじつ)なので、さらに叩かれるので何も言わない。


めそめそと道を歩いていると、近くの草むらから猫の声が聞こえる。

声の先を見てみるとそこには『クロ』と『シロ』が2匹そろってじゃれ合っていた。

ローライズの姿を見た途端、起き上がり軽やかにローライズの左右の肩に乗ってくる。


2匹の毛並みが顔に当たっているので、顔がとてもくすぐったい。

『ごろごろ』とクロとシロが鳴っているのが、ローライズにとってはとても心地良かった。


「シロォ…クロォ…聞いてよ…」


ローライズは肩にのる2匹に相談しながら道を歩いて家に帰っていく。

2匹はローライズの言葉を理解しているのか、ローライズの言う言葉に『にゃ~』や『にゃ』と返事をしてくれる、その姿は会話しているようにしか見えなかった。


ローライズは家に着くも、このまま家に入ってしまうと母親に叩かれるのは分かっている、ので少しでも逃れようと思いそのまま帰らずに馬小屋に向かう。


馬小屋に入るとレイホースがローライズを見て『ブルウッ!』とうれしそうに鼻を鳴らす。

「どうどう」とローライズがなだめてようやくレイホースが冷静になって落ち着く。


「今日は少し早いけど、お散歩行こうか」


ローライズの言葉に興奮するレイホースをなだめながら、連れて馬小屋から出る。

周りをみて子供や村の人達がいないことを確認して、一安心する。


レイホースを村の中を走らせると、見た目の珍しさか村の子供に高確率で捕まってしまい、そのまま長時間レイホースと遊んでしまうので、村の道からではなく近くの森の中を行く。


レイホースはローライズからの愛情は嬉しがるが、他の子供とかに見られたりするのは良くは思っていないのか不機嫌(ふきげん)になる。

けれど、子供はお構いなしに触ったり撫でたりする、遊んでいるところを無理矢理(むりやり)やめさせるのは申し訳ないので、ついつい遊ばせてしまう。


レイホースの身体は真っ白でその毛並みはローライズがブラッシングなどで整えているため、純白…いや光の当たる加減では白銀にみえることもある。

そのせいかただの村の中を歩くと目立って仕方が無い、しかも村で馬を飼っているのはローライズのみなので村のみんなは、物珍しさで集まってくる。


レイホースの背中に乗ろうとするも、ローライズは身長が高く無いので毎回乗るのが大変だ。

その姿を見かねてレイホースはいつも、自ら膝を曲げて乗りやすいように低くする。


「いつもありがとうね、レイホース」


レイホースの背中に乗ると、立ち上がって森の中に入っていく。

森の中と言っても木はそれほど密集してはいない、レイホースは上手く木の間を通って森を華麗に抜けていく。


森を抜けると、そこには花が一面に咲いているキレイな広場が出る。

レイホースはこの広場がお気に入りで、ローライズが「○○に行って欲しい」とかの指示が無い場合の散歩だとこの場所に必ず来る。


背中に乗っているローライズを下ろすと、レイホースは広場に生えている雑草を食べ始める。

ローライズもレイホースがここの雑草や花が好きなのが分かっているので、何も言わず好きにさせる。

丁度近くにあった木にもたれかかり、そのままレイホースを見ている。


「レイホース~遠くに行き過ぎちゃだめだよ」


ローライズがそう言うと、レイホースは近くまで移動して雑草(ざっそう)を食べ始める。

気がつくと周りには、沢山の小鳥達が集まってローライズを囲んでいる。

手を出すとその指先に小鳥が止まる、心地の良い小鳥たちのコンサートが開催される。


そのコンサートの心地の良さに、ローライズはどんどん眠たくなっていく。

そして、そのまま眠気に負けてしまい寝てしまう。


分割していますが本日中に全て投稿します


久しぶりのリハビリを兼ねて書いてみました

読んで面白かったと思えてもらましたら↓から★★★★★の評価を入れてもらえるうれしいです

感想なども書いて頂けたらうれしいですよろしくお願いします

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