流れ星にお願いを
「流れ星が消える前に三回願いごとを言うとかなう、か」
今夜流星群がやってくると、学校で話題になっている。なら私も、とベランダで準備を始める。
天気予報でもしばらく晴れると言っていたし、確実に流れ星は見えると思う。
準備を終え、空を眺めていると流れ星が見え始め、私は願いごとを口にする。
(お茶はいかが。お茶はいかが。お茶はいかが)
私が流れ星にお願いするのは、一緒にお茶をしてお話すること。どんなお話をしてくれるのだろうと思い、ワクワクしながら待っていると、空から一人の男性がベランダに降り立った。
「やあ。こんばんは。僕は流れ星の妖精だよ」
「こんばんは。座って。お茶の準備はできているから」
「ありがとう。気持ちだけで十分さ」
「どうして。流れ星って願いをかなえてくれるものでしょ?」
「そうさ。だから、気持ちだけもらっていくよ。それじゃあ、元気でね」
流れ星の妖精はそう言うと、空に帰っていった。
「行っちゃった…お話聞きたかったのになあ」
ふと見ると、コップに注いだお茶は、いつの間にか飲み干されていた。
「くしゅん」
この時期の夜は、かなり冷える。
「早く温かいお部屋に戻ろう。風邪ひいちゃうわ」
私はお茶を部屋に持ち帰り、夜空を眺めながら飲むことにした。
「元気でね、かあ」
流れ星の妖精さんに言われた、最後の言葉を思い出す。
「それはこっちのセリフなのに……みんなのお願いをかなえているのだから、少しぐらい休んでも良いと思ったのに」
そのためにお茶を準備して、お話ししようとした。
「まあ、いいか。星が降る、きれいな夜だもの」
私は夜空を見ながら、流れ星さんが元気でいることを願った。