表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/35

乗り物(ドッグスレッド)2

30話記念でアートワークがあります

 もとから作ってあった分と、ブリアナさんが作ってくれた分の縄をまとめ、ぐいぐいと引っ張って強度を確かめる。

                                  

 「うん、とてもよく出来てる。この時間の無い時にこれだけ作ってくれるとは、さすがだよブリアナさん。」

「そ、そんなことはない。です。」

                    

欲しかった仕事以上の出来栄えに気をよくして褒めると、ブリアナさんは恥ずかしそうに俯いた。

年相応の反応に見えてなんだかホッとする。

こういうのはどの世界でも同じなのだろうな。

                       

褐色の顔色も出会った時よりはいい気がする。

回復が早いのはバルバ族の特性なのかブリアナさんがすごいのか、どちらにせよたくましい。

この分ならブリアナさんの体調を気遣って出発を遅らせる必要はなさそうだ。

                             

「よし、じゃあこのソリを引く犬をだすよ。6頭くらいでソリを引ければいいんだけど。」

                           

日も暮れて焚火の明かりが目立ってきた。

辺りには虫の声と、ブリアナさんの気配だけがある。

ソリの近くに詠唱する本(スペルブック)から毟りとったスクロールを用意する。


使用する魔術は高位土魔術『ゴーレムの作成:番犬』だ。

本来は守護用に使う犬の姿をしたゴーレムらしいのだが、まあソリくらい引けるだろう。

ゴーレムには核となる魔力物質が必要となり、それによって品質も左右されるらしい。

今回は魔術を発動させる補助用のランクEの魔力結晶とは別に、ランクDの魔力結晶を用いてみる。

作り出した後は、その核の魔力と月と星の魔力を吸って動くらしい。

                     

魔力結晶を補助に用いても……はたしてどれくらい魔力を吸われるだろうか。

スクロールは7つあるが(この魔術では6ページ1セットなのでページ数で言うと42枚もある)、雷竜ロールオブサ点睛(ンダードラゴン)と同じくらいの魔力を吸われるのであれば3~4つの使用でこちらの魔力が尽きてしまいそうだな。

                       

                        

「いくぞ、ゴーレムの作成;番犬(クレイハウンド)

                           

                           

自分と名前が似ていて親近感がわく魔術を発動させる。

スクロールが緑色の炎で燃え、書かれていた文字や幾何学的な図式だけが中空に浮かんだ。

体からグングン魔力が吸いだされ、文字へと注ぎこまれていく。

辺りの土が中空の文様へと引かれていき、ゴーレムをかたどっていく。

しかし……これはいかん、魔力を半分以上持っていかれている。

                 

思わずくらりとして片膝をつく。

予定よりも消費魔力が多い、本当に魔力結晶からも魔力を吸い取ったのか?

けだるい中、首だけあげると、そこには完成したゴーレムがあった。

                      

猟犬種(ハウンド)の名を冠すだけあって、大きく細長い体をした犬だ。

四肢や首もとても長く、あまり日本では見ないシルエットだ。

体は土で出来ていて赤っぽく、目は黒い水晶体、歯はよく尖った打製石器のようなもので作られている。

遠目で見れば犬そのものに見えるが、大きさは相当なものだ。

超大型犬より大きいのではないだろうか?

体高は1m近く、全長は人間よりも絶対に大きい。

毛がないのでまだスッキリとしたシルエットをしているが、これがモサモサならライオンといい勝負なのではないだろうか。

6頭立ての予定だったが、これならギリギリ1匹でも引けるのではないだろうかとも思える。

          

ほらみろ、俺が話していた犬よりもだいぶ大きいものだからブリアナさんもちょっと引いてるじゃないか。

あんな緑色っぽい角まで出してまあ。


                 

「……ん? 角? 」


                

違和感を感じてブリアナさんを注視する。

金髪の間からは深い緑色の石を削ったようなゴツい角が生えている。

小さいが、間違いない。見間違いなんかじゃないぞ。

それどころか腕も同様の色と質感に変化している。

目も赤色になって瞳孔が爬虫類のように細く長くなり、警戒しているような印象を受ける。

なにあれ、怖い。


「ブリアナさん、バルバ族ってさ、あれかな。ちょっと俺と違うというかさ、なんかこうさ、俺の知っている人族ってあんまり石みたいな角生えたり腕が石みたいになったりしないんだよね。」

「そうなの?です。あたしはバルバ族以外は見た事がないのでよくわかりません。です。」


こっそり簡易鑑定のスキルを使ってみる。



【ブリアナ・バルバティナ】

竜人族バルバの少女。

足が早く、最近勇者に出会った。



あっ……そういう。

竜人族とは驚いたな。こういう感じなのか。

ドラゴンを知っていたのでこの荒野にも存在するのかなーなどと考えていたのだが、竜人族というのであれば何か深いかかわりがあり、知っていても当然だろう。

ドラゴンに変身とかできるのかな……いやどうだろう、出来るならそうして移動していると思う。

うーむ、異世界人がガッツリ異世界人で少し感動している。

こうしてみると可愛いしかっこいいな。ビバ異世界、いぇーい。


「あの……」

「あ、ごめんじろじろと。そういうのを見るのが初めてだったもんだからさ。」

「いえ、大丈夫。です。」

                                 

しかし大魔(グレートデーモン)にはこの強そうなバルバ族が束になっても敵わないのか。

これは想定を考えなおす必要があるかもしれないな。

                                 

数が少ないマナポーションを飲みながらクレイハウンドを3体召喚し、犬ゾリに繋いで4頭立てにする。

クレイハウンドの力は相当に強く、2頭立てでも十分犬ゾリを引けるようだったが、何があるかわからないので倍くらいにしておいた。


かなり早めに寝て夜中に出発することにする。

理想としては冷血動物がまだ俊敏に動きだせない夜明け前に里に着くこと。

大量に魔力を消費した為か、考え事もそこそこに微睡みに沈んだ。

                                  

                                

                                    

                                

────────

                    

          

                 

              

          

アートワーク:一般的なバルバ族の少女    

挿絵(By みてみん)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ