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大樹亀(ツリートータス)2

 先ほどの襲撃によって大樹亀(ツリートータス)は逃げ出していた。

といっても勝利者となったので、のしのしと余裕を持って山を移動していたのだ。

まあ、カメだし元々対してスピードは出ないのだろう。


なので先回りして岩場に罠をしかけておく。

といってもただ水たまりを作っただけなのだが、進路方向に水たまりがあれば所詮は獣畜生、おそらくその場でとどまるだろう。

近くの岩場の影にはハイドラを1匹ひそませている。

その横には件の爆弾が置かれている。

奴が水を飲み始めたところで首にそろりと近づき、その首元に爆弾を設置する。

そしてドカン、これが作戦だ。


水たまりを見下ろせる程度の高い位置で待機する。

しばらく待っていると、狙いどおりにまんまと大樹亀(ツリートータス)は水たまりに近づき、陣取り始めた。


「…………」


息をひそめる。

奴は耳がいい、風以外にあまり音がないこの土地でなら動けば簡単に捕捉されるだろう。

そろそろとハイドラが爆弾を持って大樹亀(ツリートータス)へと近づくのが見える。

よし、頃合いだな。


大樹亀(ツリートータス)の木よりも高い位置に伏せていた俺は、石を明後日の方向に投げ、音を立てる。

大樹亀(ツリートータス)はそちらに一瞬気をとられ、直ぐに首をひっこめた。

だが、それが狙いなのだ。

首をひっこめる際に包帯につつまれた爆弾を巻き込んで、一緒に甲羅に籠ることになったのだ。

その一瞬のスキを見逃さない。


岩場を飛び降り、大樹亀(ツリートータス)の上に着地する。

この世界にきてLvが上がる前の俺にはできない芸当だ。

着地での衝撃で襲われいる事を理解した大樹亀(ツリートータス)は決して首を出さないだろう。

そして土の魔術で背にいる俺を排除しようとするはずだ。

しかし、作戦をたてた俺のほうが遥かに行動は早い。


「あばよ、そのご立派な亀の頭をぶっとばしてやる。」


発火(ボンファイア)────ただ薪に火をつけるだけの殺傷力のない魔術を発動させる。

だがそれはすぐに首根っこに挟まっている爆弾を包む包帯へと引火し、自然ではめずらしい破裂音を鳴らした。

土煙が巻き上がり、砂礫がパラパラと地面を打つ。

思ったよりも威力が高く、こちらもかすり傷程度のダメージを受ける。

火薬の量は少なめだったのだが、やはり化学は侮れない。


「芸術は爆発だ。」


腰から短剣を引き抜き、首が引っ込んでいる甲羅へと突き刺し、中身を引きずり出す。

生きているのか死んでいるのかもわからない頭がダラリと出てきた。

少なくとも気絶はしているだろう。

今のうちに止めをさしておこう。


──”LvUPしました。Lvが6になりました──


脳に久しぶりに機械的な音声が鳴り響く。Lvがずっと5で止まっていたので、もしかしたら打ち止めかもしれないと心配していた。

結構大物だったから経験値的なものが多かったんだろう。よかったよかった。



──────




時は夕暮れ時、解体方法を確立していたとはいえ、この大きさの魔物を解体するとなったら大変に時間がかかった。

土器に入れた血がぷるりとする程度に固まっている。

焼けば固形で食えるだろう。とても濃くて血なまぐさいレバーのようであまりおいしくないが、味の変化というのは大事で、食事の質の向上は生活の向上でもある。


「しかし、課題があるな……」


課題、それは俺が弱いことだ。

いや、人間なんてみんな弱いんだよ。

そりゃ始まりの街みたいなところからスタートして、戦いなれた人達と出会い、修行したりみたいな過程を踏めば強くもなれるだろうが、残念ながら俺に戦闘技術の研鑽などする暇がない。

実戦で経験を積むなどリスクが高すぎるので無理、却下。

俺は一撃でも攻撃をうければおしまいくらいの覚悟で戦っていかねばならない。

ケガを治せる医者がいない。おそらくスキル病毒対抗がある為、化膿や破傷風にはならないと思うが、自然治癒では体力を大幅に消耗する上に行動不能に陥るかもしれない。

いまは若干の余裕があるだけで、決して1日中ゴロゴロしていいわけではないのだ。

だらでぶ(ゴロゴロして太る意)していれば、気づいた時には手遅れになっていることだろう。


現状強くなる方法は2つある。


1つは武器を作り出すこと。

爆薬がそうであるように、本来その種にできない戦い方が出来るのは自然界において圧倒的なアドバンテージがある。

この世界には魔術があり、魔物も魔術を使ってくる為、もとの世界ほど人間が我が物顔で闊歩しているわけではないだろうが、それでも有効であることに変わりはない。

俺はこの荒野でもトップクラスに知能と知識があるのだ、これを生かさない手はない。

たとえば紀元前から使われている高威力の遠距離武器クロスボウガンなどを作り出せば、ある程度は安全に戦うことができるだろう。

大樹亀(ツリートータス)の筋を弦に、あいつのかっっっったい枝を弓にして、試行錯誤工作していればそのうちできるだろう。

もう少し機材が揃えば、より安定した強力な火薬も作れるだろうから、その方面で考えていくのもアリだ。


2つ目は新しい魔物を召喚するもの。

何体か召喚してみたが今のところ当たりは影脅し(シャドウフェアリー)だけだった。

影脅しは普通に生きれいればただの弱い雑魚魔物なのだろうが、俺と組むことで人間の自由で高度な想像力を獲得し、結果として猛威を振るっている。

ならば他にも人と組むことで、正確には”俺こと勇者クレイ”と組むことによってその真価を発揮する魔物がいるのではないだろうか?

もしいるとすれば、それは革新的に戦力を上昇させるきっかけとなるだろう。


「1つ目の案の武器はコツコツ夜に作っていくとして、2つ目の案だが……実はもう低位魔物のひとつに目をつけてるんだよね。」


低位魔物召喚ではおおよそ40種程の魔物を召喚できるが、その中にひとつ気になるものがいた。

それが詠唱する本(スペルブック)だ。


詠唱する本(スペルブック)は空中に浮かび、自立して強力な呪文を唱える魔物だ。

説明だけ聞くとかなり強力で恐ろしい魔物だが、その実本体の魔力が全く足りない為にただの浮かんでいる本に成り下がっている雑魚。

中身は解読不能で、本としての実用性も皆無らしい……のだが、俺にはとあるスキルがある。


【スキル】

共通言語(バベリスト)

この世界に生きる人々との会話、解読を難なくできる程度の翻訳能力。人のみならず、かつての古い言葉を使う魔族や人語を解さないとされる人型の魔物との会話も可能である。



そう、本来は解読不能の本でも、この共通言語を使えば読めるのではないか? という説だ。


「試してみる価値はあるだろうな」

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