薬草畑の宇宙草
「うん!かわいい!」
私は思わず、そう言うと、その子は
「ホントに?」
そう聞いてきた。
「うん。ホントに。」
そう答えると
「ありがとう!」
そう言って、手をぎゅっ!と握ってきた。
「同じクラスの子がね…『ムー○ン』に出てくる『ニョ○ニョ○』を気持ち悪い。って言うの……『スライム』はもっと気持ち悪いって……」
「え?こんなにかわいいのに?」
思わず素で答えてしまった。スライムは嬉しそうにポンヨポンヨ飛び跳ねている。
「お姉ちゃん、フレンドになって下さい!私はアイラ。よろしくお願いします!」
私は初めて会った、学者のアイラちゃんに深々とお辞儀をされてしまった。
私はちょっと慌てて……
「えっと…アイラちゃん、フレンドはいいけど、なんか、ものすごく急いでなかった?」
「あっ!そうだった!畑!」
「畑っ⁈」
アイラちゃんは思い出して走りだす…けれど、そのスピードは物凄い。思わず私も彼女について走りだす。
「うん、薬草を育てているんだけど、宇宙草の花が咲いた。って教えてくれて。」
「わぁ♡」
「咲くまで何の花かわからなくて……」
「あ!一緒に見に行ってもいい?って、もう付いてきちゃってるけれど!」
「うん!いいよ!」
「あ!スライムは?置いてきぼりになってない?」
私は気になって後ろを振り向くと、後ろにいるはずのスライムが……いない?
「大丈夫。あの子は『ワープスライム』だから!」
「ええっ⁈」
私が驚いていると、ワープしてきたスライムが、ポッと光って、私たちの少し先の道に現れた。
「すごい……」
「でしょー♡」
嬉しそうなアイラちゃん、ポンヨポンヨ前を行くワープスライム。私も嬉しくなってきて町の端っこまで2人と1匹で走っていった。
町の端っこ、ゲートの近く、小さな山小屋みたいなお店があって不思議な丸い時計がかかっている。
アイラちゃんはそのお店に入っていって、白い光が立ち上がっているワープゾーンへ、私の手をとって、スライムを抱いて急いで入ってゆく。
「うわぁーーっ……」
そこは広い広い小さな島。あれ、表現、変だった。
そこは学校の2倍くらいの広さで真ん中が緩やかに盛り上がっている、ほぼ、まあるい島の上。
後ろには今出てきた小さな山小屋。小屋の後ろに木が3本。目の前には風に揺れる植物の畑、周りは海で青くキラキラ光っている。
「なーんかハワイとかの観光地みたい、行った事ないけど。」
「私も。行った事ないけど♡」
「すごいキレイな所だねーって、私なんかが来ちゃっていいの?大切な場所なんでしょ?」
「うん。友達だから大丈夫♡それに入れたくなかったら、入れなくする事も出来るから。」
「そうなんだ、すごいね。」
「えっ?え?そうかな?」
私たちはスライムの案内で畑の中を歩く……そうして、ある場所でポンヨポンヨとスライムが飛び跳ねる。
その場所を覗き込むと透き通った水色の丸い綺麗な球とそれを包むように青い花びらが10枚ほど連なって開いている。
「キレイーー…」
私が感動していると、アイラちゃんがカスタムウィンドウを開いて一冊の本を呼び出した。
「鑑定!」
そう叫ぶと、本は宙に浮き、パラパラパラッと自動でページがめくられてゆく、と、1つのページに光があふれ、パン!と真っ直ぐに立ち、鑑定結果が出た事を示している。
「今日の宇宙草は水星花になったみたいです。」
そう言って、アイラちゃんはお花を摘んでカスタムボックスに入れる。
「へぇー…」
私は不思議な透明カスタムボックスを覗き込む。摘んだお花はゆらゆらとボックスの中で揺れている。
「ボックスにいっぱいになったら、お店に売りに行って、コインにして、そのコインで、この島のお金を払っているの」
「えっ⁈お金払っているの⁈」
ゲームの中なのに、びっくりです。
「うん。ローンですね。」
ちょっと苦笑いのアイラちゃん。私は心の中で、まるで『あ○森』みたいだなぁーーなんて思っていた。
「あっ‼︎」
私は唐突にいい事を思いついた。私の声にびっくりして目がまんまるのアイラちゃん。
「ここでちょっと、ランタンリュー出してもいい?」
エヘヘ……と笑ってアイラちゃんに聞いてみる。
「ランタンリュー?」
不思議そうなアイラちゃん。
「そう!ランタンリュー!」
私は言うが早いか、ランタンのキーホルダーを空に高く高く放り投げたーーーー
「出ておいで、ミルク!」
ーーーーーーボムッ☆ーーーーーー
白く丸く煙が発生し、中からミルクが現れた。