まちのひとたち(改)
追記
2019年4月10日に加筆修正しています
街についたヘンデアルとグレテルはまず教会に併設されている孤児院に寄った。
王宮直轄で運営されている教会と孤児院は、流行病で両親が亡くなったり、育てられなくて捨てられたりする孤児のよりどころだ。
「すみません、食べ物の寄付をしに来たのですが」
門の所にいる門番みたいな人に声をかけると、不審そうに二人をみたが、台車の食べ物をみると途端に態度を変えて「ちょっとまってろ」と建物に入っていく。
建物から出てきた門番は立派な司祭の服を着た人を連れてきた。
「君達が食べ物を寄付してくれる、という子たちかね」
優しそうなお爺ちゃんの表情を浮かべたその人はヨクラーと名乗り、二人の台車を建物の中へと引き入れようとする。
「あ、すみません、これ全部が寄付ではないのです。いまこちらには何人くらいの子がいるんですか?他の街の孤児や、あと僕たちも生活のために幾らか売らなくてはいけないので」
というと
「なるほどなるほど、ただ、街の孤児にはこちらから配った方が君達の手間もないだろう? 私がこの野菜を必要なだけ買い取るから、君達はそんな労働をしなくても良いよ」
そういって、ヘンデアルとグレテルの頭を撫でる。
「ここまで来るのに大変だっただろう? お茶でもいれようか。君たちは一体どこから来たんだい?」
そういって、建物の中に招き入れようとする。
「…わかりました。じゃあお茶だけでも」
そういって、ヘンデアルはヨクラ―の招きに応じる。
「すみません、ちょっとトイレを貸してください」
お茶のテーブルにつくと、ヘンデアルはそういって、グレテルを置いて席をたつ。
「君たちは一体どこから来たんだい?」
「森からだよ」
「森のどこらへんかね?森に畑があるのかね?」
「んー森の奥で畑はおうちの裏にあるよ」
「ここら辺一体は不作だったはずなのに、どうしてこんなに作物がとれるんだい?」
「んー?よくわかんないけど、マルガレーテがエイってやるとできるよ」
「マルガレーテというのはお母さんかい?」
「ううんちがーう」
「じゃあおばさんかな?」
「ちがうー」
「じゃあおねえさん?」
司祭が質問をしていると、トイレからヘンデアルが戻ってくる。
「マルガレーテは遠い親戚のお姉さんです。それが何か?」
「いやいや、ここの街のまわりではみんな不作なのにこんなに作物が実るのはすごいな、と思ってね。どうしたらそうなれるのか教えてもらったら皆も喜ぶとおもってな」
そういって、ニコニコと笑う。
「そうですね。マルガレーテは畑仕事が得意なので今度コツを聞いてきます」
ヘンデアルはそういうと
「挨拶したい人や市場で売りたいものもあるので、そろそろ失礼します」
あれやこれやと引き留めようとする司祭に、ヘンデアルはそういって、教会を後にしようとすると台車を預かろうと再度言われる。
「折角ですが、自分たちで市場で売りたいので」
そういってようやく台車を返してもらう。
それでも1/3ほどを教会に置いていかされ、ヘンデアルはげんなりとした気持ちになったのだった。