こっきょうから
ヘンデアルとグレテルとマルガレーテ、そしてテッカは街でのもろもろを終えて、久しぶりに村に戻ると、みんなが労ねぎらい出迎えてくれた。
何人かの子供たちは街での手伝いもしてくれていたので、街の状況は村のみんなにも伝わっていたが、街が前のようになったとはいえ
「もう街には戻りたくない。ここで畑の面倒をみて、牛や豚、鶏たちを育てようとおもう」
みんな口をそろえて言うので、村はこのまま存続することになった。
王様を匿える部屋を宿の一等室につくり、その宿にはワーホルトさんが信頼できる兵士たちを寝泊まりさせることにし、王都からの軍を迎え撃つ準備を着々とすすめていた。
グレテルとテッカは3日経つがまだ戻ってきていない。
王と無事会えるといいのだけれど。
街は兵の特需で活気もあり潤っている。
それでいてワーホルトさんのさすがの統率というか、街を荒らしたり悪さをするやつらは兵の中にはいない。
たまに酒を飲んで喧嘩をするやつがいるが、街のやつらも同じなのでそこはご愛敬程度。
ワーホルトさんは王をこの街に迎えいれてここから国全体の街と畑を治す本拠地にしようとしているらしい。
この街の畑の土を他のところに撒くと、畑が改善されるはずだとマルガレーテが言ったこともその構想を後押しした。
前にマルガレーテの家から肥料を持ってきた肥沃な畑は、ほかの畑を助ける効果もあるらしい。
ただ、それは不毛な畑を作物が育つ畑にするだけなので、この街のようにチートに育つわけではないし、遠く離れた街や畑はそんなことをしていたら飢えて死んでしまう。
いろいろと問題は山積みだが、まずは王様の無事を願おう、とワーホルトさんは言って、しばしの休息をマルガレーテたちに与えた。
村では、おいしそうな料理が所せましと並び、見たことないような料理にびっくりしていると、
「クマちゃんが教えてくれたの」
どうやら、我が家にいた子たちが、クマに会いたいと駄々をこねて泣き出し、年長のこたちが森のマルガレーテの家にクマを迎えに行ったという。
そして村でまるでシェフのような扱いでクマは料理の腕を振るっていた。
料理くらいでは魔力が消耗することもないらしく、1週間くらい元気に魔力を補給しなくても動いていられるクマは、完全に村のおばさんたちの料理の先生であり、子供たちのアイドルであった。
食後にクマの作ったクレマカタラーナ(プリン)を食べながら、マルガレーテはこの世の至福を味わっていた。
森の家にこの後帰るよりはしばらく村にいなさいよ、とおばさんたちに言われ、マルガレーテもヘンデアルもグレテルも村にベッドを用意してもらって滞在することにした。
森の家で3人でいるのもいいが、わいわいとみんなでいるのも良いものだな、と思いながら。
「そろそろ見えてきてもいいころなんだけどなあ」
村にもどって2日目の朝。
国境のほうを見ながらマルガレーテが呟いていると、竜巻や風ではない砂煙が向こう側に見えた。
砂煙は近づくにつれ、馬と馬車の集団であり、隣の国の王の旗を掲げていることも見えるようになる。
「きたきた!」
マルガレーテがそういって、
「さ、お迎えの準備しましょう!」
ここ数日いろいろな下ごしらえをしていたごちそうをふるまう準備を開始する。
馬と馬車の集団は、村の前の茂みで止まり、マルガレーテが出迎えると、豪奢な馬車の扉が開く。
「マルガレーテ!」
「おねえさま!」
扉からは次々と黒の装束に身を固めたご婦人方が下りてきて、口々にマルガレーテを抱きしめていく。
「マルガレーテこの人たちは?」
「私のお姉さまたちよ。隣の国の魔女」
そう紹介すると魔女たちを村へと誘い
「まずは旅の疲れをごはんとお風呂で癒してくださいな」
と、お風呂と食事を勧めるのだった。




