おうとからのししゃ
「畑がなるべく早く改善するのと、それまでの作物が必要なのよね?」
マルガレーテが将軍の話を聞いて、そういう。
「駄目だよ。マルガレーテがどんなにすごくても一人で国全土なんてが無茶をして、魔力枯渇して死んだらどうするんだよ」
グレテルがその言葉に反応して猛反対をする。
「魔力枯渇…もしやあなたは魔女様か」
ワーホルトがはっとした様子でマルガレーテを見る。
「そうよ。だからあなたたちが何かしたら、私が黙っていないから」
そういって、司祭と領主をみると、昔自分たちが彼女にしたことを思い出したのか、震えあがる。
本当は風を起こしても埃を片付けるくらいにしかできないのだが。
「街にも、君たちにも手を出させないと、私が約束しよう。そして、あなたとは少し話をきちんとしたい」
そういって、ワーホルトはマルガレーテに頭を下げる。
それならば、とマルガレーテは街の門を開こう、という。
兵を街にいれて大丈夫なのか、と心配したが、何かあったらワーホルトが責任をとる、というのと、領主と司祭の身柄をこちらに預けてくれるというので、もちろん殺したりはしないで、人質として預かりそれを担保にすることで街の門を開くことにした。
街の門を開いた結果、大変なことになった。
悪い意味ではなくいい意味で、だ。
兵士たちの駐屯地は前と同じように教会の前にテントを張ったが、この前の5倍近い兵士の数で、教会を開放しても、領主の家を開放しても兵士たちが入りきらない。
街の宿屋はあっという間にいっぱいになり、街のあちこちにあった空き家を兵士たちが修復し使うことになる。
その修復に木工職人や大工が駆り出され、街のレストランや宿屋も大盛況。
畑の野菜は大量に消費され、兵士が王都からもってきたものは街で換金され、街にお金が回るようになった。
唯一被害が出たとすれば、街に話していた鶏たちがおいしい食事として供されることとなってしまったのだが、おいしくいただいたので、良しとしてもらうことにする。
マルガレーテとワーホルトは、国の畑のことで、連日話し合いをしていた。
そんなある日、テッカが馬に乗って戻ってきた。
「テッカ!ありがとう」
なにやら重々しい封蝋のされた手紙をマルガレーテはワーホルトに見せる。
「これで、こっちのものだわ」
ワーホルトはその封をみて一瞬驚いたが嬉しそうに笑顔を浮かべる。
「これで、王を助けることができる」
そんな話をした矢先に、王都から早馬が一頭やってきたのだった。
「王が…お倒れになった…だと」
早馬は将軍に手紙を持ってきたという。
それには王が倒れ、明日をも知れぬ容体だという。
だが、ワーホルトは思ったよりも取り乱していなかった。
何事かを兵士に告げ、早馬の兵士をねぎらうと、人払いをする。
「どこかから、ここの情報が漏れたようです」
「どういうこと?」
「この手紙は私が懇意にしているものからで、わかりづらいですが表面的な文字とは別に、王を倒れたことにして、王都から逃がし、時間を稼いでいる、と書いてあります」
「司祭と領主からバレたのかな」
「この街の衛兵だったら、お金で買収されやすいからな…」
ワーホルトとマルガレーテ、ヘンデアルグレテル、そして戻ってきたテッカと状況を確認する。
「とりあえずグレテルとテッカは馬車で王様を助けるために街道を王都へ。
ついでに鶏ももういっかい放しておいて。ワーホルトさんは王様が来た時の隠れ家の準備を」
「わかった」
「了解した」
ヘンデアルの指示に従い、テッカとグレテル、ワーホルトが動く。
「マルガレーテは魔力を温存しておくこと」
「はあい」
王都の兵はここにいる兵の5倍程度だという。
そのどれくらいが教会の息がかかっているのかわからないが、ワーホルトのすぐ下の部下は教会の言いなりであるという。
「王都の軍が来る前に少しでも準備しておこう」




