けっせんぜんや
「って感じに王都に行っちゃったんだよね」
街での一部始終を村に帰った後、マルガレーテに話をすると、難しい顔で考え事を始める。
そしてテッカに何事かを話、手紙をもたせると、テッカは馬に乗ってどこかへと走っていく。
「たぶん、1月後くらいに王都から兵士とともに司祭と領主が戻ってくると思うわ。それまでにいろいろな準備をしておかないといけないわね」
マルガレーテが厳しい顔で言う。
「王都に助けを求めにいったのなら、迎え撃つ準備をしないとね」
必ず、兵士を準備して戻ってくるはずだ、という。
「そしたらまず、街と王都の街道にこの子たちを放すわよ」
森にいる鶏たちを指さして、マルガレーテが宣言した。
確かに野生化したマルガレーテの鶏たちは、畑での働きといい、良い戦闘力になる。
「あとは街の入り口の強化ね」
とはいえ、1か月やそこらで塀を立てたり堀を掘ったりするのは難しい。
だが、マルガレーテには秘策があった。
「その前にまず腹ごしらえと、街のみんなへの説得よ」
そういうと、村のみんなとともに朝ごはんを食べる。
今日はオムレツと焼き立てのパン。コーンスープ。新鮮な野菜のサラダ。
マルガレーテの家からもってきたベーコンとソーセージも添えた。
そして、お腹を満たした後、馬車に市場のおばさんとジュリアさんを乗せる。
街の住民への説得には顔見知りのおばさんと、教会に見捨てられたジュリアさんが適任だとおばさんたち自身が立候補してくれた。
街にもっていくようの鶏数十羽をかごにいれ、馬車に積むと、おばさんとジュリアさんをつれて、マルガレーテとヘンデアルとグレテルは街へと向かう。
教会の司祭と領主を追い出した街は、まるで昔に戻ったかのように活気に満ちていた。
広場には市場が立ち、人があちこちで立ち話をし、お店の呼び込みの声が聞こえる。
それは、畑の作物が育ち、人々が少し余裕ができたからともいえる。1週間で作物が育つマルガレーテの種は、街をすごい勢いで潤し、復興してくれていた。
とはいえ、作物だけでは賄えないもの、それを今日は街に提供する。
それがこの鶏だった。
この前司祭たちを攻撃した鶏たちはどうやら街を救った鶏として、街ぐるみで世話をされ、卵をもらわれているらしい。
市場でおばさんとともに鶏をもっていくと、畑の虫を食べさせるためや、卵のため、鶏自体を増やして食べるため、様々な人が譲ってくれ、と言ってくるので、教会の司祭たちが1月もすれば戻ってくることと、それを迎え撃つ準備をしなければならないこと、そして、これからどうするのかの話をおばさんとともに鶏を渡しながら話をしていく。
多くの人は耳を傾けてくれて、理解をしてくれたが、やはり王都と正面を切って戦うことに不安を覚える人も少なくなかった。
鶏を配り終えて、
「よし、じゃあやるわよ」
マルガレーテが街の入り口に立つと気合をいれる。
「えい!」
声を出すと、道に生えている雑草や木がにょきにょきと伸び、生け垣のようになる。
高さ5メートルほどの生け垣はそのまま厚さも加えて街を取り囲んでいく。
「ついでに、こうしちゃおう」
街と街の周りに広がる畑を囲う生け垣は膨大な長さだが、そこに生えている雑草の力を借りるからそんなに大変ではない。
もともと雑草のように生命力の強い草木はちょっとの魔力で背中を押してあげると、面白いように育つのだという。
とはいえ、一日二日でできるものではないので、休み休み、街を取り囲んでいくことにする。
街の人にはすでに説明済みで、入り口一か所だけを頑丈な木の扉を作ることにし、ジュリアさんのお父さんたちの指導で街の男たちで作っている。
垣根と木の扉で簡単に街には入れないようにするのが作戦の2つめ。
ひとつめの街道の鶏とともに、地味にだが、兵士が簡単に街にははいれないようになっている。
そして、街の人には、それぞれの家のドアをしっかりしたものに作り直し、閂をしっかりかけれるようにする。
もし兵士が来たら家に逃げ込んで、しっかり閂をかけるようにと指示を出す。
兵士とまともに戦う必要はない。
なぜなら代わりに戦ってくれる鶏が各家庭にいるからだ。
街の防衛を鶏に託す、というのも変な話だが、人が死ぬよりは平和的解決だろう。兵士にとってもだ。
そんな準備を着々と進め、1月が経とうとしていた。




