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ひとやすみ

3日後、再び街に馬車で向かうテッカとヘンデアル。

入り口の衛兵にやはり心づけを渡すと、この前とは違う人だったが同じような対応をされたので、教会の衛兵の規律が逆に心配になる。


市場につくと、ヘンデアル達を待っていたのか種を求める人が大勢いた。


「おお、にいちゃん来たか」

「この前の種すごいな!もう花が咲いているよ」

「来週には実が取れると思いますよ」

「なんと!それはすごいな」


種の説明をしながら、野菜をこの前と同じように売っていると、やはり教会の司祭がやってきて、遠巻きにヘンデアルたちのことを見る。

テッカが主に話して接客をしているので、ヘンデアルは一度会ったことがある司祭にばれないようフードを深くかぶり、テッカの手伝いに徹していた。


やはり2刻もしないうちに野菜は売り切れ、種も全部はけたので、次の準備に取り掛かる。

人が途切れたのを見計らって、ジュリアさんが野菜を買いに来た風を装う。


「もう売り切れてしまったの?そんな…困るわ」

「そうは言われても、おねえさん、ないものはないからなあ」

「母にどうしても買っていってあげたいのよ」


そういって、ジュリアさんが詰め寄った拍子に荷台によろけてその角に頭をぶつけてしまった。


「おい、お姉さん!」

「大変だ、頭から血が出てる!」

「誰か医者は!?」

「いや、教会に運ぼう」


近くにいた街の人たちと一緒にジュリアさんを教会に運ぶ。


「司祭様、どうか手当をおねがいします」

「そこの広場でよろけて頭を打ってしまったみたいなんだ」


そういうと、司祭はさも面倒くさそうに、ジュリアさんを一瞥すると


「だれか治療費の100ギニー払えるのかね」


1ギニーが100シリング。パンが1つ2シリングが買え4人家族が1月生活することができる金額が5シリングだから、100シリングが50か月分の4人家族の生活費と同じ金額だ。


当たり前のことながら、そんな大金誰も払えるはずがない。


「かわいそうだが、お金がない人をむやみに治療していたら教会もなりたたない。かわいそうだな治療はできんな」

「そんな…」

「かわいそうに…」

「でも、教会の決まり事じゃあ仕方ない…」


村人は肩をおとしながら、ジュリアさんをみる。


「脈が弱まってきている」

「かわいそうだが何もしてあげれないな」

「・・・どなたかこの人の家族は知らないか?」


そう聞く声に司祭が


「たしかこの女はこの前この町にきた身寄りのない女だったはずだ。家族はいない」


と答えたので


「そうか…それなら、最後に声を交わした縁だ。俺が弔うことにするよ」

そういって、テッカが街の人たちに手伝ってもらい、ジュリアを馬車へと乗せる。


「この町が見渡せる峠のところに埋めてあげることにするよ」


そういって、村人に「もうしわけない」「頼んだよ」といわれながら、テッカとヘンデアルは馬車で街を後にする。


森に入り、街を見下ろせる峠で馬車を一時停車する。


「街からの追ってはなさそうだな」

「そうだね」

「ジュリアさん、もう起きて大丈夫ですよ」


そういうと、馬車で転がっていたジュリアさんがむくり、と起きる。


「鶏の血であちこちべたべたするわ」

「村に着いたら、お湯で流しましょう」

「しっかし、教会の対応ひどかったな」

「お金がなきゃ診ないっていうのが街のみんなにも伝わったし、教会の司祭の性格もみんなもうわかっただろうし、あと一押しって感じね」

「私のこと身寄りのない女にして、厄介払いしようとしたわね」

「でも、これで面倒なく家族と合流できるんだ、よかったよかった」


とりあえず誰かが確認しにしたときように、峠の壱か所で土をそれなりに盛って、石を置いてそれなりのお墓っぽくする。


「よし!それじゃあ、村に向かおう」


馬車で残りの行程をさくさくと進み、山のふもとの村へとたどり着くと


「ジュリア!」

「おかあさん!おとうさん!!!!」


ジュリアさんが来るのを待ちわびていたお父さん、お母さん、そしておじいさんおばあさんが村の入り口で待ち構えていた。


馬車を降りて駆け寄ると、抱き合い、再会を喜ぶ。


「お母さん、もう起きてて大丈夫なの?」

「大丈夫どころか、子供たちの面倒みてたら、あっという間に時間がたっちゃうし、毎日ぴんぴんとしているよ」


子供たちも、新しい大人が増え、しかも妙齢の女性だからか、なんだかもじもじとしている。


「ジュリアっていうのよ。よろしくね」


そして市場のおばさんとおじさんにも引き合わせ、村はジュリアさんを迎えて一層活気づく。


「今日の夜は腕によりをかけて作ろうかね」


市場のおばさんがそういって、腕まくりをすると、子供たちがお手伝いを立候補し、昼の日の高いうちからお夕飯の準備をすることにする。


「あ、それよりもまず、お湯でちょっと体をふきたいんだけど」


ジュリアさんがそういうと、


「実はな」


そういって、ジュリアさんのお父さんとおじいさん、そして年上の男の子たちが村の端に連れていく。


ヘンデアルも見たことない簡易な屋根と柱の掘立小屋のようなその施設は…


「お風呂だ!」

「子供たちがいっぱいいるし、みんな毎日泥だらけになるのに、水浴びやお湯で拭くだけじゃあおっつかなくてね」

「木の枠で作った簡単なやつだが、十分だろう」


大人でも5人は入れそうな湯舟は、山の川から引いた水をいったんレンガで組んだオーブンを通り、そこで温められて湯舟へと流れていく。


「オーブンは一回火を入れたらなかなか火が落ちないし、起こすのも大変だから、いっそのことずっとつけておいてお湯を沸かしておくことにしたのさ」


まさかの24時間風呂である。

子供たちがはいるときは何もしないが、一応大人が入るときは柱と柱の間に布を張り、目隠しをするという。

ジュリアさんは布を張ってもらい、早速お風呂にはいり、鶏の血を落とすことにした。


その間に、腕によりをかけたごちそうがどんどんと作られていく。


野菜たっぷりのスープにパン、チキンのパイ包みに川魚のフライ、かぼちゃや玉ねぎのグリル、トマトソースをベースにしたパスタのようなものもある。あっというまに村の中央の外にあるテーブルが食べ物でいっぱいになっていく。


「せっかくだからマルガレーテもよんでこようよ」


グレテルがそういうと、村のみんなもそうしなさいぜひに、というので、馬車でちょっとがたがたする山の道を上っていく。


あっという間にマルガレーテの家に着くと、マルガレーテは家の中でクマと一緒に(というか主にクマが)お菓子を作っていたので、それを手土産に村に行くことにする。


クマはお留守番をしている、というので、マルガレーテと3人で馬車で森をかけおりて、村に向かう。

牛を一頭村にもっていったことをマルガレーテに言うのを忘れていたので報告したら、一頭だとかわいそうだから、と番の牡牛と、豚も2匹も村にもっていくことになった。

馬車が壊れないか心配だったが、ちょっとの距離だったことと下り坂だったので、あっという間に村に着いたので、馬車が壊れるような事態にはならなくてほっとする。


村に着くと、豚と牛は予想以上の歓迎をうけて、明日にでも小屋を新調しよう、とジュリアさんとお父さんが請け負ってくれた。

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