おゆうはん
目を覚ますと、ここしばらくないくらい、家の中が静かだった。
「ヘンデアル? グレテル?」
呼んでみたが返事はない。
クマが起きたのか、水でも飲むか、とコップを持ってきてくれたので喉を潤す。ずいぶんと寝ていたみたいで、窓の外は日がもうすぐ落ちてしまいそうだった。
「クマ、子供たちは?」
ベッドにいるはずの子供たちや駆け回ってる子供たちがいないことにも気が付き、クマに聞くと、どうやらジェスチャーでヘンデアルとグレテルと一緒に出て行った、ということを伝えてくる。
「そっか。私が倒れたから、村に連れて行ってくれたのね」
そういうと、またベッドへ横になる。
魔力の使い過ぎなんて、子供のころに数度やったくらいで、久しぶりだった。子供はそうやって自分の魔力の量を覚えるのだが、大人になると生死に関わってくる。
マルガレーテは他の魔女よりも魔力が多いといわれていた。
それにしなくちゃいけないこともあったし、教会への怒りもあったし、何より楽しくて、魔力が枯渇することなんて忘れていた。
「心配かけちゃったなー」
天井を見ながら、そう反省する。
眠る前のヘンデアルとグレテルの心配そうな顔を思い出す。
3日は魔力を使うな、とも言われてしまった。
たしかにそれくらいは安静にしていないといけないかもしれないが、いまは休んでいる場合ではない。
教会がどう動くかわからないし、なによりいざというときにみんなを守らなくてはいけない。
「はやく回復しなきゃ…」
そういって、目を閉じると、体は疲れているのか、またすぐに眠りへと落ちるのだった。
山の麓の村で、鶏の丸焼きをたっぷり挟んだお夕飯のサンドイッチを作ってもらい、ヘンデアルとグレテルは森の家へと家路を急いでいた。
「村に泊って行けよ」
というテッカに後ろ髪がひかれたが、クマがいるとはいえマルガレーテが心配だったので、帰るよ、というとおばさんたちがサンドイッチを作ってくれたのだ。
マルガレーテの所にいた子たちは、ミルクをあげたら安心したようにすやすやと眠り、ちっちゃい子たちは友達が増えたと思ったのか、思いっきり遊んで疲れて、眠りについている。
楽しそうでよかった。
「明日また朝からくるよ」
そういって、ヘンデアルとグレテルはマルガレーテの家へと向かう。
日が落ちると、いくらもう何往復もしている森とはいえ危険なので、できる限り急ぐ。
なんとか日が落ちるギリギリのところで、マルガレーテの家につき、扉を開けると、マルガレーテは村に向かう前のようにベッドで眠っている。
「クマ、ただいま」
クマに挨拶をしたあと、ヘンデアルとグレテルはお風呂に入り、汗を流し、そのあとサンドイッチと一緒に食べれるようにと簡単なスープとサラダを作り、あとは、まだ村では作れないパンを何本か焼くことにする。
パンを20本くらい焼いたころ、いい匂いに誘われたのか、マルガレーテが目を覚ました。
「マルガレーテ、おはよう」
「おはようって…夜だけどね」
ベッドから起き上がるマルガレーテに「まだ寝ていたら?」といってみたがどうやらあまり寝てばかりいるのも良くないらしい。
さっぱりしたい、というので、お風呂にお湯を張って湯あみの準備をする。
「あーさっぱりした」
お風呂から出るころを見計らって、軽い夕食の準備をすると、マルガレーテはサンドイッチをものすごく喜んだ。
「村にもうかまどができたの?」
村の様子を聞いていたので、グレテルがある程度ここ数日で行った村の手入れの話をする。
廃屋同然だった村だが、家自体はそんなに傷んでいなかったので、集中して3件を全員総出でピカピカに磨き上げ、空気を入れ替えると、すぐに住めるようになったという。
山の川から各家に引いていた水樋は草木が詰まっていたのでそれを取り除くのにちょっと時間がかかったが、子供たちが率先してやってくれたので、あっという間にきれいな水が通り、村の中央にあった井戸も濁っていた水をくみ上げるとすぐにきれいな水がたまるようになった。
あと3日もすると小麦が収穫できるので、そのわらでみんなのベッドを作ろう、という話もしている。
綿の実が倉庫で収穫されたままになっていたので、それを紡いで布にして、みんなの洋服を作る話もしている。
綿は畑の横にも植えることにした。
そして足りない家具はジュリアさんのお父さんとおじいさん、そして年が上の男の子たちで木を伐りだして作ることにしている。
実はジュリアさんのお父さんとおじいさんは農業もしていたが、木工職人でもあったそうだ。
すでに皿やカップ、フォークやスプーンなどはあっという間に木で作ってしまったという。
数日でまるでもう何年も住んでいるように充実した村にマルガレーテは話を聞きながらびっくりしている。
「3日後は種をテッカとまた街に配りに行くついでにジュリアさんを攫ってこようって話をしているんだ」
ヘンデアルはさらにこの後の予定をマルガレーテに伝える。
「教会が変な気を起こす前に街から出したほうがいいと思って」
「じゃあ、その時が一番勝負どころね」
「うん、たぶんね」
そのためにはしっかり休んで魔力を回復しておいてほしい、とヘンデアルが言うのでマルガレーテはわかった、と頷いてベッドへと向かう。
「明日は村でいろんなもの手伝ってくるけど」
「大丈夫、おとなしく家でねているわ」
ヘンデアルとグレテルが明日村にいく、というのでマルガレーテは家でお留守番をすることにして、3人は眠りにつくのだった。




