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まりょくこかつ

森のふもとの隠れた村についたのは街を出てから一刻ほど。

馬車はやはり早い。


「ただいま」


テッカが村の入り口で声をかけると、子供たちがわらわらと飛び出してきた。


「テッカにいちゃん、朝俺たちマルガレーテの畑仕事したよ!」

「くるくるーってジャガイモがとれた」

「人参もぽんぽんーって」

「こんな大きなトウモロコシとったよ!」

「麦もいっぱいとったよ!」

「トマトおいしい!」


どうやらテッカとヘンデアルが街に行っている間、子供たちはマルガレーテの畑を手伝ってくれていたようだ。


「こっちの畑もずいぶんと発育がよいねえ」


市場のおばさんが村の川向うにある畑を見に行き、どうやらそこも2,3日すれば収穫ができそうだ、といってきた。

マルガレーテが数日前に畑を元気にしたばかりだというのに、もう収穫間近だという。


もうちょっとすればマルガレーテの畑をあてにしなくても、ここの村の分くらいはどうにかなりそうだ。


「テッカ、ヘンデアルもちょっと手伝っておくれよ」


ジュリアさんのおかあさんが帰ってきた二人をみて、声をかけてくる。

何かと思って向かうと、ジュリアさんのお母さんが鶏と格闘していた。


「野菜とパンだけじゃあ子供たちもかわいそうだからね」


森で豊富に繁殖し育った鶏たちを20羽ほど捕まえて小屋にいれて、卵を確保していたが、それとは別に肉として捕ってきたものらしい。


首をおとして、羽をむくのは女性よりやはり力のある男の子の仕事だ、とニコニコ笑いながら言う。


おっかなびっくり言われた通り鶏を3羽つぶして、お湯につけて羽をむしると、

「あとはまかせておくれ」

と内臓やもろもろを処理して、朝にはなかった村の中央の井戸の近く、レンガが積まれているどうやらかまどに詰め物をした鶏を放り込む。


「今日のお夕飯は鶏の丸焼きだからね」


そういうと子供たちがわあいわあい、と声を上げて喜ぶ。


「そういえばマルガレーテは?」


と聞くと、畑を手伝っていた子供たちが


「畑手伝ったあと、見てない」


というので、ヘンデアルは森の裏道を歩いて、マルガレーテの家へと向かうことにする。


牛と豚の小屋、鶏の小屋をぬけて、畑を抜けて、マルガレーテの家の前につくと、ドアの外でグレテルが立っていた。


「グレテル、どうした?」

「にいちゃん!」


声をかけると、グレテルがどうしよう、といった様子で駆け寄ってくる。


「マルガレーテが!どうしよう!」


要領をえない「大変だ」「どうしよう」に、とりあえず家の中にはいることにする。


すると、ベッドに寝ているマルガレーテと、そのお世話をするクマ。

子供たちが心配そうに、ベッドのマルガレーテを見ているそんな様子が目に入る。


「マルガレーテ?」


声をかけると、クマにしーっと、おそらく指があったら人差し指を立てているであろう静かに、というしぐさをする。


「村の子供たちと野菜作って、運んでって何往復かしてたんだけど、そしたらマルガレーテ、気分が悪いっていって、倒れちゃったんだ」


子供たちには心配させまい、と子供たちが帰ったあとで倒れたらしい。


額に手を当てると熱くないので、おそらく熱はないだろう、と思うが一応冷えたタオルを乗せておく。


すると、うっすらとマルガレーテが目をあけた。


「…あれ? ヘンデアル?グレテルもどうしたの?」

「マルガレーテ、気分が悪いって倒れちゃったんだよ。覚えてない?」


グレテルが言うと


「あーそうだった」


と大きなため息とともにマルガレーテがベッドの上で手で顔を覆う。


「久しぶりにやっちゃったな―」

「マルガレーテ、大丈夫なの?」


グレテルが心配そうに聞くと


「大丈夫大丈夫、魔力の使い過ぎなだけだから。ここ最近いろいろしなきゃいけなかったから、久しぶりに魔力を使いすぎちゃったみたい」


そういって、何でもないように笑うが、そんなマルガレーテの頭をクマがぽかぽか、と叩く。


「いた・・・くはないけどやめてクマ。ごめんなさいってば」

「魔力使い過ぎって、畑とか種とかだよね?」

「んーまあ、そうだけど、私が好きでやったんだし」

「でも、魔力使いすぎて倒れるなんて、絶対に体によくないよね」

「そうだねー下手すると死んじゃうこともあるらしいからね」


こともなげにいうマルガレーテにヘンデアルとグレテルはびっくりする。


「マルガレーテは、休んでて! しばらく魔法使うの禁止!」

「え、そういっても野菜とか…」

「種は十分もう確保できてるし、野菜は今日ので十分。あとは普通に育つもので賄えばいいから、マルガレーテは3日は絶対安静で魔法使っちゃダメ!」


ヘンデアルがきつめに言うと、マルガレーテは「でも、だって…」といっていたが、クマが額をぺしん、と叩いて布団をかぶせると、おとなしく目を閉じて、また眠りについた。


「にーちゃん」

「とりあえず、ごはんにしようか」


子供たちもお腹を空かせているし、簡単なスープとサラダとパンのごはんを作る。


ミルクがごはんの子供たちはクマがミルクをあげてくれたので、ちっちゃい子たちのごはんを食べさせ、その後、グレテルと相談して、子供たち全員と牛1頭を連れて山ふもとの村に向かう。


「おやおや、どうしたんだい」

「おばさんたちに、この子達見てもらいたくて」


3人の乳児と2人の幼児をつれ、さらに牛を引いてきたヘンデアルとグレテルをみて、ジュリアさんのお母さんとおばあさん、市場のおばさんたちが目を丸くする。


「じつは…」


マルガレーテが森に捨てられていた子を保護していたことと、いま体調崩しているので、できれば子供たちの面倒をここでみてほしいこと、あとは、ここにいる子たちと同じ境遇なので、彼らと一緒に過ごさせて、成長を見守りたいことを伝える。


「そっか、お前らも父ちゃんと母ちゃんいないんだな」


村にいるみなしごの中でもちっちゃい子が、幼児たち二人の頭をなでる。


「大丈夫だ。俺たちがいるからな。俺のこと兄ちゃんだと思って頼れよ」


そういって胸を張る。


「ユーリは自分が一番下だから、兄貴風吹かせられるって思ってるんだな」


苦笑しながらその様子をみたテッカが笑う。


「ちっちゃい子の世話なら任せておくれよ」


おばさんたちも任せてくれ、と笑顔で言ってくれたので、ヘンデアルとグレテルはホッとする。


「この牛は?」

「子供たちのミルクに…とおもって連れてきたんだけど…」

「まだ何頭かいるから、大丈夫だし、ミルクがあったら料理のバリエーションも増えるかなって思って」


そういうと、おばさんたちは


「ミルクもバターもなんでもできるね。うれしいねえ」


そういって、牛の腹をなでる。


「僕、乳しぼりしたい!」

「僕も!」

「僕も!」


子供たちが競い合って牛の世話をしたがるので、牛はちょっと嬉しそうに


「ウンモォ~」


と鳴くのだった。

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