こっきょうぞいのむら
翌朝、荷車に詰めるだけの食料をもって、グレテルがジュリアさんと市場のおばさんと子供たちのいる貴族の家に行った。
それと同時に、いつものごとくクマに子供たちのお世話をお願いしたマルガレーテたちは、森の反対側、国境側へと下っていった。
マルガレーテの家の裏から一刻ほど下ると、森の出口が見えてくる。
「道っていうか獣道っていうか…」
下る道の険しさにテッカが驚きながら前をさくさく歩くマルガレーテにびっくりしている。
「よくそれだけ歩けるね」
「山は全部庭みたいなものだもの」
伊達に何十年もこの森でくらしてない、とマルガレーテが胸を張るが、テッカにマルガレーテが魔女だとばれるんじゃないかとヘンデアルがひやひやしていると
「さすが魔女さんだな」
テッカが当然のように言うのでびっくりする。
「テッカ、気が付いていたのか?」
「逆に森にあるのに、家がなかなか見つからなかったり、ようやく見つけたと思ったら、知らないところに飛ばされたり、あれで魔女の家じゃなかったらなんだって感じだよな」
どうやらクマの魔術で飛ばされて、それでマルガレーテが魔女だと気が付いたようだ。
「なんだ、マルガレーテが魔女だってばれないようにドキドキしてたのか?」
テッカがにやにやしながらヘンデアルをつつくが、そんな会話をしているうちに目的の場所にたどり着いたようで
「ここね」
マルガレーテがそういって、足を止めた。
森と草原の境目にも見えるが、森が草原に少しだけはみ出しているようにも見える。
そんな茂みに崩れた家が5,6軒ほど建っていた。
「村、というより集落だったのかしら?」
「たぶん、畑の忙しい夏場だけ、近くで面倒みるための家だったんじゃないかな」
お金のある農家などでは珍しい話ではなく、畑の近くに仮住まいを作り、作物の成長が忙しい春から夏にかけてそこに滞在することもあったそうだ。
「今はそんなに元気な畑はないから、きっと放棄されちゃったんだろうな」
そういいながらヘンデアルは廃屋へと近づいていく。
「あ、ちょっとまって、そこらへんの草うまいこと植え替えちゃうから」
マルガレーテがそういうと、家を覆っていた雑草たちを家の周りだけきれいにとり、そのとったものを森を抜けた街道沿いに植えなおし、一見すると人が通る街道から建物が見えないようにする。
「ヘンデアル、建物の状況みてもらっていい?私この近くの畑みちゃうから」
そういって、マルガレーテは少し先にある川の両端に広がる畑に向かって走っていく。
「じゃあ、テッカ、一緒にきてもらっていいかな」
「もちろんだ」
廃屋は、数年放っておかれただけのようで、外の見た目はボロボロだったが、草木を取り払われると、そんなに傷んでいないように見えた。
よく見ると5,6軒ではなく10軒ほどあり、大きな畑を管理するための家のほか、農具を補完したり、収穫した作物を収納する倉庫などもあった。
「人が住む家は7軒、農具の収納と作業場が1つに残り2軒は収穫した作物の補完や越冬用の貯蔵施設だったぽいね」
小さな集落ほどの一帯を見回り、全部の家がちょっと修理するほどで使えることに安堵する。
「一目につかないから、のびのび魔法使っちゃった!ここの畑はそんなに悪くなかったよー。肥料さえあればすぐに収穫できるようになるとおもう!」
ちょうど全部見回ったくらいに、マルガレーテが戻ってきて、畑の状況を教えてくれる。
「じゃあ、すぐにでもみんなの引っ越しをしようか」
「あ、それならついでに、炭焼き小屋の畑のジュリアさんたちもつれていこう。お母さんの具合も良くなったし、いまなら森も越えれるとおもう」
テッカとヘンデアルがみんなの引っ越しを企画する。
まずは荷造りしなくてもいい子供たちがおばさんたちの荷造りを手伝い、引っ越しの準備が整ったら2回に分けて、森を抜ける。
1日目の夜は森とは反対側の無人の建物にボヤ騒ぎを起こして衛兵の目を引き付ける。
2日目の夜は偽物の商人になったテッカとマルガレーテが教会の許可を得て広場にテントを張り、そこで食べ物を衛兵たちに配り酒盛りも仕掛けて、そのすきにヘンデアルとグレテルが子供たちを逃がす。
そして3日目の昼に、市場のおばさんと炭焼き小屋にいるジュリアさんの家族を台車にのせて、王都にいく、と言って、街を出、衛兵が後をつけていないことを確認して、森へと入る。
ジュリアさんの家族と市場のおばさんたちは、途中マルガレーテの家で一晩休み、4日目に森の外の家についてみんなと合流する。
ヘンデアルとテッカの計画をみんなに伝えると、すぐにでも実行しよう、という話になり、準備にとりかかることになった。




