はたけのはなし(改)
久しぶりに続けて投稿できました。
アクセスいっぱいで見ていただけてうれしいです
2019.5.15ちょっと修正しました
時は少し遡り。
炭焼き小屋でヘンデアル達と合流する前、マルガレーテは畑にいた。
その畑も、他の畑とあまり変わりがなく、本来であれば青々とした小麦が育つ季節なのに、立ち枯れている小麦の穂があり、小麦自体も畑にまばらにしか生えていない状態だった。
「まずは、土よね」
一掴み、土を握ると、この前と同じように一瞬光ったのちに、パラパラと手のひらからこぼれる。
その土は土というより、消炭のような感じであった。
「うーん、こうなるってことは…」
今度は膝をついて、地面に両手をつく。
「これなら、どうかな…」
地面の中の悪いものを取り除くイメージと、豊かな作物が実るイメージ。
数十年前に、この村に一生懸命かけた豊穣の魔法を思い出して、一生懸命土の中の命を蘇らせていく。
すると、立ち枯れていたような麦が、本来の青々とした色にかわり、まばらにしか生えていなかった畑が小麦の稲でおおわれるようになった。
「あ、やり過ぎちゃうとまずいよね。でもこれで大丈夫」
満足そうにマルガレーテは畑を見守ると、グレテルがそろそろジュリアさんの家族を連れて帰っているだろうか、と炭焼き小屋へと向かうのだった。
「ただいまー」
炭焼き小屋から森の家に帰ると、リンレンがクマと一緒に
「おかえりー」
と出迎えてくれる。
「疲れたねー」
「マルガレーテ、お風呂入っちゃえば?」
「その間にご飯の準備しておくよ」
クマの作ってくれた、今日も豪華なごちそうを、テーブルにセッティングするだけだが、レディファーストで疲れを癒してもらおう、とヘンデアルとグレテルはお風呂を勧める。
「ありがと。そしたらきれいになってくるね」
そういって、台所の横にある風呂に続く扉にマルガレーテが消えた。
「で、兄ちゃんなにかマルガレーテには聞かせたくないこと?」
マルガレーテがお風呂に行った後、グレテルは思案顔のヘンデアルに言う。
「俺たちの友達でテッカってやついただろう?」
「広場近くの橋の下にいた兄ちゃんと仲良かったやつだよね」
「あいつといつも連絡をとりあってた場所にこれが置かれていたんだ」
ヘンデアルが一枚の紙の切れ端をグレテルに見せる。
「なになに…教会に気をつけろ?」
テッカは家のない子供たちの中でも年が上で、ほかの捨てられている子たちの面倒をよく見ているだけでなく、家のない子たちの中では珍しく文字が読めて文字が書けた。
「まあ、教会がなんかやってるってのはもう今更だけど」
「考えられるのは実力行使に出るってことかな」
「街に逃げ込んじゃえばでもそんな簡単には捕まらないし」
伊達に街にいたわけじゃない。
子供にとっては街は広い遊び場でもあり生活の場所だ。
どこに空き家があって、どこに隠れる場所があって、そんな情報は子供たち、とくに家のない子供たちにとっては生死を分けることもある。
ヘンデアルもグレテルも子供独自の情報網でいろいろなことを知っていたし、大人には教えなかった。
その情報は常にアップデートされて、子供たちに共有される。
それはヘンデアルとテッカの二人で考えたことだった。
「テッカだったらもっと具体的にいろいろな状況の説明も本来ならできるはずだけど、これしかないってことは」
情報を知らないか、説明するほどの余裕がなかったか。
「おそらくは後者だろうな」
ヘンデアルは紙切れを見ながら呟く。
「無事だといいんだけど」
「兄ちゃん…」
沈んだ空気になっていたところを、お風呂からあがったマルガレーテの声が響く。
「今日の料理はどんなかなー?」
濡れた髪をタオルで乾かしながらクマの作ってくれた料理をキッチンでチェックすると、フルコースのごとくの料理がおいしそうな匂いをふりまく。
チーズとベビーリーフとフレッシュなグレープフルーツのサラダ
スープは透き通ったコンソメに、緑、赤、黄色の角切りの野菜が少し沈んで彩を添えている
お肉はじっくりローストした鴨肉にオレンジのソース
魚はマスをカルパッチョにしたものとローストしたもの
デザートは様々なフルーツを使った生クリームとカスタードたっぷりのミルフィーユ。パイの層がとてもおいしそうに見える。
3人は香りに釣られ早く食べたい衝動に駆られ、テーブルをセッティングしていく。
子供たちを寝かしつけたクマが、セッティングが終わったテーブルに座ったヘンデアルとグレテルにお茶を入れてくれる。
あとはご飯を食べるだけだ。
「「「いただきまーす」」」
3人は席について一斉にご飯を食べ始める。
「グレープフルーツの酸味とチーズのもっちり感がベビーリーフと合って絶妙ー!」
「コンソメ、じっくりしみてくるー!」
「鴨肉おいしいな…て鴨なんてどこで仕入れたんだ?」
家になかったはずの食材にクマを見ると、クマが銃を構えて打つしぐさをする。
「あ、自己調達したのね…」
ただのぬいぐるみにはない逞しさを感じ、3人は複雑な気持ちになりながら、おいしい料理を堪能した。




