くまとふるこーす(改)
追記
2019年4月11日に加筆修正しています
畑を見た後、マルガレーテたちは街に戻り、おじいさん所に預けた台車をひきとった。
おじいさんにパンや野菜を分け、あとは街の家それぞれの扉にパンと野菜を入れた麻布を吊るし、少しでも飢えないよう、ごはんの足しにしてもらえうよう配り歩いた。
ちょっと前まで手伝ってくれた孤児はおろか、日がまだ高いうちだというのに通りに歩いている人はいず、街はひっそりと静まり返り、まるで人が消えてしまったような、そんな気持ちにすらなった。
3人は200軒ほどの街の家にパンと野菜を配り終えると、来た道を戻り、魔女の家への帰路についた。
家に帰るとテディベアのぬいぐるみが3人の赤ちゃんと2人の子供たちと遊んでいた。
その様はまるでおとぎの国のようで、街にいって感じた不安な気持ちやどこか薄気味悪い気持ちを
少しだけ和らげてくれた。
「ありがとうテディ!おかげで安心して街に行くことができたわ」
そういってマルガレーテがクマのぬいぐるみの頭をなでると、いやあ、それほどでも、みたいな反応をしたあと、台所をちょいちょい、とそのまるっこいふかふかの手で指した。
「台所がどうかしたの?」
マルガレーテが台所を見ると、そこにはまるで豪華なレストランのフルコースのような食事が、さあ食べろと言わんばかりに用意してる。
「まさかこれお前が作ったのか?」
ヘンデアルが聞くと、おうよ、といわんばかりにクマは頷く。
「まじかお前すげーな!」
グレテルはクマに向かってキラキラした尊敬のまなざしを向けると、クマはグレテルに向かっておそらくはグッジョブ、というサインを送りたいけれども、ふかふかの手をあげるだけ、なポーズを見せた。
子供たちを見るとお腹もいっぱいでニコニコしている。きっとおむつも替えてくれたのだろう。
「やっぱりマルガレーテより…」
「うん、器用だし優秀だ…」
自分が魔法で動かしたクマに負けたマルガレーテは
「ちょっと!!!私の立場がないでしょー!!!」
とクマに八つ当たりするも、クマは明後日の方向をみて、口笛を吹くというまるで誤魔化しのテンプレートみたいな様子でマルガレーテの文句をかわしていた。
「まあいいわ!朝から村に行ったし何も食べてなかったからお腹空いてるものね」
クマへの八つ当たりよりも、自分の欲求を思い出したマルガレーテの言葉に、ヘンデアルもグレテルも自分のお腹の前と後ろがくっつきそうなくらいだという事に気が付く。
「お腹が空いていたら、嫌な事ばかり考えちゃうものね。食べましょう。あ、でも赤ちゃんたちそろそろ寝かせないといけない時間よね…?」
といったマルガレーテに子守は任せとけ、とクマは赤ちゃんたちを華麗にベッドにつれていき寝かしつけていく。
その様子に驚いていたが、まずはごはんを食べよう、と3人は席についた。
クマの作った料理を食べはじめたヘンデアルとグレテル、そしてマルガレーテは、唸った。
そのクオリティの高さと味のレベルに。
最初の料理はカラフルな季節の野菜をゼリー寄せにしたサラダ。
ブロッコリーやベビーコーン、アスパラガスにパプリカ。
色とりどりの野菜がコンソメベースのゼリーでまとめられていて、そのまわりを人参と玉ねぎをベースにしたソースが囲っている。
見た目も完璧である。
用意されていたスープは白蕪のポタージュ。
あっさりとした蕪がミルク仕立てになっていて、疲れていたからだにしみこんでいく。
ガーリック風味のクルトンが良いアクセントになっていた。
そして魚料理は、川魚のポアレ。
あっさりとした白身の川魚を、軽くバターで焼いてあり、バジルのソースがかけてある。
その横に添えられたジャガイモとズッキーニは同じように軽く焼いてミルフィーユ状に重ねられている。
見た目にも美しい。
メインの肉料理は赤ワインで牛肉をじっくり煮てあって、フォークで崩れるほど柔らかい。
付け合わせの玉ねぎとマッシュルームもじっくりと味がしみていた。
「僕よりも料理が上手いやつがいるなんて…」
「こんな美味いの食べたことないよ…!王様でもこんなの食べれないんじゃないかな!?」
ヘンデアルとグレテルが驚きながら食べていると、マルガレーテがフルフル、と震えはじめた。
「マルガレーテ?」
「こんな…」
フォークとナイフをぎゅっと握りしめて震える様はちょっと怖い。
「こんな…こんな特技があるなら、勝てないじゃないのー!!!!!!!」
マルガレーテ曰く。
このクマはこの家に来る直前に街で見かけて一目ぼれして買ったものだとか。
この家にきて80年以上。
ずっとベッドで一緒に寝ていたクマの思わぬ特技にマルガレーテは心底打ちひしがれる。
「ずっと一緒にいて、寝ているだけのクマに負けちゃうとか」
「あ、グレテルばか」
「むー!!!!!もうすねたから二人の分もデザート食べちゃうんだから!」
マルガレーテは、シュークリームが積み重ねられてケーキのように飾られているプロフィットロールを片端から口に放り込む。
「あ、ちょっと!」
「ずるい!!!」
ヘンデアルとグレテルも慌ててデザートへと手をのばす。
クマはその様子を見てやれやれ、と首を振るのだった。




