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はたけとまじょ(改)

追記

2019年4月11日に加筆修正しています

暖炉の前でおじいさんの話を聞いたヘンデアルとグレテルは、何も言葉が出ないといった様子でマルガレーテを見た。


「まあ、街で石をぶつけられたり、木の棒で殴られそうになったり、馬に括り付けてひきずられそうになったけど、森の奥で静かに暮らしてたら、それなりに暮らせたしもう、ずっと前の話だから、いいわよ。そんな顔しなくても」


マルガレーテの言葉にヘンデアルもグレテルも言葉がでない。

親が死んで、親戚に捨てられて。それでも彼らは2人だったし、マルガレーテに救ってもらった。

でもマルガレーテは数十年も森の奥で孤独に、静かに生活していたのだ。

きっとこの村がまた不作にならないよう、守るために。


「やはりおまえさんはあの時の魔女の一人かい」

「ちっちゃいちっちゃい魔女がいたでしょう?」

「13番目の魔女じゃな」

「そう。それが私よ」


あの時、マルガレーテはほかの12人の魔女に守られ、大事に大事に育っていたので、人間の憎しみも恨みもあまり知らないでいた。

それが変わったのは、あの王都から兵隊が来た日だ。

領主が捉えられ、司祭が捉えられ、それを救おうと他の魔女が出払ってしまっていた時、外に出てはいけない、というお姉さん魔女のいいつけを留守番のマルガレーテは破ってしまったのだ。


「畑を助けてほしい」

「麦が枯れかけている」

そんな声とドアをたたく音にマルガレーテは扉を開けてしまったのだ。

農作物への魔法は13人の魔女の中で一番小さなマルガレーテが一番得意だったからだ。


ところがドアを開くとそこには王都の兵隊がずらりと並び、マルガレーテを縄でくくって広場へと引きずっていった。

柱に括り付けられて、石を投げられて。

「明日は馬に括り付けて走らせよう」

そう笑いながら話す王都の兵士にぞっとしながら、ここで死んでしまうのかと本気で思っていた。


ところがその夜、

夜の見回りの兵隊たちがみんな酒を飲みぐっすりと寝込んでしまったころ、数人の街の人たちがマルガレーテの縄を切り、縛り付けられる丸太から救い出してくれた。

そして

「こんな仕打ちを許しておくれよ」

と泣きながらパンと水筒をもたせ、森へと逃がしてくれたのだった。


「こんなことをしたら街の人たちがひどい目に合うかもしれない、と思ったけれど、馬に引きずられるのが怖くて森に逃げたの。あの人たちはどうなったか知ってる?おじいさん」


マルガレーテがそう聞くと、おじいさんは面白いことを思い出したようにひげをちょっとだけ震わせる。


「心配するようなことはなかったよ。何しろ街の人たちは『魔女が逃げたぞー!兵隊は何をしてるんだ!』って自分たちがやったことを酒飲んで寝こけていた兵隊のせいにしたからね」

「それって…」

「何しろ街の人たちにふるまわれたお酒をうっかり飲んでしまったのは自分たちだ。寝ていたなんて知られたら首と体がさよならしてしまうっていうんで、その魔女はものすごい力を使い縄を切り、空に飛んで行った、太刀打ちができなかった、と兵隊たちは口をそろえていうことになっちまったんだよ」


ヘンデアルとグレテルは面白い話を聞いた、とくすくすと笑う。

「風で掃除くらいしかできないのにね」

「縄は切るよりも絡んじゃうほうが得意なのにな」


「よかった、私を逃がしたことで誰かが不幸になってないかと心配で心配でしょうがなかったの。でも確認する勇気がなくて、こんなに時間経っちゃったわ」

「そうだのう。あの時縄を切ったちっちゃい坊主がこんな爺になるくらいだからの」


驚く告白をするおじいさんの瞳はやさしそうにマルガレーテを見ている。


「おまえさんはほかの魔女たちと一緒に隣の国にはいかなかったのじゃな」

「この街のちかくの森がたまたま居心地よかっただけよ」


そういってぷいっとそっぽを向いたがマルガレーテがこの街を気にしていたのは確かだろう。


「マルガレーテはずっとこの街を守っていたんだね」

グレテルはそういうと、マルガレーテをぎゅっと抱きしめた。

「マルガレーテ、ごめんなさい。村人の代わりに僕が謝るよ」

ヘンデアルもそういうと反対側からぎゅっと抱きしめる。


「もう終わったことだし、いいのよ。それよりも、私、聞きたいことがあるの」

マルガレーテは暖炉の前のおじいさんに話しかける。

「私、この街の畑が病気にならないように、土に魔法をかけたの。最後の日に。実りが凄く多くなることはなくても、みんなが飢えることがないように、ときちんと魔法をかけていたつもりなの。でも一昨年くらいから、急に作物が育たなくなったって聞いたわ。おじいさん、何か心当たりあるかしら?」


厳しい顔をしながら、マルガレーテは数年前より起こっている不作の原因を探ろうとする。


命を助けてくれたお礼に、それこそ魔力が数年ほとんど使えないくらいの魔法をこの街の畑にはかけていたはずなのだ。

けれども、街の畑に作物がたわわに実ることがなくなり、飢える人が増え、捨てられる子供がでてきてしまった。


マルガレーテは自分の魔法が弱くなったのかと家の裏の畑でも試してみたが、とんもない威力で通常の100倍もの大きさのトマトを収穫することになり、食べきるのに大変な苦労をした。


本来であれば不作にならない畑なのに、何故だかおかしいのだ。


その疑問におじいさんは今思い出した、と言うように「そういえば」と話す。


「一昨年の春だったか。教会の司祭が作物が良く育つように、と畑を回り畑に神の加護を与えていたな」

「神の加護?」

「魔女の魔法をしりぞけ、作物を豊作にもたらすものだといって、町中の畑を回って、神の加護を与え、それのおかげで税金をその年は多めに納めなきゃいけなかったんだ。だからよく覚えている」


おじいさんの話にマルガレーテは訝しそうな顔をする。


「自然の恵みに対して神の加護をつけるのはわかるけれども、魔女の魔法を退ける、といっていたのね?教会は」

「ああ、そうじゃ」

マルガレーテは厳しい顔をすると、ヘンデアルとグレテルの顔を見て、つらそうな顔でこういった。


「ひょっとしたら、この一連の不作は”魔法”の所為かもしれないわ」

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