もりのおうち(改)
#魔女集会で会いましょう のハシュタグで思いついた短編連載小説です。
あまりにも素敵設定だったので、かわいい魔女の女の子と
理系兄、体力バカ弟のイケメンに囲まれて幸せに暮らせばいいな、と思っています。
よろしくお願いいたします。
追記
2019年4月10日に加筆修正しています
その森は、街からちょっとだけ離れたところにあり、
その街は、ここ数年作物が不作で、
その兄弟の親は既に流行病で亡くなり、
彼らをひきとった叔父と叔母は彼らを口減らしのために奴隷商人に売ろうとしていた。
お兄ちゃんは「科学」や「機械いじり」が大好きな天才頭脳を持つが村では変人扱いだったヘンデアル。
弟のほうは村一番の力持ちで大人顔負けの怪力の主、ちょっとだけ金髪ヤンキー風にヤンチャなグレテル。
12歳と10歳の兄弟は、森の中を歩いていた。
奴隷商人に売られて戦争のための兵士になって使い捨てられるくらいなら、森に逃げてやろうと思ったのだ。
けれど、どんなにしっかりしていて、大人顔負けの頭脳と体力とはいえ子供な2人。
「兄ちゃん、もうすぐ夜になっちゃうね」
「ああ、そうだな。このままだと野宿の可能性が高いな」
「野宿…大丈夫かなあ」
「狼とか野犬やクマが出るかもしれないな」
「でもそしたら、お肉にありつけるね!」
弟はクマも倒せるらしい。
2人は話しながら森をひたすら歩いていた。なるべく街から離れようと。
奴隷商人からお金をもらった叔父と叔母が2人を連れ戻しにくるかもしれない。
そうなったら面倒だ。
意地の悪い叔父たちは自分達をこき使い、ろくに世話もしなかった。
そんな二人に売られるくらいなら、と2人は街を後にしたのだ。
朝に森に入り、昼は木の実と沢の水を飲んで凌いだが、そろそろ日も陰り、夜このまま歩くのはさすがに危険だと判断して、野営をしようかとヘンデアルが考えていたとき
「兄ちゃんあれ!」
森の向こうにうっすらとした明かりが見えた。
近づいてみると木々の向こうに建物が見える。
明かりはその家の前の門にかかる2つのランタンだった。
木に囲まれたちょっと開けた場所に、木で作ったどっしりとした家が1軒たっている。
炭焼き小屋よりは立派で大きな煙突もついており、窓にはガラスも入っている。
すりガラスの向こうに明かりと人影が見え、重そうな木の扉が二人にまるで開けてくれというように佇んでいた。
二人は子供だったが、兄は
「まあ、魔女程度なら、簡単に言いくるめられるな」
と考えていて
弟は
「魔女くらいなら仕留められる」
と考える。
どうしてこの家が魔女の家だと思ったかというと、今よりももっと小さいころ、眠れない夜に父が話してくれた森に住む魔女の話、その家にそっくりだったからだ。
とにもかくにも今日のベッドと夕飯にありつくためにはこの扉を開けるしかない。
コンコンと、木を叩く音は思ったより夜の森に響き、その音に2人がちょっと驚きながら、しわがれた声に尖った鼻のおばあさんが出て来るのを今か今かと待っていると。
「はあい、だあれ?」
二人の耳に届いたのはちょっと舌ったらずな女の子の声。
予想外に可愛い声にドアの前に立つ2人はドアを開けるのを一瞬躊躇するのでした。