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頭痛

 あのお弁当会の翌日、放課後あたりからだろうか? 時々頭痛に見舞われるようになった。それはちくっと刺すような、頭の中で何かがうごめくような気持ちの悪い頭痛だった。

 それは時間が経つにつれて頻度が増していき、さらに一晩明けるころには継続的に頭痛が続くようになった。その日はさすがに学校を休み、近所の内科に行って診察を受けるということになった。内科では風邪の初期症状と診断されて鎮痛剤と胃薬と抗生物質を処方された。昼ご飯と共に飲むようにとも指示を受けたのだった。



 私は頭痛を我慢してお昼ご飯を食べます。そして食後に薬を飲もうとコップに水を汲んだとき、無性にその水をただ飲みたいと思いました。ただの水です。普通ならコップ一杯を理由もなく飲むなんてことはやらないと思います。ただ今は無性にその水をたくさん飲みたいと思いました。とりあえずまずはコップ一杯。まだ足りません。さらに一杯、もう一杯。どれだけ飲んだのでしょうかおなかが膨れてしまいました。ただし頭痛は少し収まったような気もします。そうだ、薬を飲まないといけません。治るものも治らないですからね。

 手に三種の薬を用意し口の中に放り込みます。


コロン


 手元が狂ったようで床にこぼしてしまいました。拾ってもう一度放り込みます。3秒ルールですし薬はちょうどしかないのでしょうがないですね。


コロン


 また手元が狂ってしまったのでしょうか。今度は一粒ずつにしましょう。まずは鎮痛剤


ゴクン


 次は胃薬


ゴクン


 最後に抗生物質


コロン


 もう一度


コロン


 なぜでしょう、抗生物質を飲もうとすると手元が狂います。それならばあまり正しい方法ではないですがコップの中の水に落として一緒に飲みましょう。これならば


ゴホンッ

ゲホッ

ゲホッ

トプン

 

 むせました。しかも薬は吐き出し床に広がる水たまりの中にあります。さすがにこれを飲む気にはなれません。とりあえず頭痛はさっきの鎮痛剤のおかげでしょうか、気にならない程度には落ち着きました。

 抗生物質は今度から飲みましょう。それにこれだけ鎮痛剤が効くならば早く治るのではないでしょうか?



 その翌日も頭痛は治まらなかった。ただし痛みに慣れたのかそれとも前日から飲んでいる鎮痛剤の性か日常生活に支障をきたさない程度であったので学校に行くことにした。テストが近かったのでいつまでも休んでいる訳にもいかなかったのだ。

 頭痛を隠しながら授業を受けて何とかなる。そう思いながら帰宅した時だった。頭が割れるような痛みに襲われたのは。

 


 学校から帰った私はお母さんに「ただいま」と言い玄関を上がり、お母さんも頭痛の心配をしていたのかすぐに「おかえりなさい」と出迎えてくれた時でした。頭の痛みが急激に増し頭を抱えてうずくまってしまいました。


「めぐちゃん!!、大丈夫!? 病院行き……」


 心配するお母さんの声をおぼろげに聞きながらも意識が遠くなっていきました。



 その晩、私が目を覚ましたのは病院のベッドだった。最初に目に映ったのは不安そうにのぞき込むお母さん。その後ろにはお父さんもおり、白衣を着たお医者さんと話しているのが見えたのだった。

 そのとき不思議に思ったことは今までずっと苛まれていた頭痛がめっきりなくなって、すがすがしいほどであったことだ。



「めぐちゃん、起きたのね。体は大丈夫? どこか痛いところはない?」


 目が覚めた私の様子を見てお母さんが心配そうに話しかけてきました。しかし私はこの数日間ずっと続いていた頭痛が治まり逆に体調がよかったのです。


「大丈夫ですよ。なぜか頭痛もなくなりましたし、どこも痛いとかはないですから」

「本当!? 本当に大丈夫?」


 それでも執拗に体調を聞いてきます。ちょっと変だなと思っていますと、お父さんと話していたお医者さんも私が起きたことに気づいたようでこちらに顔を向けてきました。そして私に問いかけます。


「生田 めぐみさんですね。私はあなたの担当主治医の沢渡といいます。自分のことはわかりますか? 誕生日もわかりますか?」


 沢渡さんからの問診が始まりました。自分の名前や住所、誕生日がちゃんと言えるか、手を開いて閉じてとできるか、膝を曲げて伸ばす運動、バンザイができるか、動かないところや何か感覚が普段とは違うところはないか。驚くほど執拗に聞かれることとなりました。不思議に思いましたが自分自身では特に違和感はなかったので沢渡さんに言われたとおりに動かし、特に変わったことは感じていないことと、逆に頭痛が治まったので気分はむしろ良いことを告げると沢渡さんは考え込み始めました。

 しばらく考え込んだ後、しょうがない。とつぶやき看護士さんに指示を出していたようです。その間に私は今までのことをお母さんとお父さんに尋ねました。

 するとやはり私は玄関で倒れたそうで、救急車でこの大和病院に搬送されたそうです。お母さんはびっくりして心臓止まるかと思ったわとその時のことを振り返ります。そしてお父さんも仕事を早退して駆けつけてくれたそうです。それで私の病気は何だったんでしょうか? 腕には点滴の管も刺されていますし、病室で寝てるってことはこのまま入院でしょうか。

 私自身の状況がわからないこの状況では不安が募ります。ただし話していてお母さんの視線が私の頭の上にちらちらと行くのが気にはなるんですが何かついているのでしょうか?

 疑問がどんどん増えます。頭が痛いのは治ったので帰れるなら帰りたいのですが、入院の必要性があるというのであれば仕方ありません。ただ、本当になんで頭が痛かったのか、もう再発しないのか、それにさっきの沢渡さんのしょうがないという言葉も気にかかります。こんな状況では気になることは本当に多いです。だけど誰も説明しようとはしてくれません。こちらから尋ねるにしてもなにをどう聞けばいいのか。とりあえずは何の病気なのかですか。


「すみません、それで結局なんで私は倒れたのでしょうか? やっぱり病気なんですか?」

「えーっとだね、ちょっと変わった症状で特に病名っていうのはないんだ。それで生田さんが体調に問題がなさそうなら今の状況を説明したい。体に異変はないんだよね」

「頭痛も治まってますし、先ほどから念入りに確認されていますが特に体が動かない、痛みがあるということはないですわ」

「まぁ落ち着いて聞いてほしい。生田さんはちょっとした脱水症状と貧血で倒れたんだ。そしてその体調不良になった原因は今から持ってくる鏡を使って説明しよう」


 鏡ですか。なにか顔についているのでしょうか。それとも先ほどからちらちら見られている頭に何か関係があるのでしょうか? 

 そうこうしているうちに先ほど出て行った看護士のかたが鏡を手に戻ってきて私に手渡してくれました。

 恐々と鏡をのぞき込むとそこには信じられないものが映っていたのです。

 

 





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