第6話 調査団適性試験……やりすぎた
クエストが全て終わったのでファナリアの冒険者ギルドに戻る。
「あ、今戻りましたー」
「えぇっ!?まだ2時間しか経ってませんよ!?」
あれ、割とすぐに出来た……?
『遅い方だ。1時間もかからないと思っていたんだぞ』
いや、それはさすがに無茶だろ。
「ドロップ品は何処に出せば良いですか?」
「……あ、ここにお願いします」
次々とドロップ品を用意された容器に放り込んでいく。ちなみに、全てのモンスターが魔力結晶をドロップし、その他にそのモンスター固有の素材がドロップする。
「【眠り粉の青キノコ】は何処に出せば良いですか?」
「この密閉容器に入れてください」
渡されたタッパーの中に直接【眠り粉の青キノコ】を出す。
ポトッと音がすると同時に噴射音。
タッパーの中を青い粉が埋め尽くした。
「まだ胞子放出をしてない!?どうやって採ったんですか!?」
「えーと、遠距離から切ってそのまま【異空間収納】で回収できましたよ……?」
「し、少々お待ちください……!」
パタパタと走り去るギルド員。
なんかやらかしたかな……?
『いや、むしろ大成功扱いだと思うが』
数分でギルド員は帰ってきた。
「今、依頼主に連絡をしたところ、報酬を3倍にして全て買いとるとのことでした!」
「そ、そうですか。よかった……」
依頼達成の手続きを行い、まとめて報酬を受け取る。
この世界の貨幣はCr。1Cr=10円くらいだ。
28570Cr、つまり285,700円の報酬を受け取る。……多くね?
いや、多くて困ることはないから良いのだが。
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昼食を摂り、ギルドに戻る。
なんか、混んでるな……。
すると、鷲の紋章が刻まれた鎧を着た兵士が十数人やってきた。
「【シュピネスト】調査団に参加したい者は集まってくれ!」
ギルド内の全員が立ち上がり、兵士達の周りに集まる。
……って全員参加希望者かよ!
『王国からの依頼だからな。報酬もおいしいし、うまくいけば王国への宣伝にもなる。参加する人は多いと思うぞ』
「ありがとう!これより、調査団適性試験を行う!皆、全力で臨んでくれ!!」
すると、小さなカードを何十枚も持ったギルド員が前に出てくる。
「これより、整理券を配布します!書かれている番号を呼ばれた人は隣の練武場のAフィールドに来て下さい!まずは1~5番の方!」
整理券が配られる。
俺は49番だった。……しばらく時間があるな。
『クエストでも受けるか?』
受けねぇよ!
「あの、45分ほど時間がありますが、クエストを受注しますか?」
「いや、受けませんよ?」
「あ、そうですか……」
ギルド員さん、お前もか……。
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「46~50番の方!」
ちょうど45分で呼ばれた。
隣の立派な建物、練武場に移動する。
フィールドAと書かれた、体育館のような部屋では5人の参加希望者がそれぞれ1人の兵士と戦っていた。
「49番はこっちだ!」
呼ばれた方へと歩いていく。
担当は先程のリーダー格の人のようだ。
「君の戦闘職業はなんだ?」
戦闘職業……魔術師でいいのか?
『魔法剣士って言っとけ』
「ま、魔法剣士です」
なんか中二臭い。事実だけど。
「……珍しい職業だな。では、試験を開始する。どんな手段を使っても構わないから俺に一撃与えてみせろ」
あ、そういう形式なのね。
じゃ、やってみよう。
渡された剣を構え、魔法を発動する。
▷魔法発動◁
属性:光輝
魔力:200mp(維持:5mp/s)
テンプレート:【身体強化】
床を踏みしめ、前へと飛び出す。
「なっ!?」
あまりのスピードに動揺しつつ、何とか跳ね返す兵士。
だが、もう遅い。
「えっと、これでいいですか?」
「……参った」
後ろに回りこんだ俺は兵士の首に刃をあてていた。
「……魔法の火力も見たい。フィールドBに移動しよう」
フィールドBは魔法練習用の設備が置いてあった。
「では、あの的に向かって魔法を放ってみてくれ。対魔術用の結界を張っているから全力で大丈夫だ」
そ、そんなものがあったのか!
『あるわけないだろ。お前の攻撃にあんなペラッペラの結界が持ちこたえられるわけがない』
ですよねー。
『500mpで太めの【レーザー】を放てばいいだろ。……多分』
▷魔法発動◁
属性:光輝
魔力:500mp
テンプレート:【レーザー】
バシュウッと音を立てて光の束が発射される。
【レーザー】はサンドバッグのような的のど真ん中に命中し、爆散させた。
「…………」
「…………」
『…………』
皆、無言だった。
いや、エディのせいだよ!?500mpでも大丈夫って言ったのは!
「ご、合格だ……。…………というか、むしろついてきてくれとお願いしたい」
「わ、分かりました」
まぁ、合格ならいいか。
明日も6時に更新です。