第1話 ここは誰? 私は何処?
今日は6、12、18、24時に更新します。(2/4)
説明回です。
流し読みしていただいても構いません。
2017/05/29 更新しました。
気がつくと、石畳の街道に立っていた。
「……ここは誰?私は何処?」
思わずそんな言葉が口からこぼれ落ちる。
日本語は大丈夫だよな?
まるで映画のような光景が広がっていた。
煉瓦を積み重ねて作られた家。
広い道を当然のように進む馬車。
店に並ぶ見たこともない果実。
中世のヨーロッパか、あるいは別世界に紛れ込んでしまったかのような感覚。
本当にここは何処なのだろうか?
実は撃たれた後、海外に運ばれたのか……?
というか、こんなに技術が中途半端に遅れてる国なんてあったか……?
『自己診断システムの結果に異常なし。……あー、ホント、なんだこれ?』
「へ?」
そんなことを考えていると、突然頭に響いてくるような声がした。
あたりを見回すが、こちらに話しかけてくる人などいない。気のせいか……?
『いや、気のせいじゃないぞ。……ということでイラト・テラ・エディエルだ。よろしく』
こ、こいつ、頭の中に直接……!?
『いや、そこはボケるところじゃないからな?』
ボケないとやってけないよ……。
『まぁ、災難だったな。……じゃなくて、ここがどこだか分かってるのか?異世界だぞ?』
ふーん、そうなんだ。ここは異世界なのか。
……。
………………。
「ってえええええぇえぇぇぇぇ!?」
『反応遅いな』
周りの人から白い目で見られた。
相手の姿は見えないし、この声は俺にしか聞こえていない。
若者が道のど真ん中で急に叫びだしたらそりゃオカシイ人認定されるわな。
……すんません。
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『――――で、大体分かったか?』
まぁ、大体は。
ここは【アトランティス】という、俺らの住む【人界】とは違う世界なんだそうだ。もともとは地球にあったアトランティス大陸が【神】によって異空間に転移したものなんだとか。
【人界】ではアトランティス大陸は海の底に沈んだことになっているが、実際は異世界に転移したらしい。
アトランティス大陸は本当にあったんだ!お父さんは嘘つきじゃなかった!
……なんてな。
で、この世界には魔法が存在するらしい。
なんというか、テンプレ?
イラト……と言うと俺と混ざるからエディエル……は呼びにくい。エディと呼ぼう。
エディによると地球にも似たようなものがあるらしいんだが、それは置いといて。
「……これからどうしろと?っていうか帰れるのか?」
『まだ説明してないことがたくさんあるからな。とりあえず家に戻るべきだろう』
いや、異世界なら俺の家は無いだろ。
『それが、あるんだな』
え、マジで?
なにその親切設計。
エディの案内に従って数分歩くと、そこそこの大きさの家が見えてきた。
これが俺の家……?
『そうだ』
なんというか、普通…………。
『普通の方が良いだろ』
まぁ、住む分にはその方が良いか。
何故かポケットに入っていた家の鍵を取り出し、鍵を開けて中に入る。
「……うわ、俺の家と造りが一緒じゃん」
下駄箱の中の靴とか配置まで同じだぞ……。
『そのことについても話すからさっさと入れ』
とりあえず中に入り、コップに冷蔵庫(魔導冷却器というらしい)で冷えていたお茶をついでリビングのソファに腰をおろす。
『じゃあ、とりあえず現状について説明するぞ』
よろしく。
『先ほどここが異世界と言ったな?』
あれは嘘だ。
『いや、そういうボケは要らないからな?』
えー。
『ここは人間がつくった世界だ。いや、正しくは半ば滅びた世界を人間が利用して作ったというべきか』
…………えっと。人っていつの間に異世界旅行出来るようになっていたの?
『もうそこら辺の常識は捨てた方が良いぞ?現実は小説よりファンタジーだからな』
なんか違う気がするけど意味は分かった。
『深刻化したエネルギー不足を異世界から資源を取ることで解決しようっていう【アトランティス計画】が日本っていう国で進められているらしくてな』
自国だよ!オリンピック前に何やってんの日本!?
『そして異世界を支配するための対異世界人戦闘員を育成するために、放置されていたアトランティスを利用したというわけだ。アトランティスは封印のために空間自体の強度がかなり高く設定されている上に機密設定まで付与されているからな。異世界支配の計画を誰にもバレないようにするにはうってつけの世界だ。だから俺らも今まで気づかなかったんだが……。……話が逸れた。ともかく、ここにいる人間は全員お前と同じ世界の住民だった人たちだ』
…………。
まさか、日本でそんなことがあったとは。
『……で、俺はこの計画を阻止しろと命令されているんだ』
……なるほどな。
さて、根本的な質問を良いかな?
『なんだ?』
「お前は誰で、なんで俺の中にいるんだよ!?」
『…………』
いや、当然の質問だと思うんだけど?
なんで黙っているのかな?
『……教えるの忘れてた』
おい。
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1時間経過。
まぁ、無駄な問答とかもあったので省略して、結論だけ書こう。
俺の中にいるのはイラト・テラ・エディエル。【天使】だ。
【天使】というのはいわゆる【神】の手下というか部下というかのアレである。
まぁ、さらっと神様がいるって事を説明されたわけだ。
……ちなみに、【神】っていう創造神(?)みたいなやつと、【神々】っていう無数にある世界を管理するやつらがいるらしい。【天使】は【神】直属の部下だから【神々】よりも上の立場にいるらしいがこれはどうでもいいか。
『おい』
で、【天使】のエディは世界のバランスを崩すこの計画を阻止するために来たそうだ。
その過程で【イデア】という存在に出会った。俺が撃たれた後に会った謎の人(?)である。……会ったといっても一方的に背後から話しかけられただけだが。
【イデア】はいわば「世界という枠組みを超えた存在」なんだそうだ。【神】が世界を創る前から存在した【ペルソナ】という種族の一人らしい。
好奇心だけで活動する存在で、勝手に他人の【運命】をねじ曲げる迷惑な存在なんだとか。
……まぁ、【天使】でもよく分かってないらしいし、「不思議な力のある迷惑な奴」ってことにしておこう。
で、俺とエディは【イデア】のせいで融合したということだ。
……いや、どういう原理でだよ!?
『知らんものは知らん。【イデア】に直接聞いてくれ』
また余計なことをされるよね、それ!?
『お前はこの世界で唯一真実を知っている上に、この世界から脱出する力と便利なアドバイザーがセットで付いてきたと思えば良い。実際、最も【神】に近い存在である【天使】と融合したのだからお前の能力は飛躍的どころではなく上昇している。大船に乗ったつもりでいればいい』
その便利な【天使】の力で脱出したり出来ないの?
『お前と融合した影響で力が落ちている。普通の空間ならそれでも出来たんだがこの空間は無理だな』
……まぁ、そんな上手くいくわけないよな。っていうか、出来たらとっくにやっているだろうし。
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