推しが押してくるー番外編5ー紫づ花と怖い話
はじめましてさんも2度目以上ましてさんもこんにちわ。
神尾瀬 紫です。
今回のS.S.S短編は夏らしくホラータッチでございます。
しかし怖いのかなこれは(笑)
苦手な方はご注意下さい。
好きな方はごめんなさい(笑)
今回の紫づ花の犠牲者はF.a.U GARDENです。
お楽しみいただけると幸いです。
とある8月の暑い夜。
叶多が休憩中にタブレットを取り出した。
「なんか面白い動画あるかな〜。」
本業が声優の彼にあるまじき棒読みで、検索をかける。
視界の端には紫づ花の姿。
今日はF.a.U GARDENのレコーディング日。そこに紫づ花と静紅の、MSキューブがコーラスとして参加するため来ていた。
和泉と話していた紫づ花が叶多の座るソファにやってくる。
その隣へ自然と腰を下ろし、冷めたコーヒーに手を伸ばした。
叶多が脳内でくだらない予定を立てる。
「あ、夏のホラー特集だってよ。なんか蒸し暑いし、ちょうどいいじゃん。こういうの、嫌い?」
好きでも嫌いでも関係ない。とりあえず一緒に見て、キャーっとしがみついてほしい。
その考えが読めた油井が、肩をすくめてため息をついた。
ウチのボーカルは、ステージ上では最高にかっこいいのに、カノジョのことになるととたんにかっこ悪くなる。
そのカノジョは、紙コップに口を付けながらダブレットを覗き込む。
「・・・嫌いじゃないけど・・・好きでもないかなぁ。物による。」
この煮え切らない感じは得意ではないと判断した叶多は、怖そうな映像を検索し始める。
紫づ花の横に静紅が腰掛けた。
「ねえさん、大丈夫なの?」
「まぁちょっとくらいならなんとかなるよ。」
その不思議な会話に、集まってきた油井と喜田が首を傾げた。
「やっぱり苦手なんじゃないの?無理しなくていいんだよ。」
油井が心配そうに声をかけるが、
「いいじゃん。キャーってカレシにしがみつくのが醍醐味でしょ。」
と、喜田がソファの後ろから叶多の頭に腕を乗せて思惑をバラしてしまう。
「ちょっと!余計なことを言わないでよ喜田さん!」
腕を払いのけながら文句を言う叶多とそれをからかう喜田の姿は、兄弟のようで微笑ましい。
その“二人を相変わらず呆れたように見る油井”の三人を、更に微笑ましく見る紫づ花が、叶多のタブレットからひとつの心霊動画を選択した。
「最近はデジタル技術が発達しちゃって、ほぼ作り物が蔓延しているって噂。私としても、わざとらしいなぁとか強引だなぁとか感じることが多くて、あんまり見なくなったんだよね。」
再生された動画は、夜の森の中を歩く数人の大学生が、暗闇から襲いかかってきた何者かに襲われて画像が乱れるところで終わっていた。
『『『『うわっ!!!』』』』
叶多、油井、喜田、静紅の4人が悲鳴を上げる中、紫づ花だけが冷静にタブレットに指を走らせて次の動画を選ぶ。
「え、怖くないですか、今の。」
叶多が紫づ花を覗き込む。
紫づ花は、少し口を尖らせた。
「これが本当だった場合、全員襲われたはずなのにこのカメラはどうやって回収してるの?画像の乱れ方も、適度に正体不明な霊っぽいものを捉えてるし。アクシデント的な何かで画像が乱れる時って、もっとわけわからなくなるよ。」
『だからもっと本物っぽいのが見たいんだよね〜』とスルスルとタッチパネルを操作する。
「なるほど。確かに俺も、これはおかしいんじゃないのって思ったことはあるけど、それも作り物だった可能性があるのか。」
「じゃないかなって感じるだけだけどね。まだデジタルが普及する前の怖い映像系ってさり気なさがあったけど、最近のは自己主張激しいんだもん。」
喜田と油井が顔を見合わせる。さっきの微妙な反応は、詳しいからこそ本物を見たいのになかなか見つからないという、叶多にとっては甚だ嬉しくない理由からなのか。
静紅は黙って紫づ花の様子を見ている。
それに対して紫づ花も軽く口角を上げた。
それからしばらく《本物か偽物か》ジャッジしながら動画を見ていた。
最初に気付いたのは静紅だった。
「ねえさん、なんかソワソワしてない?」
「ん?そうでもないよ?」
「そう?・・・なんか、パンッパンッって音がするんだけど。」
「あら?家鳴りなんてあるんだ?」
その会話に、他の3人も耳を澄ませた。
「確かにパシッって鳴ってるけど、家鳴りなら普通だよな。特に深夜、木材が気温の低下で収縮してその時に鳴るんだよ。」
叶多の説明を聞いて男二人が安堵する。
すると和泉が頭を振りながらコントロールルームから出てきた。
「さっきからノイズがひどいんだよな。ちょっと様子見てもらってるんだけど。」
それを聞いた紫づ花が突然立ち上がった。
「いけない。呼んじゃった。」
つぶやいたカノジョはバッグの中から箱を取り出す。
スモーカーの喜田からライターを借りると、箱から棒状の束を取り出した。
「せ、線香?」
全員の視線が追う中、束の封をやぶきバラけさせ、数本に火をつける。
それを持って部屋の中を一周したかと思うと、そのままコントロールルームに入り一周し、他の部屋や通路をウロウロ歩き出した。
しばらくして戻ってきた紫づ花の手の線香は、半分ほどの長さになっていた。
それをステンレスの窓枠の桟にもたせかけるように置いて、手を合わせた。
硬直する4人。意味がわからない和泉はキョロキョロする。
「え?何?どうした?」
「や〜、ごまかせるかなぁと思ったんですが、仕事に影響しちゃうと大変ですよね。ごめんなさい。」
静紅が恐る恐る声をかける。
「え、ねえさん、なんでお線香持ってるの?」
「ん〜。たまにちょっと合わない所があるから、もしなんかいたらやだなぁって思って、持ってたの。今までは幸い使うことはなかったんだけど、怖い話は呼ぶよね。」
静紅が息を飲み、男3人が野太い悲鳴を上げた。
そしてその後、録音した音声の中に覚えのない音を見つけ、和泉が首を傾げることとなった。
ーーーEND
いかがでしたでしょうか。
何が怖いのか?
それは一人の夜に思い出してしまった時が怖いかと(今ではなく)
実話というか、よくあることというか、使い捨てカメラが主流だった頃は、殆どの写真に変なものが写っていましたが、デジタルカメラになってからは全く映らなくなってよかったです。
そういう感じです。(笑)
変な声の入った歌も騒がれた時がありましたねぇ。
それではまたお会いできることを楽しみに。
ありがとうございました。




