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闇の中の光。

続編!!!!!

最近、絵ばかり描いていたので投稿が遅くなってしまいました!!!

最後まで読んでいただけると嬉しいです^^


あり得ない。

こんなことあるはずがない。

彼女が言った言葉を思い出して佐伯は頭を抱えて踞った。自室の部屋の片隅。明かりのない静寂の中で佐伯は彼女が言った数時間前の言葉を反芻した。

まるで繰り返し同じ場面を映すかのように、繋がれた鎖のように彼女の言葉が離れなかった。


「怖くないです。なんで、そんなに自分のことを悪く言うんですか?」


佐伯は彼女の言葉がまるで光のように感じた。もしかしたら彼女こそが佐伯のこの道筋を変えてくれるのではないかと。そんなくだらないことさえも本当に信じてしまうかのように。

何故だろう。

それまで感じてきた甘味なものとは違い、苦しみが痛みが佐伯の心臓を貫くように感じる。

気のせいだと思ってもそれは徐々に強く、強く佐伯を苦しめる。

本当に自分はどうしたのだろう。

彼女が来てからまるで歯車が別の方向に狂いだしたかのように、佐伯の心の中には何故か疑問の塊が渦巻いていた。

どうして自分がそんなことを考えているのか分からない。きっと考えても無駄なことだ。

きっと彼女も他の人と同じく、私を自身の心の中をすべて知ったとたん恐れて離れてしまうだろう。


それなのに何故?こんなに彼女のことを意識してしまうのだろうか。

彼女は他の人たちと違う。そう思ってしまうのだろうか・・・。


どれだけ時間が経ったのか分からない静寂の中で、佐伯はいつまでたっても考えに光が見えなかった。

考えても、考えても答えの見出せない迷路に佐伯は一人取り残されたかのように感じた。

恐ろしく。そして不思議に、喜びさえも感じてしまうほどに。

静寂と暗闇の棺桶の中で、踞る自分を誰かが手を差し伸べたような気がした。

 

いつの間に眠りについたのだろうか。気持ち悪い眩暈の中で夢を見た。

 苦しく徐々に浸食していく佐伯の中に幼いまま記憶の中にぼんやりと映るコウスケが見えた。

 彼の顔はまるで霧がかかったように薄く、佐伯はそんな彼にいつの間にか声をかけていた。

 「私が嫌いですか?」

 なぜそんなことを聞いたのかは、自分でもわからない。でもそれを彼に確かめなければならないような気がした。

 彼は笑う。

 まるで、苦しみや痛みがないかのように楽しそうな笑顔で。

 「嫌いじゃないよ。お兄ちゃんどうしたの?」

 泣きそうになった。苦しくて胸を押さえてうずくまった。彼が不思議そうに首をかしげて近づいても佐伯はどうしてもコウスケの顔を見ることができなかった。

 恐怖が少しずつ少しずつ大きくなって膨らんでいった。

 そんな無邪気な表情の彼が、まるで自分を蔑んでいるかのように思った。いつの間にか流れた涙の滴がポタポタと床に流れるのを見てようやく顔を上げると、何もない空白の世界が広がっていた。


 「佐伯さん、なんか最近元気がないみたい。いつもボーってして遠くを見ているみたい。何かあったんですか?」

 職場のデスクで話しかけた彼女は、佐伯の顔をじっと眺めると心配そうに訪ねた。

 「いえ・・・何でもないですよ・・・」

佐伯はさりげなくそう答えるとパソコンに向き直る。パソコンの画面はこないだ取り締まった事件の詳細が書かれていた。佐伯はキーボードをたたいて打ち始める。

 「私、部下なんで敬語じゃなくていいんですよ。」

 隣で、仕事を再開した彼女がそういうので「癖なんです。」そう言って愛想笑いをすると彼女が、「癖ならしょうがないですね。」

そう言って悩みなんてないように明るく笑った。

 佐伯は、笑い返して思う。きっと彼女は普通の幸せな人生を歩んでいくのだろう。望んでもかなわない人生を彼女は当たり前のように生きていくのだろう。

 そう思うとズキリと胸が痛んだ。誰に対しても敬語なのは人との関係を拒絶する証。彼女と自分の前には見えない壁があってそのせいで相手の心の中が見えない。どれだけ愛想笑いをしても相手に届かない自分の心は余計に佐伯の孤独を染めていく。まるでこの世界で正を受ける前から決まっていた運命化のように、佐伯の周りにある人とのさまざまな関係を消していく。

 終わりの近い佐伯の人生はきっともうすぐ訪れるのだろう。

 

 次の日、彼女が家に訪れた。佐伯が、「怖かったらこの計画は終わりにしましょう。」

そう彼女に言うと「大丈夫です。」そう言って笑った。 

 震えた彼女の声に佐伯は、不安になった。

どうしたら彼女の自殺の理由を取り除くことができるのだろうか。最近、そんなことばかり思いつくようになっていた。

 どれだけ、止めようと思っても彼女は何度も佐伯の前に訪れ、佐伯の棺桶作りがどれだけ進んだのかを訪ねる。もちろん、佐伯はそんな彼女に本当のことを伝えたが日に日に不安の表情が増していく彼女に佐伯は彼女の目を見ることができなかった。

 「自殺を決行する日にちを決めませんか?」

 その日も、彼女は家に来て棺桶製作が順調かを聞くと佐伯にそう訪ねた。

 「決行日ですか?」

 「はい。やっぱり決めておいたほう順調に進むんじゃないかと思って。」

 そんな彼女の言葉に佐伯は、「やっぱりやめませんか?」そんな言葉でさえ掛けることができなかった。

 まるで、世界すべてを拒絶しているかのように感じる彼女に対してどんな言葉さえも彼女を突き落とすスイッチかのように思ったのだ。

 佐伯は考えて口にする。決行日は、佐伯の答えた3週間後に決まった。彼女が最後に首を振ってやめます。ということも切なそうな顔をすることもなかった。ただ、苦しそうに無理に笑うだけだ。消えてしまいそうな彼女に佐伯はそっと彼女の手を握った。 

 

ーーーできたら彼女に死んでほしくない。生きてほしい。初めて思った自分の感情は、彼女に対して初めて芽生えた恋のように思えた。

 



ありがとうございました!!!

もうすぐ結末かな??

もうちょっと続きそうです♪

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