2話:ステータスがあったよ。
「マジでここは異世界なのか?」
ステータスなるものも未だ視界に見えるし、どう考えても夢とは思えないリアルさがある。
「もう信じるしかないかな…。」
とはいっても向こうに残してきたものは多い。
家族だっているし、友達だっている。別にイジメられていたわけでも家族に嫌われていたわけでもない。そこそこ充実した生活を送っていたのだ。ただ影が薄かっただけだよ?ホントダヨ。
「ウジウジ考えても仕方ないか。なるようにさるさ。」
持ち前の楽天思考で自分の中で気持ちの整理をつけるとおのずとやることも見えてくる。
「まずはステータスを分析してみるか。」
そういいながら改めて視界の端に浮かんでいる文字に意識を集中する。
まずは名前。道葉創一。うん、俺の名前だ。間違いない。
次はレベルか。ゲームの代名詞だな。向こうでも人並みにはゲームをしていた。話題になっていたのは一通りやったこともあるし、かなりハマったやつもある。
「1だよなそりゃ」
レベルは1。まあそうだろう。今来たばっかだし。
しかし、どうやったらレベルってあがるんだろう?ゲームじゃモンスターを倒してあげるのが定番だが。
「やっぱいるのかな。モンスターとか…。」
今思えばこの岩山まで歩いていた時、特に気になるものはなかった。土星っぽい星に驚いたくらいだ。
あとはただ足元に草が生えていただけ。遠くまで見渡せる草原だけど、見える範囲にはこの岩山くらいしか無かった。だからここまで来たんだけど。
「取り敢えず後回しだな。」
年齢は17。これもそのままだ。
次は容姿だが、
「普通ってなんだよ普通って」
と、愚痴るがまあその通りなんですけどね!
黒髪、黒目、奥二重。175cm、60kg。
「道葉君って何か普通だよね。」と言われた事数知れず。面と向かって人に普通って失礼だよね?
「しかしこの普通の見た目が俺の存在感の薄さに拍車かけてるよな。」
まあ実際そんなに不満はない。普通が1番だよ。
種族:人間か。
わざわざこんな項目があるって事は人間以外の種族があるのか?エルフとか、ドワーフとか。これは楽しみが一つ増えたな!
「そして最後は」
そう。当たり前だが、1番気になっていたスキルだ!ここが異世界でモンスターもでるとするなら、これが俺の生命線になるのは間違いない。
例の本でも主人公はスキルを持っていたし、それのおかげで危機を乗り切っていた。確か身体能力強化とかだった気がする。
「存在感スイッチ?」
スキルは2つ表示されていた。2つめのアイテムボックスというのは、おそらくそのままだろう。
あの主人公も持っていた。道具を好きなだけ出し入れできる、ゲームでも定番の、いわゆるインベントリというやつに違いない。
しかしこの存在感スイッチというのは全くわからん。しかも後ろにオンとでている。
存在感という言葉自体は俺に馴染み深いけどな。
「うーむ。わからん。」
そう呻きながらステータス欄の文字に注目していると、新たに文字がでてきた。
存在感スイッチ:異世界人である道葉創一がもつ無二のスキル。
自らの存在感をオンとオフで切り替えることができるスイッチを生み出す。
オンにした場合、普通に周りに認識され、オフにした場合、あらゆるものから認識、発見されなくなる。どんな探知魔法や索敵魔法を持ってしても見つからない。
しかし、そこに存在はしているので接触自体を無効化するわけではない。スキル使用を念じると手元にスイッチが現れ、消したい場合は消える様に念じればよい。
このスキルは魔力や体力などを一切消費することなく使え、スイッチを切り替えない限り有効となっている効果が続く。
どうもご丁寧にありがとうございます。
まさか都合よく説明文がでてくるとは。一体だれが書いたんだ?疑問が増えたな。
しかしこれはかなり助かるスキルだと思う。つまりスイッチひとつで透明人間みたいになれるってことだろう。
さすがの俺もここまで存在感がなかったわけじゃないが、俺の特徴が極限まで伸ばされたスキルということだな。
更にさらっと書かれている魔法という文字。
「やっぱあるのか。魔法。」
使ってみたいよな。マホー!でも、見る限り俺のステータスに魔法はない。まあ覚えられるかもしれないから、諦めるのは早いよな。
あと気になるのはこのステータス欄、パラメータ的なものが表示されてないんだよな。 HPとかMPとか、そういったものが。
魔法があるなら絶対ありそうなんだけど、もしかするとさっきの説明文みたいに集中する事で追加表示されるのか?
そう思いさっそく名前の欄に集中しようとすると横からガサッという音が聞こえた。




