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1章 柳沢家の事情 3

それは突然だった。

 「オマエ。僕の替わりに学校に行ってきてよ。」


僕と同じ顔。

僕と同じ声で放たれたその言葉の意味が理解出来なかった。


―15分前―


姿を消した幹人様は、朝食の香りに誘われてなのか、僕を置いて先に食堂にいた。

「幹人様、先に行かないで下さいよ。」

   内心ホッとしている僕に、

「いやー、美味しそうな臭いがしたからさー、つい。」

  と、子供の用な笑顔で言う。


これでも、幹人様は高校2年生の16才である。

ついでに僕も。


ここで一応柳沢家の家族構成を軽く紹介しよう。


柳沢企業の社長にして、この家の大黒柱、兼 父親の

「柳沢 源蔵」

父親の言う事は絶対! らしい。


源蔵の妻、「柳沢 晴美」

趣味は旅行で、今も家におらず海外の別荘に居る。

あまり家には帰ってこない。


3人兄弟の長男の、「柳沢 勇人」現在20才で

大学で何かの研究をしており、その何かは不明。

人と喋るのが、大の苦手。


3人兄弟の次女の、「柳沢 香奈」現在17才で

幹人様と同じ高校に通う高校3年生。

とても美人で、勉強、スポーツ、人当たりが良いという、これぞ本当のパーフェクト! 

  が、そうそうパーフェクトな人間なんて居ないわけで、この香奈様も1つ汚点が

あるのだが···


「ねぇ、ねぇ、香奈姉は?」

パンをかじりながら源蔵様に尋ねる。


「香奈なら、もうさっき学校に行ったぞ。」と、まるで闇の仕事をしていそうな恐ろしい顔で答えた。

でも、本当は優しい人だと····おもいたい。


「何でも今日は日直だとかで朝食も食べずに走って行きおったわ。」

と、相変わらず今にも人を殺してしまいそうな顔だ。

僕なんかマトモに顔を合わせることが未だに出来ない。


源蔵様の言う事に少しでも逆らったらきっと···。

恐ろしくて想像するのを自動的に止めてしまうくらいだ。


いつもの様な会話を済ませた幹人様は口をナプキンで拭きながら、イスから立って僕に、

 「ちょっと話があるんだけど、これから良いかな。」

と聞いた。

特にこれからやる事の無い僕は、

「はい。良いですけど。」 と何気ない返事をした。



幹人様の後を付いていくと、見覚えのある薔薇の彫刻に一面金色のドアの前で立ち止まった。

「ここは、幹人様のお部屋ですが、」

これから一体何の話をするんだろう。何か寒気がするんだが、

「まぁ、いいから入って、入って」といつものニヤニヤした顔を浮かべながら、僕を部屋の中へ誘導した。


何がそんなに楽しいのだろう と不思議に思っていると目の前には

殺人犯(源蔵様)がイスに座っていた。

そしてこちらをジーっと見ているではないか。


何か魔法でも使われたかのように源蔵様と目が合った途端に体が固まった。

(はっ!殺られるっ) そんな失礼な事を考えていた僕は少し余裕が有ったのかもしれない。

   そんな僕に幹人様がありえない一言を口にする

「オマエ。僕の替わりに学校に行ってきてよ。」


「はい?」 何を言ってるんだろうこの人。

  多分聞き間違えだなやっぱり。 うん。

きっと、「僕の替わりにお父様に殺られてよ。」 とかだろう。


そんな腑抜けた事を考えていると、追い討ちをかけるように幹人様がもい一回口を開く。

「だーかーら、僕の替わりに学校に行ってきてって言ってるの!」

どうやら聞き間違えじゃなかったようだ。

冷静さを取り戻した僕は疑問をくちにした。


「どうして急にそんな事を?」 とても素朴な疑問だ。

答えたのは幹人様ではなく、源蔵様だった。



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